中国人ゲーマーが日本でポケモンGoを「荒らしている」理由

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そうなるまで時間はかからなかった。

Niantic社の大ヒットARゲーム、ポケモンGoが日本でローンチされて1日もたたないうちに、日本のサーバーは中国人プレーヤーで溢れかえったといわれている。たとえば、Redditの膨大なポケモンGoカテゴリでトップになった投稿は、中国のハイレベルなプレーヤーが日本のポケモンジムを占領していることへの不満だった

一部のプレーヤーは、ポケモンGoをナショナリズムの宣伝にまで使っている。Redditのスレッドにポストされた写真では、靖国神社のジムが「中国万歳」というニックネームのハイレベルなカイリューに占領されていたことがわかる。

いつものように、中国人ゲーマーに対する怒りのコメントがRedditに溢れている。そして今後数週間のうちにさらに多くのアジア諸国でポケモンGoがリリースされるとともに、中国人プレーヤーの来襲が、現地で同じような怒りを巻き起こすことだろう。

ということで、相互理解のために、なぜこのようなことが起きるのか、アジア中のポケモンGoプレーヤーはどんな心構えをしておくべきなのか、いくつかの疑問に答えていこう。

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なぜ中国人ゲーマーは日本でポケモンGoをプレイしているのか?

中国人ゲーマーが日本でポケモンGoをプレイする最大の理由は、単にプレイしたいからである。現時点で中国ではポケモンGoはプレイできず、ゲームを楽しみたい中国人プレーヤーは他国のサーバーにアクセスしてプレイするしかない。記事執筆時点で、ポケモンGoサーバーが利用できる中国から最も近い国は日本である。

一部のプレーヤーは民族主義的な理由のために日本のサーバーを利用しているが、それはごく少数派だと思われる。ほとんどの中国人のポケモンGoプレーヤーは、ゲームを最良の状態で楽しみたいという理由だけで日本のサーバーを利用している。

中国のモバイルゲーム人口は巨大なため、残念ながら、「ごく少数派」は、何万人もの無法者になりうる。そして当然のことだが、これら無法者が中国人プレーヤーで最も目につくので、多くの人は、中国人プレーヤー全てが騒ぎを起こそうとして日本のサーバーでプレイしていると考えてしまう。

愛国主義とどう関連しているのか?

筆者はほとんどのプレーヤーが純粋に楽しむためにプレイしていると考えているが、ポケモンGoを日本でプレイすることに「愛国的な」側面があることも確かである。

まず、他のアジア諸国同様、中国は第2次世界大戦中、日本の侵略にひどく苦しめられ、それは中国のナショナリストの心にいまだに深く刻まれている。日本で象徴的なもの、特に、1,000名以上の戦犯を含む多くの戦死した日本人を祀った靖国神社に打撃を与えることは、中国のナショナリストにとって大きなアピールになるようだ。

しかし、より重要なのは、南シナ海の問題に関する、ハーグ仲裁裁判所の裁定であろう。厳密にいえば、中国とフィリピン間の紛争に関するオランダの仲裁裁判所の裁定は日本とそれほど関係はないのだが、中国ではこの裁定は、アメリカと日本が中国をコントロールしようとする圧力であり、(多くの中国人が考えている)中国の正当な主権範囲を奪おうとする動きだととらえられている。中国のナショナリストはこの件で憤慨し、これを国際的な侮辱ととらえており、日本のポケモンジムを乗っ取ることは、裁定に対する不服と不満の表現のひとつなのである。

しかし、繰り返すが、ポケモンGoをプレイする中国人ゲーマーのほとんどは、このようなことをしているわけではない。彼らは単にゲームをプレイしたいだけだ。

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中国人ゲーマーは日本でポケモンGoをどのようにプレイしているか?

