2011年の設立以降、東京を拠点とするスタートアップの Beatrobo は、シェアリングと音楽発見のオンラインサービスからCDの代替を求めるハードウェアメーカーに進化した。設立者兼CEOの浅枝大志氏(写真左)は昨4月にPlugAirというカスタマイズ可能なドングルを発表した。これをスマートフォンのオーディオジャックに差し込めば、楽曲、音楽ビデオその他関連するコンテンツがクラウドからデバイスにすぐにダウンロードされる。
浅枝氏は本日(原文掲載日: 9月1日)、Beatrobo は PlugAir のテクノロジーを使用して決済市場へと参入すると発表した。この軸となる事業は、日本第3位のクレジット企業クレディセゾンによって後押しされており、クレディセゾンもまた、Beatrobo のシリーズBの資金調達ラウンドも主導するとも明らかにした。同社は具体的にいくらの提供をするのかは控えたが、浅枝氏によると、投資は11月に240万米ドルという多大な額で終わる模様だという。
浅枝氏は、Tech in Asiaに次のように語った。
この動きは実際はピボットと呼べるものではありません。新たな領域への進出です。当社はPlugAirが音楽のためだけのものではないと実感しました。利用者のIDやパスワードに代わるような、何であれスマートフォン時代における実体性のある鍵になれるのです。
浅枝氏とセゾン・ベンチャーズのCEOである三浦義昭氏(写真右)は、小型PlugAir(おそらくはキーチェーンからぶらさがっているかネックレスに埋め込まれている)をモバイル端末のヘッドフォンジャックに差し込むとすぐに認証されてeコマースの決済ができるような未来を思い描いている。
デジタル決済は将来変わります。今私たちは16桁の数字のあるプラスチックカードを持っていますが、これが変わっていくとしてもどのように変わるかはわかりません。PlugAirのような、代替的な(決済の)事業機会に関わっていたいのです。(三浦氏)
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クレジットカードより安全
浅枝氏によれば、PlugAirは通常のピンコードやパスワードはおろか、クレジットカードよりも安全であるという。それは秘密兵器か何かなのだろうか?その正体は、人の耳には聞き取れない音波である。
4桁のピンコードや8文字のパスワードは簡単に複数のサービスで使い回せて便利ですが、万が一そのうちの1つがハッキングされ盗まれると、残りの全部も危険にさらされます。それに対しPlugAirは256桁におよぶ使い捨てのパスコードを取引ごとに生成し、音波を使って使用機器に直接届けるのです。(浅枝氏)
PlugAir はBluetoothや wi-fi 接続にまったく依存していないため、モバイルインターネットのインフラが低速で古いものである場所でも利用が可能である。そのため国際的にスケール可能だ。
PlugAir ドングルは最初に挿入されたデバイスにロックされるため、さらにセキュリティ性が高まる。盗まれたクレジットカードとは異なり、拾ったり盗まれたりしたPlugAirは紐づけされたデバイスがないと無効扱いになってしまう。
PlugAir はいかなる実情報を含まず、特定のデバイスにロックされたシリアルナンバを備えたトークンなのです。盗まれたとしても使用されることはありません。違うデバイスで使うのに必要な開錠はクレジットカード会社を通してしかできないのです。(浅枝氏)
利便性と快適さ
クレディセゾンは国内外で決済業界を揺るがすような企業を探し求めている。同社はかつてCoin(サンフランシスコを拠点とするオールインワンのカードスタートアップ)やCoiney(モバイル決済処理ハードウェアを製造している東京を拠点とするスタートアップ)に投資してきた。
三浦氏は、eコマースサイトのそれぞれに個人情報を入力する面倒な手間を省くことでPlugAirのユーザにAmazonや楽天以外のサイトで取引を増やしてもらえればと考えている。
多くの人はクレジットカードの番号を知らないサイトに入力したいと思っていません。また、別のサイトに情報を入れるのを嫌って同じeコマースサイトに戻って来る人が多いことがわかりました。(三浦氏)
利便性に加えて三浦氏が考えているのは、PlugAir のようなソリューションがあれば多くの人が外での買い物を快適にできるということだ。
クレジットカードを持ち歩いて外でカード番号を入力したくないと考える人はたくさんいます。でも、これ(PlugAir)をキーチェーンに入れておけば、電車の中でもさっと取り出して通勤途中に買い物ができるのです。(三浦氏)
差し込みごとのマネタイズ
浅枝氏のマネタイズ戦略は予想外のものかもしれない。使用料をそれぞれの売買の割合に応じて事業主に請求するのではなく、「(彼曰く)Google MapsがAPIでマネタイズしているようなやり方で」差し込むごとに料金を取るシステムに興味を示している。
彼はまたこの小さなデバイスがただeコマース決済のためだけではなく、他のものにも使われることを望んでいる。例えばソーシャルメディアのログインやオンラインバンキングなど、浅枝氏の言うところの「IDやパスワードを要求するすべてのもの」にである。
彼はまた、このデバイス自体を有料にすることには関心を持っておらず、差し込むごとに課金されるシステムによってコストをまかなうことを目指している。
必要最小限の装備しか持たない最新のMacBookですら規格品のイヤホンジャックを備えている現在、これらのジャックが近いうちに消えてしまうことはないように思える。しかしもし現状が一変してしまった場合、PlugAirは 時代遅れになってしまう可能性がある。
当社の研究開発チームはすでに、イヤホンジャックを使わずにNFCやBluetoothを使用して動く代替機種を開発中です。(浅枝氏)
Beatroboはすでに今年4月、シリーズAラウンドでローソンから約110万米ドルの資金を受けており、2012年4月にはサイバーエージェント・ベンチャーズ、KLab Ventures、Movida Japanからシード資金として約60万米ドルの資金を調達している。
【via Tech in Asia】 @TechinAsia
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