個店にフォーカス・配達料も安いフードデリバリ「Chompy」、プレシリーズAラウンドで6.5億円を調達——東急デパ地下からのお取り寄せも

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Image credit: Syn

東京・渋谷などを中心にフードデリバリサービス「Chompy(チョンピー)」を運営する SYN(シン)は6日、プレシリーズ A ラウンドで6.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ANRI、Coral Capital、DCM Ventures、Delight Ventures、The Breakthrough Partners GO FUND。これは、同社が設立後まもない昨年6月に実施したシードラウンドで実施した2億円の調達に続くものだ。

Delight Ventures と Coral Capital はシードラウンドに続くフォローオン。SYN 創業時からの累積調達額は約9億円に達した。

今回の調達を受けて、SYN はこれまでオープンβ版として提供していた Chompy の正式ローンチをアナウンスした。また、配送料無料で複数店舗からオーダーできる「らくとく便」、東急百貨店との協業により、東急百貨店の地下食料品店街(デパ地下)から取り寄せができる実証実験も開始する。

大見周平氏

SYN は、DeNA でカーシェアリングの「Anyca(エニカ)」事業の立ち上げなどに従事した大見周平氏らにより創業。また、創業当初からクラウドワークス副社長の成田修造氏もアドバイザーとして名を連ねる。大見氏は、自分が共感できるか、社会課題を解決できるか、将来の夢を他の人々と共有できるかを軸に、さまざまな事業の可能性を模索してきたという。

そんな中で、食は日本が持つ世界的にも非常に強いアセットであるを再認識し、一方で、高齢化や単身生活や共働きといった社会構造の変化に、現在の飲食業の提供形態は必ずしもフィットしていないと考えた。多額の設備投資やアグレッシブな多店舗展開に依存する従来型モデルに依存しなくても、消費者に望まれる飲食店に新たな収益源を提供することを Chompy は目指している。

飲食業は、もともと(新型コロナ前からも)創業から3年で半分が倒産する市場。統廃合は非常に激しい。もちろん、新型コロナはそれを加速するし、新しい出店を控える人もいるだろう。そこに、どのような仕組みを提案していけるかだと思う。

飲食業の人々が持つエモい部分と、さまざまなバリューチェーンを切り分けて考えられるかどうかが重要。料理人を揃えるマネジメント力、キッチンがあること、食材を揃えられること、ゲストにサーブできること——いろんなバリューチェーンがあるが、それを明確に定義できている会社の方が、新型コロナ後もうまくいっている。(大見氏)

大見氏によれば、飲食店が外食の延長上でフードデリバリをやろうとするとうまくいかないという。利益を圧迫し、場合によっては逆ザヤにさえなる。コロナ禍においては、来店時ほどの最高の体験は提供できないにせよ、まずは店を知ってもらうためにレシピを公開したり、手ごろな価格の持ち帰り用メニューを販売したりして、多くのファンの獲得に成功する飲食店も現れている。

飲食店の多様性と料金の安さを実現する仕組み

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Uber EATS や出前館など先行するフードデリバリとの差別化要素の一つは、徹底した飲食店のレベルの高さと多様性だ。SYN は選抜条件を明らかにしていないが、Chompy への参加を希望した飲食店のうち実際に掲載されるのは3割程度だという。全国的にチェーン展開する飲食店は少なく、結果として、熱狂的な常連客の多い個人経営の飲食店が多くを占めている。

Chompy が渋谷周辺から攻めているのも、そういう理由からだろう。SYN が全国へとスケールする野望を持っていることは事実だが、まずは渋谷周辺でこのモデルがワークすることを確かめ、そこから首都圏や都市部にサービス拡大していくと見られる。渋谷はまさにギグエコノミーのメッカであり、ここを制する者が日本全体を制すると言っても過言ではない。

今週、Uber EATS が配達料月額定額制モデルを発表したが、これを迎え撃つ形となる Chompy もまた料金面で引けを取らない。日本のフードデリバリは、世界的に見ても店舗への手数料が高く、また顧客が支払う配達料も高いため、フードデリバリは外食ではないものの金額的にちょっとした豪華な食事になってしまう。

Chompy ではこれを「まとめて注文」を受け「まとめて配達」する方法でロジスティクスを効率化し、店舗手数料や配達料を低く抑えている。その極め付けが今日スタートした、「らくとく便」だろう。らくとく便に参加している飲食店からのデリバリは配達料が無料となっている。

らくとく便では、昼食や夕食時間帯の1時間前までに注文することで配達料が無料化され、複数店舗を横断した同時注文も可能になる。これを可能にするのが、大見氏が「玉子屋方式」(玉子屋は首都圏のオフィス向け仕出弁当屋で、発注数に応じて配達先に近いバンで量をやりくりするロジスティクスは有名)と呼ぶロジスティクスの仕組みで、飲食店で料理をピックアップするスタッフと、料理を客にデリバリするスタッフに分け、中継地点で料理を交換することで効率的な配送が可能になっている。

デパ地下の名店も

SYN は今日、東急百貨店と提携したことも発表した。これにより、今後、東急百貨店のデパ地下に入居する食料品店からも取り寄せができるようになるようだ。実証実験ということなので、具体的にどの店舗がどの程度の規模で参加するのかは現時点で不明だが、コロナ禍でが外出抑制が求められる中、店舗にとっては売上を確保しつつ、消費者にとっては三密を避けながらも食卓を豊かにできるため、正式サービスとして採用されることに期待したい。

<参考文献>

SYN のチームは、現在20名程度の体制で運営されているが、今回の資金調達を受けて、システム開発、カスタマーサクセス、マーケティングなどの人員を拡充したい考えだ。