東京を拠点とするインキュベータ兼VCであるサムライインキュベートが、半年に一度のペースで開催してきたカンファレンス「Samurai Venture Summit(SVS)」は昨年、11回を数えて終止符を打った。惜しまれつつも幕と閉じた背景には、サムライインキュベートが創立されてから7年、天王洲に Samurai Startup Island ができて4年が経過して一つの節目だったことや、2014年に同社がイスラエルに進出したことが、カンファレンスのあり方を考える上で一つの契機になった。
この週末、サムライのカンファレンスが「Samurai Island Expo(SIE)」と名を改め、装いも新たに帰ってきた。これまで、代官山のオフィスビルや品川のマイクロソフト本社を使って SVS が開催されていたが、SIE ではなんと、天王洲アイルの街をまるごと貸し切ったイベントにするという。サムライインキュベートの本社でもある Samurai Startup Island のある天王洲アイルは、運河に囲まれた摩天楼がひしめきあう人工島だ。筆者のような非東京出身者にとっては、羽田空港に降り立ってから東京モノレールに乗り、「あぁ、これが東京なんだ」と最初に実感するのが、天王洲アイル駅を通過するあたり。そんな島の随所でスタートアップの祭りが繰り広げられた。

サムライインキュベートの代表取締役である榊原健太郎氏によれば、
イベントを屋内で開催していたのでは、スタートアップのうねりは、スタートアップのコミュニティの外へは伝わっていかない。そこで、1年くらいかけて地元商店街や警察などとの調整を図り、イベントを屋外で開催するようにした。
…とのこと。

その甲斐あってか、近隣住民と思われる家族連れが、屋外のステージ前で足を停めピッチに聞き入るなど、なかなか他のスタートアップ・カンファレンスでは見られない光景が目撃された。梅雨の真っ只中にもかかわらず開催両日とも好天に恵まれ、屋外でのブース出展やピッチにも支障がなかったのは、榊原氏が晴れ男だからに他ならないだろう。初開催となった SIE には、イスラエル大使館、La French Tech Tokyo、イタリアやイスラエルのスタートアップ各社、インドネシアのインキュベータなど海外勢も含めスタートアップ60社以上がブース出展し、国際色豊かな空気を醸し出していた。

そんな中で開催された「Startup Tel Aviv 2016 in Japan」では、女性起業家5人がテルアビブで開催されるスタートアップ・カンファレンス「DLD」への無料招待権を競って登壇。榊原氏のほか、イスラエル経済公使参事官の Noa Asher 氏、WIRED 日本版編集長の若林恵氏を審査員に招き、軒先(関連記事)、Deviewstory(関連記事)、Phybbit、AsMama(関連記事)、Any+Times(関連記事) の5社がピッチに披露した。評価が拮抗したため審査結果が出るまでには予想外に時間を要したが、最後に登壇した家事シェアサービスの「Any+Times」が優勝の座を手にした。

サムライインキュベートでは今年の9月にも、DLD が開催される日程にあわせ、日本からイスラエルを訪問するスタートアップ代表団を結成する予定があるということなので、興味のある人はコンタクトしてみるとよいだろう。
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セカイカメラや Telepathy で知られるシリアルアントレプレナーの井口尊仁氏もピッチに登壇していた。目下開発中のサービス「Doki Doki」のコンセプトビデオも披露されたが、現時点ではどのようなサービスになるのかはよくわからなかった。どうやら、ユーザが音声を録音して、それをシェアするサービスのようだが、来月くらいにはリリースできそうということなので、その日を楽しみにしてみよう。THE BRIDGE でも詳報をお届けできるよう努力したい。

屋内のセッションに目を移すと、Future Conference と Technology Conference という2つのトラックでパネル・ディスカッションが用意され、ドローン・AI・VR/AR といった最新テクノロジーや、日本国外のスタートアップ・コミュニティの状況を共有するセッションに多数の参加者が集まっていた。不肖・筆者も StartupHK の創設者 Casey Lau 氏と、東南アジアのスタートアップ・シーンやユニコーンに関するセッションをもたせていただいた。

SVS のカジュアルな部分を残しつつも、島をハックする形でスケールアップした SIE。渋谷のビットバレーに続く日本のスタートアップ・ハブとして、天王洲の街が世界中の起業家で埋め尽くされる日々は、そう遠くないのかもしれない。
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