行動経済×チャレンジャーバンクーーイスラム教徒向けオンライン銀行「insha」

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Image Credit:insha

行動経済とフィンテックの相性の良さは度々目にします。出費を抑えたり、貯蓄目標を達成させるために特定の行動をトリガーとする設計のものです。

たとえば貯蓄アプリ「Qapital」。2015年に米国で立ち上げられ(創業はスウェーデン)、3,000万ドルの調達を果たした2018年には米国市場で42万ユーザーを抱え、5億ドル近くが貯蓄されたといいます。同社はデビットカードから予算管理ツール、ロボ投資に至るまで、多岐にわたるサービスを展開しています。

ユーザーは自分で貯金目標額と、そのためのトリガー行動を設定します。たとえば毎日スタバでコーヒーを買うのであれば、カード利用されると同時に同額を貯金すると言った具合です。ユーザーの目標を満足させるため、日常行動を基にサポートするQapitalの業態はある程度市場にハマっているようです。

Qapitalのサービス形態はターゲットを変え、特化市場向けに応用されています。それがイスラム教徒向けのチャレンジャーバンクを展開する「insha」です。

Image Credit:insha

inshaは欧州市場を中心に展開する、「規範ある口座」をコンセプトにした銀行サービスです。オンライン銀行口座や貯蓄目標のサポートなどはQapitalと同じ。同社は先日250万ユーロの調達に成功しています。預金が何に使われているかを気にする倫理的意識の高い消費者層に向けて、より幅広い金融商品を提供するのがinshaです。同社の投資口座を利用することで、ユーザーは倫理的なビジネスアイデアに投資することができるようになります。

もともとイスラム教では自分で働くことなくお金を稼ぐことが嫌われています。

そのためinshaでは、利息を徴収する消費者ローンに預金が使われていないことが保証されています。加えて、投資講座の運用資金が武器製造業者を筆頭とする道徳的に問題性のある企業へ流れることもありません。お金の流れも宗教や改修制度に伴うことで変わってきます。UXも当然変わるので、この点を行動経済学に則って最適化させたのがinshaです。

イスラム教は世界で大きな影響力を持つ宗教のひとつです。中東や東南アジア、中国にもリーチできる市場がありますし、Qupitalとは違い市場特化型のサービスであるため、同じ共通点を持ったコミュニティ形成もしやすい印象があります。TAM(Total Addressable Market)の大きさを考えつつ、他社と違いのあるコンセプトを打ち出すことで差別化の図りやすいサービス事例の好例と言えるでしょう。

今回はイスラム教の事例を挙げましたが、それ以外にも特定の疾患や職種、民族、ジェンダーに最適化したオンライン銀行が出てくるかもしれません。金融機関も幅広く種類が用意される時代になってきそうです。

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