クラウドファンディングが仕掛ける「金融の民主化」:個人を力づける新しい資金調達と資金活用のカタチ【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2014.5.27

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編集部注:日本クラウド証券代表取締役社長の大前和徳氏によるクラウドファンディングに関する寄稿も、4回目を迎える本稿で最後となります。先日クラウドファンディング法案が成立し、2015年には株式型クラウドファンディングの運用が本格化する、まさに大きな転換点にいます。

これまでの寄稿を通じて、クラウドファンディングのこれまでや現状、法改正にともなうクラウドファンディングのあり方についてまとめていただいた。最後に、クラウドファンディングは、お金という代替手段を用いて、ソーシャルで人々とつなぐ力があるプラットフォームであること、クラウドファンディングというものの可能性について、言及していただいた。

クラウドファンディングという新しい”現象”

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第一回目の寄稿でクラウドファンディングの歴史について、第二回目の寄稿で クラウドファンディングの分類や市場について、第三回目の寄稿で株式型クラウドファンディングについてまとめてきました。最後の寄稿のとなる本稿では、あらためてこの新しいお金の流れであるクラウドファンディングについて、実際に事業を運営する立場から、まとめてみたいと思います。

日本のあちこちでクラウドファンディングのセミナーが開催され、私もこれまで随分とセミナーでお話をしてきました。セミナーはいつも大盛況で質疑応答も活発です。セミナー後の交流会でもたくさんの方々とお話をするのですが、そこで気づいたことは、セミナー参加者は、3つのタイプに分かれているということです。

つまり、1)クラウドファンディングで資金調達したい人、2)クラウドファンディングに興味があって応援(投資)したい人、3)クラウドファンディング事業を立ち上げようと構想している人、です。特に3)の方が意外と多いのです。やってみるとそれほど楽な事業ではないのですが、自分でやりたいと思えるところが、クラウドファンディングというサービスの魅力の一端を表しているとも言えるでしょう。またこれらの人たちの他にも、事業連携を模索している事業会社の人、中央や地方の役人さん、さらには、大手金融機関の人、などです。

最近では、出版xクラウドファンディング、映画xクラウドファンディング、コンテンツビジネスxクラウドファンディング、もの作りxクラウドファンディングーみたいなテーマのセミナーも増えてきました。

セミナー参加者の多彩な顔ぶれ、セミナーテーマの広がりなどを鑑みると、クラウドファンディングは単なるネットサービスの一つではなく、21世紀の地球上に生まれた新しい”現象”(phenomonon)であるとすら思えてきます。アメリカでは、Kickstarterを通じて資金調達に成功した映画がアカデミー賞を受賞したり、あるいはデザインセンスあふれるユニークな商品がMoMAデザインショップで販売されたりしています。既存の銀行や証券に、同じことができるでしょうか?2001年からインターネットx金融をテーマにネット銀行やソーシャルレンディングの立ち上げに関わってきた私には、これほど共感力の高い金融サービスは過去になかったと感じられます。

金融業界の周縁から次々と生まれるクラウドファンディングのプロフェッショナル達

日本にクラウドファンディングと名乗ったサービスが登場してまだ4,5年くらいです。ソーシャルレンディングやマイクロ投資プラットフォームなどというサービスまで含めても、せいぜいこの10年くらいです。この事業に関わっている人たちは、広告、IT、商社、流通、メーカー、NPO、メディアなど出身業界はさまざまですが、驚くほど金融業界の人がいません。これはアメリカやヨーロッパでも似た傾向にあり、金融業界のバックグラウンドがない人たちが立ち上げているケースが多いです。むしろ、金融のバックグラウンドがないことを強みとしている節すらあります。

私のところにも、「クラウドファンディングを立ち上げますので、色々と教えてください!」と訪ねてきた人が、サービスを始めて数ヶ月経つと、すっかり逞しいクラウドファンディングのプロフェッショナルに変身していることに驚かされます。また、クラウドファンディングで資金調達に成功した人たち自身も、「クラウドファンディングを利用して分かったこと」などを結構雄弁に語ってくれます。これらの知見は、通常の金融サービスで得られるものとは異なる点が多いです。

こうして、金融業界の周縁に、次々とクラウドファンディング・プロフェッショナル達が生まれています。私達が運営するクラウドバンクのスタッフも、元々は金融と無縁の者たちですが、開業から5ヵ月経った今では貸付型クラウドファンディングに関して日本で最も詳しいプロフェッショナル達に育ちつつあります。彼らは、資金調達者と支援者(投資家)をマッチングするために知恵を絞り、課題にぶつかり、それを解決することを通じて、クラウドファンディングに関する膨大な経験値を毎日蓄積しているのです。

ハーバード大学のC.クリステンセン教授の名著『イノベーションのジレンマ』では、大企業が既存ビジネスにこだわっている間に、その周縁から既存の事業を破壊するイノベーティブな事業が生まれる可能性について論じています。クラウドファンディングでは、全くの異業種の人材達によって、お金の出し手と受け手との新しい関係性が形成されつつありますが、この流れは既存の金融業界にとっての「破壊的イノベーション」になりうると私は思っています。

