お母さんに理解できるか?:家計簿アプリ「Zaim」が200万ダウンロードを突破した閑歳孝子さんにインタビュー

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Takako-Kansai-ZaimZaimの代表取締役、閑歳 孝子さん

家計簿アプリの「Zaim」が、200万ダウンロードを達成したことを発表しました。2013年10月の100万ダウンロードから、約半年のあいだに100万人のユーザーを獲得したことになります。Zaimの丁寧なサービス作りについて、代表の閑歳 孝子さんに伺ってきました。

ユーザーは世界に、使い続けてくれるのは日本人

最近、ユーザー数の増加が特に顕著だと話す閑歳さん。サービス開始当初は男性ユーザーの比率が高かったものの、最近では半数以上を女性が占めるようになったと言います。

また、ユーザーが世界に分布していることもZaimの特徴の一つ。「お金」という誰にも共通するテーマがあることで、国外にもユーザーを抱えています。とはいえ、日本のお金文化を基に作られた、日本人にとって心地良い家計簿アプリ。

「英語での問い合わせなども多いですが、使い続けてくれているのは日本人です。家計簿サービスを作り始めた時に、お金というテーマならカルチャーは関係ないだろうと思いました。でも、例えば、給与や家賃など基本的な仕組みに違いがあったりして、やはり日本人に一番マッチしているのだと思います」

独自調査では、家計簿に挫折した84%が、「Zaimなら使い続けられる」と回答するほど着々とファンを増やしています。

自分の母親が理解できるか?

アップストア上位にランクインし続けることで、家計簿アプリを探すユーザーに上手くリーチすることができているZaim。その結果、最近では年金生活をするような人から若年層まで、ユーザー層に広がりが見られます。そんな中、大切にするのは、生活環境や経済状況も異なる誰もが違和感なく使えるかどうか。

リリース当初から「シンプル」をモットーに作られ、「一画面、一機能」を徹底。また、タップ数が増えても画面ごとの目的が一目でわかるように工夫を凝らしています。運用期間3年を迎えるアプリはどんどん研ぎすまされ、リリース初期より今の画面のほうがシンプルになっているほど。

デザインやUIのみならず、機能を表現する言葉の選び方にもこだわります。例えば、「振替」という言葉を一つとっても、誰にもわかるように以前は「お金の移動」という言い方をしていたり。閑歳さんには、常に自分に問いかける質問があるのだそうです。

「自分の母親でも理解できるか?これを基準にしています。例えば、「金融連携」って言われても母親にはなんのことかピンとこないんじゃないかな、とか。理解できないものにぶつかった瞬間、ユーザーはこれは自分のサービスではないなって思ってしまうので」

必要がない人は気づくことすらない変更の加え方

競合の家計簿アプリがひしめく中、閑歳さんが意識するのは、他ならぬエクセル。アプリという手軽な手段が広まるまで、エクセルこそ家計簿の役割を担ってきたから。標準のままでもシンプルに使えるし、自由にカスタマイズして作り込むこともできる。Zaimもそんな形を目指しています。

サービス運営に尽きものの「慣れと進化のバランス」に、Zaimは変更を「オプション」として提供することで対処。変更はひっそり行い、根本的な変更に関しては必ずチュートリアルを挟む。

興味深いことに、Zaimは初期設定のまま使い続ける人が全体の9割。自分用のカテゴリーを作成したり、細かいカスタマイズをして使っているのは残りの1割です。

「Zaimのユーザーさんは、小さな変更でも必ず気づいてくれるほど、とても真面目です。そうでなくても、慣れないものには誰でも抵抗を感じるもの。だから、その変更を必要としない人は、変わったことに気づくことすらないような改善の仕方を意識しています」

初期設定のままでも使うことができるし、ニーズがあれば、設定から細かく自分仕様に変えることもできる。例えば、年金で暮らしているユーザーのためには、「給与」を「年金」という言葉に変えられるようにするなど、ユーザーに選択肢を与えています。

作り手の意志が伝わるサービスを

さまざまな使い方をされるZaimは、遠方に住む息子さんが年金生活の父親の状況を見守るために使っていたり、夫婦が将来に向けてお金の使い方を共有する手段になっていたり。

最近、Zaimを一緒に使うご夫婦にユーザーヒヤリングを行ったところ、どこにも書かれていないアプリを作る想いがしっかり伝わっていることに感動したそう。

「その奥様が、サービス自体から作り手の意図を汲み取ってくださっていて、言わなくても伝わるんだ!と嬉しかったです。家計簿だからといって節約メインにはしたくないと思っています。楽しい人生を歩むために上手くお金を管理して、納得のいくお金の使い方をしよう。そんな風に楽しく使ってほしいんです」

Zaimは今年2月には金融連携をスタートさせ、現在も新な開発に取り組んでいます。でも、まだこれからが勝負なのだそう。

「分析や改善を繰り返してきたことで、予算内に支出がおさえられた!といったゲーム感覚で継続して使ってもらうところまでたどり着きました。これからは、お金をより良く使うための部分に集中していきたいと思っています」

これまで寄せられた4万件以上の問い合わせに全て目を通しているという閑歳さん。繰り返し届く要望に耳を澄ませ、着実にサービスの改善につなげていく。Zaimが究極の家計簿アプリに育って行く姿を、今後も追いかけていきたいと思います。

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