中国ではポケモンGoが入手不可能なため、中国のモバイルゲーマーはVPN経由でアクセスし、どうにかしてアプリをダウンロードしなければならず、そしてGPSを偽装する別のアプリを使う。GPS偽装とは簡単にいえば、偽のGPS情報をスマートフォンに渡すことで(たとえば)利用者が実際には中国にいるのに、ゲーム上は日本にいてポケモンが捕まえられるようになるものだ。

このような偽装ツールの多くは、ゲーム上でもチート(不正)ができる機能も持っており、本当はプレイヤーが実際に歩いたりどこかに移動したりしなければならないのを、ボタン一つで「歩き回る」ことを可能にする。しかしこれらのツールはポケモンGoでチートする全世界のプレイヤーに利用されており、中国人プレーヤーがこのような機能を他国のプレーヤーより多用しているという実際の証拠はどこにもない。

読者の国でポケモンGoがローンチされたら、同じことが起こるか?

起きるかもしれない。一般的な中国人ゲーマーは単にゲームをプレイする場を求めているだけなので、自国でプレイできるようになるまでは、アジア中のサーバーに現れるかもしれない。多くの東南アジア諸国のように、中国と領土問題を抱える国であれば、(うっとうしい)主張の手段として、愛国主義ポケモンプレイヤーがその国のサーバーに溢れかえるかもしれない。

中国でポケモンGoサーバーが利用可能になり、中国人がいなくなるまでどれだけ待つことになるか?

おそらく、かなりの時間がかかるだろう。筆者は個人的には、将来にわたりポケモンGoが中国で利用できることはないと考えている。それが間違いだったとしても、相当の期間、中国には上陸しないだろう。それには大幅な改変(たとえばGoogleマップの代わりに中国用のGPS地図に変更するなど)が必要になり、さらには国家新聞出版広電総局の長期間を要するモバイルゲームの認可プロセスを経る必要があるためだ。

中国人ゲーマーがMMO(大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)など、その他のゲームを「荒らしている」こととは関連しているか?

一部の中国人ゲーマーは明らかに扇動家だといえるが、ほとんどの場合、中国人ゲーマーが海外ゲームサーバーに溢れかえっていたら、それは中国でそのゲームが利用できないか、人気のあるゲームの一部が中国からアクセスできないためである。

World of Warcraft(ワールド オブ ウォークラフト)のような大規模ゲームの場合、経済的な要素もある。多くの人が海外サーバーでゴールドを買おうとするのだ。しかし中国人ゲーマーはしばしば、面白そうだが中国でリリースされていない(たとえば)韓国の新しいMMOゲームのサーバーを溢れさせる。どこでも同じだが、中国のゲーマーは他国ですでに利用できるゲームや機能が自国に導入されるまで待てないのだ。

彼らには同情すべきところもある! 中国人ゲーマーがゲームを利用できるようになるのはたいてい最後で、仮に利用できたとしても、そのゲームはまた、検閲済みのものばかりなのだ。

中国人ゲーマーが海外サーバーをパンクさせるのがいまいましいのは理解できるが、覚えておいてほしいのは、中国の人口が莫大なのと、中国政府の規制が厳しいことは彼らにはいかんともしがたいことだ。彼らはただ、ゲームをプレイしたいのだ。

真に責められるべきは誰なのか?

これは複雑かつ主観的な質問だ。しかし確実なのは、ポケモンGoが中国でプレイできたなら、中国人プレーヤーが海外のサーバーを「侵略」する問題ははるかに軽微だっただろう。ではなぜポケモンGoは中国でプレイできないのだろう?

開発者であるNiantic社が単に優先度が低いと考えているのかもしれないし、中国当局(SAPPRFT、国家新聞出版広電総局)の規制が厳しいからかもしれない。中国インターネットでGoogleサービスをブロックし、ポケモンGoを導入するにはゲームのインフラに大規模変更を加えざるを得なくした中国政府のせいかもしれない。

しかし、だれを責めようとしてもかまわないが、筆者が言いたいのは、ほとんどのゲーマーは責められるべきでないということだ。もちろん、他国のサーバーに入り込んで荒らすことに弁解の余地はない。しかし、GPSを偽装して日本のサーバーに入ること自体は、それがゲームをプレイする唯一の手段であるのなら、荒らしとは違うと言いたいのだ。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】