地方には、リアルでヒューマンな共感力がある

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地方に目を向けると、クラウドファンディングに注目しているのは何も企業だけではありません。自治体や地域の金融機関も注目しています。地域活性化の大きな課題の一つには、常に資金調達支援が上げられていますが、これまでは自治体からの助成金や利子補給、あるいは地元の銀行からの融資以外に解決策はありませんでした。その突破口として注目されているのが、クラウドファンディングなのです。

第2回目第3回目の寄稿でもお話したように、クラウドファンディングにおいては、お金の出し手がお金の受け手に共感したり共鳴したり、「自分事」として捉えることができるかが非常に大事です。「地域性」は共感を生みやすいテーマですので、クラウドファンディングにとっては非常に相性のいい切り口です。実際、地域性をアピールしたプロジェクトや地域に密着したプロジェクトには、投資家の注目が集まりやすい傾向があります。

第2回目の記事内で、身内が3分の1、プラットフォームが3分の1、共感した全くの第三者が3分の1という、クラウドファンディングの成功パターンについてお話ししました。これは裏を返すと、プラットフォームの力は3分の1しかないのです。クラウドファンディングの資金調達が成功するかどうかは、自分に身近な人たちと第三者からの共感に、半分以上は関わっているとも言えます。ネットやデジタル隆盛の時代だからこそ、リアルでヒューマンな要素が大事になります。そういう意味においても、地域性というのはクラウドファンディングにとって重要な要素となるでしょう。

また、地方の自治体や公的施設が直接クラウドファンディングを利用した事例もあります。地方の課題解決は大きな切り口です。400万円以上を集めた「東山動物公園」のコアラを応援するプロジェクト や、目標100万円に対して800万円以上ものお金を集めた陸前高田市の図書館のプロジェクト などが、まさにそうだと言えます。また、鎌倉市は自治体としては初めて地元に特化したクラウドファンディングサービス「かまくら想い」を始めました。地域の現状や課題解決を提示し、地元の人の共感や多くの人たちにとっても応援したいとさせられるプロジェクトは、大きく飛躍する可能性があります。

したがって、現在の株式型クラウドファンディングの法律改正が、リアルな募集行為を禁止する方向に議論が進んでいるのは、残念と言わざるを得ません。このような議論が生まれた背景は、投資詐欺が電話や対面でのやりとりで行われることが圧倒的に多いからと言われています。

しかし、投資詐欺を防ぐためといって、ネット以外での資金の出し手と資金の受け手の直接的な接点を制限するというのは、クラウドファンディングにおける資金の出し手と受け手との関係性を無視しています。この記事を読んでいる皆さんは、自分が投資を検討している会社のことを、もっと直接的に知りたいと思いませんか?社長の話を聞きたい、その会社のオフィスを訪問したい、募集を取り扱うクラウドファンディングサービスの会社の人の話を直接聞きたいと思わないでしょうか?貸付型クラウドファンディングの「クラウドバンク」でも、取引を始める前に電話を掛けてきるお客様がかなりいます。「おたくはどんな会社だ?」「なぜそんな金利でサービス提供できるんだ?」「会社の財務状況は?」といった質問を受けます。

ウェブのサービスをやっている方ならお分かりだと思いますが、どんなにウェブサイトで「よくある質問」を充実させても、直接電話してくる人はなくなりませんよね。ましてやクラウドファンディングの場合は、大切な資金を拠出するわけですから当然です。最終的に「電話や対面での勧誘禁止」の内容がどのように整理されるのかはこの原稿を書いている時点では分かりませんが、株式型クラウドファンディングの普及を阻害する可能性があると考えており、私は強い懸念を抱いています。

金融の「民主化」が静かに始まる

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Image by Martin Fisch on Flickr

皆さんの多くは自分のお金を銀行に預けていると思います。銀行は皆さんから預かった資金を利用して、企業に融資したり、市場で運用したりして、金利を預金者に支払います。預金者は銀行を信頼して、その運用を任せている訳です。しかし、その資金がどのように活用されているか分からない上に、運用成果としての利息は微々たるものです。

バブル崩壊以降に行われた所謂ゼロ金利政策の結果、預金金利は殆どゼロに近くなりました。今では「預金で儲かった」という話を聞いたことがありません。私は、半沢直樹とほぼ同世代(笑)のバブル直後の銀行入行組ですが、あの頃の定期預金の金利はまだ結構高く、銀行の窓口には、退職金の小切手をもって定期預金の金利交渉をされる方が結構いました。今では考えられないと思いますが、僅か20年くらい前までは銀行の預金で老後の資金を運用していたのです。その後の金利の低下は、結局経営の行き詰まった銀行を救済するために、預金者を犠牲にして銀行を助けた形になっています。

個人の投資家は、預金に金利がほとんどつかなくなった上に、銀行が投資信託の窓販を始めて、リスクのある商品を買わざるを得なくなったのが、この15年くらいのことです。途中、ネットバブル崩壊やリーマンショックなどによって儲かった人も損をした人もいたことでしょう。世界的にも、サブプライムローン問題など金融機関が起点となったトラブルによって、多くの個人が直接的にあるいは間接的に被害を被ってきました。

