世界で拡大する「ビジネス版Airbnb」を紐解くーー”Corporate Housing”を掲げる2nd Addressの挑戦

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Photo by bruce mars on Pexels.com

ピックアップ2nd Address picks up $10M from GV, Foundation to take on Airbnb in business travel

ニュースサマリー:ビジネス旅行向けAirbnb「2nd Address」は2月4日、GV(旧名称:Google Ventures)をリードとする1000万ドルの資金調達に成功した。同じく投資ラウンドに参加したのは既存投資家のFoundation Capital、Amicus Capital、Pierre Lamondなど。

30日以上の長期出張ビジネスパーソンを対象に、ホテルと比較して4割程度安い価格で利用できる物件紹介プラットフォームを運営する。ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、ワシントンDCで3200件以上の宿泊場所を提供し、650人のホストが登録されている。

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話題のポイント:2nd Addressは一言で表すとAirbnb版「ビジネス・ウィークリーマンション」です。コスト面においてもメリットが高く、ホテルなどに長期宿泊した際より4割程安くなるといいます。現在は米国4都市(サンフランシスコ、ロサンジェルス、ワシントンDC、ニューヨーク)で運営しており650人のホストがプラットフォームを通して3200以上もの住居を提供しています。法人向けプランも展開しており、今回投資をリードしたGoogleやSAP、FacebookなどIT企業が中心となって利用を開始しています。

同社は以前、HomeSuiteという新しい都市に引っ越してきた人向けの、短期間の物件賃貸サービスを提供していました。しかしユーザーの伸びが見込めず、現在のビジネストラベル事業へとピボットしたようです。

同市場はグロース段階で今後も大きく成長が見込まれる分野です。Allied Market Researchのレポートによると、2023年までにビジネストラベルの市場規模は約165億ドルにまで膨れ上がると予想しています。特にアジア太平洋地域における2017年から2023年までの年平均成長率は5.5%とエリア別で最も高くなっています。

Business travel market by geography
Credit:Allied Market Report

競合であるAirbnbも同様のターゲットに絞ったサービス「Airbnb for Work」に力を入れ始めています。同社が昨年8月に公開したブログでは、サービス利用者の内15%はビジネス旅行目的の予約で、出張時における民泊利用ニーズが顕在化していることがわかります。

そんな市場の盛り上がりに反して、国や地域によってはAirbnbのような短期民泊プラットフォームを規制管理下に置こうとする動きも強まっています。このような状況を理解した上で同社は支払いや予約など全て賃貸規則に準拠させるなど、法的問題にひっかからない工夫を凝らしているようです。

では、上記で触れたAirbnbのビジネストラベラー向け「Airbnb for Work」と2nd Addressの具体的な違いはあるのでしょうか。2nd Addressの説明では「体験の違い」にポイントがあるようです。

同社のブログによれば、Airbnbは旅行者が旅先を楽しめるローカル体験にフォーカスした物件が多いそうです。確かに国内でも古民家などに人気があると聞くので、現地に実際に住んでいるような体験が重要になるのは理解できます。

一方、同社のサービスは、宿泊者の生産性向上にフォーカスした物件に力を入れています。例えば、2nd Addressはアメニティーに関してはAirbnbの平均的な物件より質の高いものを取り入れているそうです。これにより、ビジネストラベラーが宿泊先で何か作業をする際、効率的に物事が進むことが期待できます。こういった物件を同社は「Corporate Housing」と呼び、これが法人利用における大きな利点となっているのでしょう。

ただ、Airbnbも順調に法人利用やビジネストラベラーの利用が増加傾向にあります。同社が昨年12月に発表したレポートには国別出張利用の増加率が示されています。南米ではアルゼンチン、ブラジル、メキシコが極めて高く、アジアでは韓国が、そしてアフリカ大陸では南アフリカが顕著な増加を見せています。

またAirbnb for Workでは、チームビルディング・エンゲージメント向上のためのグループ参加型の体験を提供することで、ビジネス利用者の満足度向上を目指しています。さらに2017年より始まったコワーキングスペース「WeWork」とのパートナーシップでは、宿泊者には低額で1日利用パスが購入ができるようになりました。

つまりAirbnbは「宿泊場所+αな場所・体験」を提供することで利用満足度に繋げようとする一方、2nd Addressは「宿泊場所で全て完結」を目指していることが伺えます。

2nd Addressのようなサービスは増え始めており、米国では累計で1億3000万ドルを調達しているSonderやDomio、EUではフランスのMagicStay, AtHomeHotelやドイツのHomelikeなどが生まれています。シリコンバレーで挑戦している日本人起業家、内藤聡氏のAnyPlaceも同じ領域になるでしょう。国内ではどのプレーヤーがこの領域に挑戦するのでしょうか。(編集:増渕大志)

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