優秀な大学生はカネを返すーー学生向けP2Pレンディング「SoFi」が5億ドルを調達、その躍進の謎を紐解く

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2019-05-31 09.24.18

ピックアップSoFi Announces Over 500 Million Strategic Growth Investment Led by Qatar Investment Authority

ニュースサマリー:5月29日、サンフランシスコに拠点をおくオンライン・レンディング・スタートアップのSocial Finance(通称「SoFi」)は、Qatar Investment Authorityから5億ドルの資金調達を実施した。今回の調達により、同社の累計調達回数は12回目に達し、調達額は25億ドルに及ぶ。2017年にはSoftbankら複数から10億ドルを調達している。

ちなみに、同社は2017年のシリーズFラウンドでほぼ同額の資金を6つのファンドから調達しているが、評価額は当時と変わっておらず43億ドルだとされている。

話題のポイント:SoFiとはどんなスタートアップなのか、そのサービス概要と沿革を解説します。SoFiが提供するのはP2Pレンディングといい、インターネット上で貸し手と借り手をマッチングするサービスです。

同社が成功した主な要因は、ハーバードやスタンフォードなどのハイレベルな大学に在籍する学生を借り手顧客に、そして彼らの先輩であるその大学の卒業生達を貸し手顧客に、それぞれターゲットを選定しレンディング仲介サービスを提供している点です。

高学歴な学生達は卒業後高収入な仕事につく可能性が高く、かつファイナンスに関するリテラシーや責任感も高い傾向があるため、借入額及び返済率は高くなります。つまり、同社は”借りた金を返す人が多いマーケット”に対し的確に狙いを定めたことで、サービスを拡大することに成功したということです。

その他にも、銀行より借り入れの金利が低いことや投資家にとって利率が高いこと、AIによる与信スコアの算出、手続きがオンラインで完結するため利便性が高いことなどが同プラットホームの特徴です。ですがそれらの要素は他のオンライン・レンディングプラットホームも同様に持ち合わせているものであり、実質的な優位性はそのマーケット選定にあったのだと考えられます。

学生向けローンというスローガンから、SoFiに対しソーシャルなイメージを抱く人は少なくないと思います。しかし実際の顧客層は主に高学歴、いわゆる”金持ち”の人々です。その意味では、”金持ちほど金を生む”という市場の摂理を正しく理解・利用した”王道の金融サービス”であるとも言い換えられるのではないでしょうか。

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現在では事業を多角化し、住宅ローンや個人向け融資、株取引などのサービスも展開していますが、数ある米国のP2Pレンディング・スタートアップ(Lending Clubなど)の中で競争優位を保てているのは、上述した学生向けマーケットでしっかりとドミナンスを勝ち取っているためです。

2017年末にはセクハラ疑惑によって、前CEO兼創業者のMike Cagney氏が退任するという出来事もありましたが、今回は新しいCEOであるAnthony Noto氏が就任して以降初めての調達ということになります。新体制へと変容し、サービス拡大を図る同社の今後に注目です。

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