クラウドファンディングやソーシャルレンディングやP2Pレンディングなどの新しいネット金融サービスが海外で誕生、あるいは成長してきた背景には、このような既存の金融機関への不信があったと言われています。「自分たちのお金がどう使われているかも分からず、銀行員の高額な報酬となり、何かトラブルが起きるとそのリスクを負担するのは我々個人なのだ」という怒りが、ウォール街で起った「We are the 99%」というムーブメントであり、あるいは「Move Your Money」プロジェクトとなって、個人の資金が新しい金融サービスやクラウドファンディングにシフトしていったのです。

クラウドファンディングは、インターネットを活用して、お金の出し手とお金の受け手との距離を縮め、その関係を出来る限り「見える化」する仕組みです。映画のプロジェクトに資金を出したある女性は、映画監督とのオフ会で「こんなに有効に自分のお金を活かせるなんて素晴らしい」と大喜びしていたという話を伺ったことがあります。それほどまでにワクワクしてお金を出す人がいるのは驚きですが、そのような消費者行動が生まれていることに「新しい時代の到来」を感じます。

そもそも金融機関に預けてあるお金は皆さんのものであり、金融機関のものではありません(当たり前ですが)。ですから、もっと自発的に、主体的に使っても良いはずです。第1回でも書きましたが、日本の個人は世界最大の現預金(850兆円超)を持っています。金融とか資産運用と聞くと、「自分には縁のない」「敷居の高い」というイメージがあるかと思いますが、クラウドファンディングは、この敷居を下げて、これまで金融機関に任せていたお金の活用を、個人が自発的に行う方向に変えていこうとしています。ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、「金融の民主化」が進もうとしているのです。

最後にークラウドファンディング成長のために

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さて、4回にわたったクラウドファンディングに関する寄稿もいよいよ終わりです。ここまで一生懸命読んで頂いた皆さんには心からの感謝を申し上げます。インターネットは様々なサービスを「破壊」し、消費者を力づけるサービスを生み出してきました。金融サービスにおいても、個人と個人がつながるソーシャルメディアなどが普及する段階になって、ようやく破壊的なイノベーションが起ろうとしています。ただ、このサービスが本当にインフラとして定着するかどうかは分かりませんし、私が生きている間に答えは出ないかもしれません。しかし、ここまでお付き合いいただいた皆さんには、その可能性はかなり高いーという私の手応えを感じて頂けたのではないでしょうか?

それでも、まだ揺籃期のクラウドファンディングが飛躍するにはやるべきことはたくさんあります。まず、事業者は、「お金を扱う」者としての責任を自覚して、信頼を損なわないように細心の注意を払うことです。特に詐欺的な案件に加担することがないように案件の目利きが大切です。一方で、前の話と矛盾するようですが、事業としてきちんと成立させることも大事です。継続出来ない事業は必ず淘汰されます。それは市場やユーザーから評価されていないということです。「儲かる」事業なら、新規参入企業も増えてくるでしょう。たくさんの事業者が健全に競争することがサービスの質の向上にもつながりますので、収益性を備えた事業会社がたくさん参入することが業界の発展には不可欠です。

次に、ユーザーの皆さんには、Move Your Moneyの発想で、ちょっとでも、自分のお金をクラウドファンディングに回してみてください。きっと今までとは違った感覚、少額の資金で世の中に良いインパクトを与えているという実感を得られるかもしれません。

最後に、株式型クラウドファンディングの法律改正(金商法の規制緩和)が進んでいますが、折角作ったこの制度を普及させたいなら、クラウドファンディング投資家への優遇税制などにも是非踏み込んでもらいたいところです。NISAで株式や投資信託への投資を推進するのも良いですが、クラウドファンディングへの投資にも同様のインセンティブを与えてくれたら、日本経済のお金の流れはもっと良くなると思います。

最後に皆さんに質問です。あなたは、どんな事業やプロジェクトのクラウドファンディングに参加してみたいですか?

例えば、

– ハリウッドの製作陣に3D版「機動戦士ガンダム」を作ってもらう
– 燕三条の刃物や食器の製造技術を世界に売り出すサポートをする
– 世界最大のヨットレース、アメリカズカップにニッポンチャレンジを再参戦させる
– 富士山やエベレストの清掃登山を応援する
– 日本一のお寿司屋さんのニューヨーク出店を応援する
– 取り壊し間近な歴史的建造物を保存する
– 資金不足で止まっている「あの映画」の製作を再開させる
– 被災孤児に奨学金を提供する
– 資金難で閉鎖された素敵なスキー場を再建する
– 2020東京オリンピックの候補選手の活動資金を応援する
– 三バン(地盤、看板、カバン)のない政治家の活動を応援する
– インドの貧困層向けの学校建築資金を応援する

ここに列記したことが次々と実現できたら、日本は本当に素敵な国になると思います。しかも、KicksatrterやLendingClubを使わなくても、日本のクラウドファンディングで実現できたら最高ですね。日本が「世界一クラウドファンディングが活用されている国」と言われるように、皆さんも力を貸して頂けるとうれしいです。

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