本稿は、イスラエル・テルアビブを拠点に事業展開している、Aniwo で事業開発を担当する Tomoko Sugiyama 氏による寄稿。
2019年5月に Aniwo に参画し、9月よりイスラエル駐在。
以前は、Amazon Japan で事業開発、ソフトバンクモバイルで事業開発を担当していた。
2019年9月9日〜10日の2日間、イスラエルのテルアビブで開催された「CannX 2019 Medical Cannabis Conference」に参加してきた。医療用カナビス(医療大麻)のエコシステム活性化を目的としたカンファレンスで、今年で4度目の開催となる。
カナビスと聞くと、日本ではまだまだ危険なドラッグのイメージが強いが、世界では既に41カ国が医療用としての使用を認めており、大麻の抽出物である CBD(カンナビジオール)に関しては、51カ国が使用を認めている。
ラテンアメリカでは、カナビスによる国内外への経済効果が期待されており、現在はパナマを除く全ての国で、カナビスに関して医療利用、娯楽向け利用、栽培の全て、もしくはいずれかが合法化されている。
今回のカンファレンスのプログラムを見てみると、医療用カナビスの効果に関する報告と、輸出入などの法規制やビジネス面に関するトピックが多かった。イスラエルではまだ輸出が認められていないので、輸出解禁に期待している人が多いようだった。
医療用カナビスの効能については、パネル展示でも成されており、日本からも一件、報告が上がっていた。CBD が引きこもりの改善に効果的であるという報告で、運よく会場でパネル出展者である京都大学霊長類研究所の正高信男教授ご本人にもお会いすることができた。
引きこもりの子はそもそも病院に行かないので、薬局で手に入る CBD の効果がきちんと認められれば、社会的なインパクトも大きい。CBD の取扱が認可されていない日本では、実証実験の実施も困難なので、今後、日本でも利用が認可されることに期待しているとのことだった。
教授は、CBD の自閉症への効果はさまざまなところで取り上げられているが、『引きこもり』は病名ではないので、海外では注目されにくいテーマだとも語っていたが、現地イスラエルのカンファレンス参加者も、興味深そうにパネルを見ていたのが印象的だった。
一方、出展ブースはというと、医療用と、レクリエーション目的での CBD やテルペン [1] 利用製品の出展企業が半々という印象。その他、栽培関連で農業関連の企業からの出展もあった。
CBD オイルを扱っているイスラエルの Cann10 に製品について話を聞いたところ、最近は純度よりも、CBD の配合量を競っている感があるとのこと。また、CBD 市場においては品質管理が今後の課題の一つで、高い配合量をうたっていても、実際に効果が見られない粗悪品も増えているという。高品質のカナビスの安定供給を目指して、農業関係企業がカナビス栽培に乗り出す理由に納得だ。
出展ブースで目を引いたのは、CBD 入りのスキンケア用品と、見た目は電子タバコのような CBD 吸引機器だ。イスラエル国内では医療用以外の使用はまだ認可されていないため、いずれもレクリエーション用としては販売されていないが、EU 諸国では既に販売が開始されていて、かなり人気のようだ。
CBD を一切含まないテルペンの出展も見られた。
午後には会場が打ち合わせスペースも混雑しカンファレンスは盛り上がっていたが、2018年にも参加したという出展者によると参加者数はやや減った印象で、カナビス市場自体も、一時期のお祭り騒ぎから落ち着いてきているとのこと。スタートアップ、関連企業、投資家等のステークホルダーは、ビジネスとしてよりシビアに方向性を見出そうとしているようだ。
医療用、レクリエーション用、いずれのカナビス市場についても今後の展開に引き続き注目していきたい。
Members
BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。無料で登録する