「大好きを仕事にする。東大の海洋研究所からバルーンアーティストを目指す須原三加さん」の後編をお届けします。【前編】はこちらをどうぞ。
せっかく可愛くきれいにデコレーションしたバルーンを割ってしまうのは切ない気もするが、バルーンは生花と同じだと話す三加さん。
「イベントなどが終わった後は、バルーンは割ってしまいます。欲しい人がいれば、大きなものも小さく解体して差し上げたりして。よくバルーンアーティストが言うのは、バルーンは生花と同じだということ。
一度膨らますと、空気に触れたり光に当たることでどうしても劣化が進んでしまうんです。生花のように数日もすれば枯れて汚くなってしまうため、一番新鮮できれいな間を楽しむという儚さもいいと思っています。」
「原点回帰だね」と背中を押してくれる両親
バルーンアートのスクールやセミナーには、家事育児の空き時間を活用する主婦なども多く、参加者の年齢層は比較的高い。また、このご時世に、そもそもバルーンアートで生きていきたいと願う人材も決して多くないと言う。そんな不安定な道を選んだ娘に対して、三加さんのご両親は「原点回帰だね」と一言声をかけてくれた。
また、大学の研究室の先生も、海の生き物の研究で博士課程に進むか悩む彼女に、もっとやりたいことがほかにあるならやるべきだと背中を押してくれた。現在彼女が続けている独立法人での研究のアルバイトも、彼女がバルーンの夢を叶えるためにと上司がチャンスをくれた。
「バルーンアートの世界の先輩方達にお会いしたとき、自分を売り込もうという気は全くなくて、ただ自分のバルーン好き、それで食べて行きたいという熱い想いだけを伝えていました。無邪気にそうしているうちに、何かしら声をかけてくださったり、大会でお手伝いするチャンスをくださったり。
私は本当に支えてくれる人に、出会いに、恵まれていると思います。好きを仕事にすることには別の辛さもありますが、好きだから耐えられることもある。好きなことがあるんだから、人生は一度切りだしやってみようと思えました。」
生涯現役を目指すバルーンアーティスト
今年4月からは、ビジネススクールの紹介で始めた週末の出張デコレーションのアルバイト先で正社員になる。パーティ関連の事業を行う会社で、出張デコレーションのバルーン部門を完全に任される。会社に所属する形をとるものの、実際には会社の中の小さな会社を任されるようなもの。実際に手を動かしてバルーンの制作もすれば、自ら新規顧客獲得の営業も行う。
「いきなりフリーランスになるという選択肢も考えましたが、私もチキンなので(笑)。2年間続けたアルバイト先でせっかくいただいたお話だったので、経験のある社長のもとでノウハウを学ばせてもらうことに決めました。バルーンの技術などはまだまだですし、学ぶことが沢山あります。
バルーンアートにも色んな仕事の仕方がありますが、垣根がなく何でもできるバルーンアーティストになりたいです。おこがましいけど、家泉さんのような人を目指したい。いつかおばあちゃんになっても、近所の子どもに風船をひねってあげていたいです。」
東京大学のオープンキャンパスで手掛けた作品
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