ピッチセッション「Arena」でファイナリスト6チームが接戦——香港のBitMEXが優勝、日本発「IoTを使った頑張らない介護」のZ-Worksが2位を獲得 #tiasg2016

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本稿は、4月12日〜13日にシンガポールで開催されている Tech in Asia Singapore 2016 の取材の一部である。

4月12〜13日、シンガポール市内の Suntec Singapore Convention & Exhibition Centre では、Tech in Asia Singapore 2016 が開催された。このイベントで最も人気を集めるセッション、スタートアップがピッチで凌ぎを削る「Arena」では、アジア各地で開催された予選を勝ち抜いた6チームがピッチした。

審査員を務めたのは、

  • 田中章雄氏, Founder, Infinity Venture Partners
  • Saemin Ahn(안세민)氏, Managing Director, Rakuten Ventures
  • William Bao Bean 氏, Investment Partner at SOSV
  • Anis Uzzaman 氏, General Partner, Fenox Venture Capital

では、表彰結果とともに、ピッチに挑んだ6社の顔ぶれを見てみることにしよう。

【優勝】BitMEX(香港)

副賞:1万ドル

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BitMEX は Bitcoin や Ethereum など仮想通貨を使って、先物商品などのデリバティブ取引ができるプラットフォーム。小規模投資家が、Bitcoin や Blockchain 技術を使って、世界的な投資プラットフォームにアクセスできるようにする。世界で最大の仮想通貨デリバティブ・プラットフォームになることが目標(同社によれば、現時点でこの種のプラットフォームは世界初とのこと)。

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ローンチしてからの8ヶ月でユーザ数5,300人を獲得、月間取引高は6.5億ドル相当で、月間の(取引手数料などによる)売上は36万ドルに達しているとのことだ。現在、エクスパンションに向けて200万ドルを調達中。法律規制の関係でアメリカでは利用できないが、それ以外の地域であれば世界中で利用可能。Tech in Asia Singapore 2016 の1日目に開催された DBS Bank の Fintech Pitch Battle で優勝。

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【2位】Z-Works(日本)

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Z-Works は介護で必須となる見回り・通知・情報共有を、センサーとクラウドで運用することで、介護ビジネスや在宅介護の負担を軽減するプラットフォーム「Life Engine」を開発。男性で9年、女性で12年あると言われる実寿命と健康寿命の差の期間について、寝たきりなど症状が重篤化するのを防止することを意図している。心拍計センサー、モーションセンサーなど身には付けないセンサー技術を活用し、心拍数・呼吸数・離床や寝返り、トイレの長時間使用などを遠隔で検知し、必要に応じて介護者に通知する。

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フランス、オーストラリア、スウェーデン、日本など多国籍からなる17名のチームで構成されており、年内には高齢化問題が深刻な中国から海外展開を開始予定。ベルギーやアメリカでのサービス展開も計画している。

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【3位】Merlin(シンガポール)

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Merlin は、マーケッターが業務を効率化するためのプラットフォーム。フォームの作成、クライアントの獲得、報酬の請求といった手間のかかる作業を自動化することができる。クライアントから仕事を受注した際には、契約書の作成や締結をオンラインで完結。Merlin ユーザであるマーケッターには、契約毎の入金確認、どんな業務を請け負ったかなどを一覧管理できるダッシュボードを提供する。

1月末から2月頭にかけてα版をリリースし、先月単月で取扱高は380万ドルに達した。ビジネスマネージャーを雇えない、フリーランスや独立経営のマーケッターをターゲットにしているとのことだ。Merlin のサービスは、現在のところ、すべて無料で提供されている。

【Aliyun Award(阿里雲賞)】 GliaCloud(台湾)

副賞:Aliyun 1万ドル分の利用権

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GliaCloud は、人工知能によりビデオを自動生成できるプラットフォーム。文章を理解し分析することで、画像、クリップ、インフォグラフィックスを自動編集、字幕やナレーション(合成音声)も自動的に挿入される。現在は、英語、中国語、日本語に対応しているとのこと。

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今年は台湾と中国で展開、来年には日本や他のアジア諸国に展開するとのこと。現在、台湾のテックメディア「BusinessNext(数位時代)」のニュースサイト上でβテスト中。大規模出版社から始め、徐々に中小規模出版社やウェブメディアにも営業展開するとのこと。生成された動画に追加される広告収入のレベニューシェアでマネタイズするとのことだが、現在、テスト中ということもあり、完全にフリーミアムでサービスが提供されている。


以下は、ファイナリストに選ばれながらも、惜しくも入賞しなかった2チームだ。彼らの努力も賞賛の拍手を送りたい。

Docquity(マレーシア)

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Docquity は、医師専用のコラボレーション・プラットフォーム。医師同士は横のつながりが少なく、互いに情報交換する機会が少ないことからこのしくみを開発した。医師は Docquity は、自らの経験を他の医師と共有することにより、他の医師から一目を置かれる存在を目指したり、収入を増やしたり、入力した情報を簡単に検索したりすることが可能になる。

2ヶ月間で2,000人以上のユーザを確保し、1,000人以上の人脈が生成された。この間に、Docquity を通じてなされた医師同士のプライベート・メッセージの交換は35,000件以上に上る。製薬会社のレップ(営業担当)がアクセスできるようにすることで、彼らから1人の医師に対するアクセスを提供する毎に月額20ドルを徴収することでマネタイズ。

Pouch(インドネシア)

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Pouch は、世界中で開かれているイベントのためのチケッティング・プラットフォーム。偽造チケット、入場時の客さばき、入場結果の報告書作成など防ぐため、リストバンドタイプの NFC デバイスを開発した。ユーザはこのデバイスを事前にオンラインで購入し、腕につけて来場することで入場が認められる。

この12ヶ月で、インドネシア、シンガポール、マレーシア、イギリス、フィリピンのイベントで利用されているとのこと。QR コードなど、他にも類似の有用なしくみは存在するが、インターネットにつながっていない環境でも入場確認できることや、ソフトウェア面に特に強みがあるとのことだ。


以下は、表彰式の様子。

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