パワード義足開発のBionicM、シリーズAでUTECや東大IPCらから5.5億円を調達——社外取締役にpopIn創業者の程涛氏が就任

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Image credit: BionicM

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

パワード義足を開発する BionicM はシリーズ A ラウンドで5.5億円を調達したことを発表した。このラウンドに参加したのは、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)、科学技術振興機構(JST)。UTEC は昨年のシードラウンドに続く出資。また、BionicM は2018年、東大 IPC の「1st Round」の前身となる「起業支援プログラム」の3回目の公募に採択され、資金支援を受けたことを明らかにしていた。

BionicM が開発するパワード義足は、従来の動力を持たない受動式義足が抱える課題を解決する義足。設立以前の研究段階より、「SXSW Interactive Innovation Award」を日本チームとして初めて受賞ジェームズダイソンアワードにおいて国内最優秀賞を受賞するなど、高い第三者評価を受けている。今月には、中国のスタートアップ支援組織 Leaguer Group(力合集団)が深圳で開催するコンテスト「Advanced Technology and Engineering Challenge(A-TEC、智創杯)」に日本代表として出場予定。

BionicM は、自身も骨肉腫のために9歳のときに右足の切断を余儀なくされた Xiaojun Sun(孫小軍)氏らが設立したスタートアップ。2015年に、東京大学大学院情報理工学系研究科情報システム工学研究室で研究開発がスタートした。世界に1,000万人いる義足の潜在ユーザのうち、高価であったり機能が限定的であったりすることが理由で、実際に義足を利用できているのは40%程度の人々。義足を必要とするすべての人々に高性能な義足を低価格で届けるべく、製品化に向け2018年に会社法人を設立した。

BionicM の説明によると、世界の義足市場の99%以上は受動式義足であり、ロボットテクノロジーが普及する昨今において、その技術進化の恩恵が及んでいない市場だという。受動式義足は義足利用者への身体的負担が大きいだけでなく、自然な歩行動作を取れない、階段を両足交互に昇降することができないなどの制約から周囲の目が気になるという精神的負担も生んでいる。この課題を解決できる可能性があるのがパワード義足だ。

BionicM では2021年の商品化・販売開始に向け、パワード義足の量産化に向けた体制作りを準備中で、今回の資金調達はそのための体制強化を目的としたものだ。BionicM では、膝・足首などのパワード義足の標準モジュールを全国の義肢製作所に供給、義肢製作所がモジュールをソケットに組み込み、下肢切断者などに販売する形の B2B2C のビジネスモデルを成立させたい考えだ。

BionicM は開発中のパワード義足について、来年にも補装具の完成用部品認定を受けることを目指している。この認定を受ければ、一般的には障害者自立支援法に定められた補装具費支給制度の対象となるが、パワード義足はハイエンド製品で高価であるため、ユーザ購入時に助成金の対象とならない可能性もある。同社では分割払やリースなどを導入すべく事業会社との協業も模索する。

高い義足には補助金が出にくい。補助が出ても自分で一括で支払わなければいけない。BionicM では技術のイノベーションだけでなく、レンタルやリースなどサービスの提供形態についても、事業会社と組むことで新しいビジネスの形を取り入れていきたい。(Sun 氏)

BionicM は6月に中国法人を設立し、4名の社員が営業展開を始めている。中国は人口が多いため、義足市場も日本のそれより大きい。売上の観点で見れば、事業立ち上がり後の成長は、日本よりも中国の方が大きくなる可能性は十分にある、と Sun 氏と語った。

BionicM は今回の資金調達とあわせ、popIn の創業者で CEO の Tao Cheng(程涛)氏を社外取締役に迎えたことも発表した。Cheng 氏と Sun 氏は共に中国出身で、東大発のスタートアップで当初 UTEC から支援を受けたという点で境遇も似ている。Sung 氏は Cheng 氏のことを、日本でイグジット(popIn は2015年 Baidu が買収)を果たした中国出身の先輩起業家として尊敬しており、ハードウェア企業である BionicM にとって、Cheng 氏が持つソフトウェア企業経営の経験が大きく役立つだろうと述べた。

<参考文献>

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