AI先生はオンラインで教育の何を変えているのか

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atama plusが公開したカルチャーコード・ブック

ニュースサマリ:AI先生「atama+」を展開するatama plusは7月9日、学習塾の業態変化に対応するソリューションを公表している。感染症拡大防止に学習塾が対応しているものを支援する形で、例えば同社のソリューションをすでに導入している能力開発センター(運営はティエラコム)では、従来の通塾コースに加えて自宅でも受講を完了できる「オンラインコース」を開始している。このコースではコーチングを必要とする授業形式を生徒の希望に応じて通塾もしくはオンライン(自宅等)から選べるようになっている。

また、生徒は塾や自宅などの場所の制約なしに、いつでも必要なだけatama+を使った学習に取り組むことができるほか、先生の方もatama+ COACH上で、生徒の学習姿勢や進捗などの確認が可能となった。オンラインの場合のアドバイスは電話やオンライン面談などを通じて実施される。

この支援サービスによって、atama+を導入している能力開発センター以外にも、城南予備校DUO、Z会グループの大学受験ディアロなどがコースの拡張を実施している。現在、同社のサービスを導入している塾や予備校の数は1900教室におよぶ。

話題のポイント:感染症拡大の影響もあって、デジタルトランスフォーメーション(DX)というワードがここ数カ月で一気に爆発した感がありますが、教育におけるDXを牽引しているのは間違いなくatama plusでしょう。単なるデジタルツールを導入するのではなく、学習をティーチングとコーチングに分類するアイデアで学習様式そのものを変革し、人工知能によるオリジナルの教材開発で完全な差別化に成功しています。創業から3年で主要学習塾が多数導入しているという実績だけでなく、学習時間が大幅に短縮されているという事実も彼らの強みです。

また、学習塾にとって人の接触を減らす必要が出てきたことも、彼らにとって大きな挑戦の機会となったはずです。これまで実はatama plusにとってインターネットはエンドユーザー側の提供価値としてはあまり大きなものではありませんでした。あくまで学習塾という場所での提供が前提だったからです。

しかし今回の出来事で、いかにして自宅で学習塾と同等の効果を出せるのか、という大きな宿題を与えられたわけです。もちろんこれまでにもZ会のような通信教育は脈々と続いており、それらと何が違うのかを証明しなければなりません。

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6月にはオンラインでも質問しやすい機能を追加(同社リリースより

ポイントはやはりコーチングです。

atama plusのメリットは前述した通り、ティーチングとコーチングを分離したところで、生徒は基礎的な学習についてはAI先生の教材を使って効率的に学習をこなしていきます。しかし、どうしてもつまづく場所については人に聞く必要があります。

この生徒のつまづきを事前に予測して先生にアドバイスするタイミングを教えてくれるのがatama+ COACHのメリットです。遠く離れた場所であってもやり方は同じですから、先生はつまづく生徒のアラートを元に、電話をかけたりオンライン面談でアドバイスすればよいのです。これは通常の学習を単にオンライン化するだけでは実現できない体験です。

AI先生に教えてもらった生徒は、習得にかかった時間や目標までの予測学習時間がある程度わかるようになっているので、計画が立てやすいというのもリモート化に追い風だと思います。

こうやって見てみると、現在のワークスタイルをリモートにしている社会人と重なるところがあります。会社のオフィスに詰め込んで上司部下で顔色を伺わないとできない仕事のスタイルはそもそも何かが間違っているように思います。

学習も同じで、周りに人がいた方が集中できる、という場合は教室に行けばいいし、現在のように人が密集してはいけない場合は離れても同じ体験が提供される方が圧倒的に可能性は広がります。学習塾も場所の制約から開放されれば新たなビジネスチャンスを得ることになります。

こうやってみるとatama plusは教育だけでなく、この市場のビジネスモデルそのものを大きく変える存在になるのではと期待が膨らみます。

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