急成長する暗号資産「ステーブルコイン」、そのメリットとリスクは?

SHARE:

 

B63AA8C3.png
Image Credit: Messari Portal

ピックアップUSDT surpasses $10 billion

ニュースサマリー:Tetherが発行する暗号資産「USDT(テザー)」の時価総額が10億ドル(約1.1兆円)を突破した。本記事では現在大きく成長を見せるステーブルコインについて、ステーブルコインとは何かという点や、そのメリットやリスクについて考察する。

話題のポイント:暗号資産といえばBTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)などが有名で、この2つは、現在時価総額ランキング1位、2位に位置付けています。

ですが、世の中で3番目に大きな時価総額を持つ暗号資産が何なのかはあまり知られていません。それはUSDT(テザー)と呼ばれる価格の安定した、いわゆるステーブルコインと呼ばれる暗号資産です。

Screenshot 2020-07-02 at 12.37.28 PM
暗号資産時価総額ランキング上位3つの銘柄、価格及び時価総額は執筆時点(2020年7月2日)     参考:Coingecko

価格の安定したというのは文字通り、ビットコインやその他の一般的な暗号資産のように価格変動がほとんどないことを意味します。価格が安定する仕組みは極めてシンプルで、米国ドルをUSDTを発行するTetherに預けると、預けたドルと同額分のUSDTが発行される設計です。例えば2ドルを預ければ2USDTを受け取ることができます。

今年3月の金融市場のクラッシュに合わせて、暗号資産市場も大きな暴落を経験しました。それ以降、資産の退避先としてUSDTをはじめとするステーブルコインの需要が急増しています。USDTの発行量は今年3月以降2倍以上になっており、現時点でステーブルコイン市場のシェア80%を占めています。

ステーブルコインのメリットは、価格の暴落リスクに晒されない点や、ボーダレスかつ低い手数料でのデジタル決済・送金が実現できる点です。現時点のユースケースは単なる安全資産、もしくはアービトラージやデリバティブなどの仮想通貨トレードでの利用に限られてはいますが、将来的にはブロックチェーン上の経済圏全体の主要な価値交換手段となる可能性があります。

<参考記事>

現在はまだローンチされていませんが、FacebookのLibraプロジェクトもステーブルコインLibraの発行を予定しています。同プロジェクトは、当初は主要各国の法定通貨のバスケットで発行する予定でしたが方針転換し、現在はUSTDとほぼ同じモデルでLibraを発行する予定です。

現時点では、USDTを始めどのステーブルコインもオンラインショップなどでの商用利用はされていません。しかしLibraが正式にローンチされれば、Facebookエコシステム内でLibraが使えるようになるので、一般層にまでステーブルコインの利便性が認知されることになる可能性があります。

ただし、USDTやLibraのように法定通貨の預託を元に発行される暗号資産に欠点がないわけではありません。BTCやETHなど価格変動を伴う暗号資産と決定的に異なる点は、利用者は金融機関を信用しなくてはならない点です。

先日明らかになった決済企業ワイヤーカードの不正会計問題では、保有しているはずの2280億円の現金が存在しないことが判明し、同社は破産に追い込まれました。もしUSDTで同様の事実、つまりユーザーが預けていたはずのドルが紛失していることが判明すれば、USDTの価値はゼロになります。

ステーブルコイン市場はこれからも大きく成長し、Libraやその他大手企業の参入により一層競争が激化していくと考えられますが、上述のような反比例した肥大していくリスクにも気を配る必要があります。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する