クラウドで酪農・畜産を効率化するファームノートが兼松やグリーなどから2.1億円を調達、〝家畜のウエアラブル〟開発を強化へ

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北海道・帯広を拠点にクラウドを使った牛群管理システム「Farmnote」を開発するファームノートは27日、総額2.1億円の資金調達を実施したと発表した。このラウンドでの出資には、兼松(東証:8020)、兼松アグリテック、グリー、コロプラ副社長の千葉功太郎氏、シックス・アパートCTOの平田大治氏のほか、非開示の国内事業会社1社が参加している。今回の調達資金により、ファームノートは牛の個体情報を収集できる家畜用ウエアラブルデバイスや周辺機器の開発を強化するとしている。

ファームノートは2013年11月に設立、経済産業省の助成制度「サポーティングインダストリー (ものづくり基盤技術) 」を活用し、2014年6月から酪農・畜産を効率化するセンサーデバイスやクラウドシステムの開発の取り組んできた。2014年9月に札幌で開催された「全国 Startup Day」では、開発着手からまもないにもかかわらずグランプリを取得している。

ファームノートを設立した小林晋也氏は、ブログ・プラットフォーム Movable Type の導入支援を提供するスカイアークの経営者としても知られている。小林氏は日本の牧場の93%が100頭以下の小規模経営であることに着目、小規模酪農家・畜産家に牛の個体管理をスマートフォンから完結できる Farmnote を無料で提供してきた。101頭以上を飼う中規模以上の酪農家・畜産家には有料メニューで提供しているが、この戦略が功を奏し、現在では日本全体の3%の酪農家・畜産家が Farmnote を使っているそうだ。

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「全国 Startup Day」in 札幌でピッチする小林晋也氏

現在は、牛の活動量をクラウドに収集できるセンサーデバイスを開発している。牛が身につけるため人間向けのウエアラブルと違って耐障害性が求められ、頻繁に着脱できるわけではないのでバッテリーも長持ちしなければならない。このデバイスの開発と牧場でのフィールドテストに時間とコストがかかっている。

今後の戦略としては、すでにクラウドサービスの Farmnote を使ってくれている酪農家・畜産家に、このセンサーデバイスを 使ってもらう。売り切り型か、月額課金のモデルになるかは未定だが、いずれにせよ、オーナーが自分で牛に着装し設置できる仕組みにする予定だ。(小林晋也氏)

牛のウエアラブルデバイスからはデータが電波で発せられるが(通信仕様については未定)、開発中のしくみでは、この信号を受信するゲートウェイを牧場の各所に設置することになる。牧場では電源の確保が難しかったり、インターネットへのアクセスが確保しづらかったりするが、ファームノートでは、そのような課題の解決も念頭に置いているようだ。牧場でセンサーからの情報収集が安価で現実的なものになれば、酪農や畜産のみならず、田畑を含む農業全般のデータドリブン化への応用も視野に入ってくる。ファームノートでは来春の発売を目標に、センサーデバイスや周辺機器の開発に注力している。

日本の畜産業は2.3兆円と米の農業よりも規模が大きい。家畜の餌や流通など、すべてを含めれば、その3〜4倍の規模になるだろう。畜産から攻めて、ゆくゆくは世界中の牛群や畑の農作物のデータを集められるようなりたい。

世界では人口増加に伴い、いずれ農地が不足し食糧危機が起きる。この問題を未然に防ぐには、食糧生産の効率化が必要だ。遺伝改良でのアプローチは既に世界随所で進められているので、ファームノートでは、家畜や農作物の管理ができるしくみを提供し、勘だけに頼らない畜産業・農業を実現し、食糧生産の効率化に貢献したい。(小林氏)

ファームノートではこれまでクラウドシステムの開発に注力してきたが、センサーデバイス開発の先行きに目処が立ったことから、今後はソフトウェア・エンジニアに加え、データ・サイエンティストなども積極的に採用していきたいとのことだ。東京に加え、札幌や帯広の拠点での勤務も可能だということなので、北海道が好きで、IT × 畜産業・農業に関わりたい技術者は、ぜひ同社の扉を叩いてみるとよいだろう。

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