処方箋配達を数行のコードだけで導入の「薬局版Stripe」日本の7兆円市場は誰が獲る?

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Image Credit:Truepill

処方箋デリバリー市場が大きく変わろうとしています。

オンライン診察が主流になってきており、処方箋は薬局へネットで転送され、そのまま直接自宅へ薬が届く体験が浸透しつつあります。病院へ向かうこと自体がリスクになっている中、誰もが望む体験となりました。つい先日、Amazonが処方箋デリバリーサービス「Amazon Pharmacy」を立ち上げたことからも、今後は自宅で完結する診察体験が不可逆的なものとなるでしょう。

ただ、課題となるのは処方箋デリバリーのフルフィルメントを構築しなければいけない点です。遠隔医療サービスを整えたとしても、完全オンライン体験を提供するには、処方箋の承認から配達に至るまでの仕組みを作り上げなければなりません。こうした課題をAPIの概念を用いて解決するのが「Truepill」です。同社は9月に7,500万ドルの調達をしています。

Truepill はB2B向けの処方箋デリバリーサービスを提供します。オンライン医療プロバイダがTruepillを利用すると、同社が抱える専属薬剤師に処方箋の承認をもらい、そのまま全米6拠点のフルフィルメントセンターから直接顧客へ薬を届けられるようになります。Stripeが決済市場をAPI一つで繋いだように、数行のコードを入れ込むだけで処方箋デリバリーを導入することができます。オフラインからオンラインへと診察・診療体験が変わったからこそ生まれたソリューションと言えるでしょう。

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同社は2C向け医療サービスを作るのではなく、B2Bに焦点を当てた事業モデルを運営し、2016年から2019年にかけて100万件の処方箋を処理した実績を持ちます。また、2018年に4,800万ドルの収益を上げているといいます。

TruepillはForbesが選ぶ次のユニコーン企業に選出されていますが、コロナの影響でその提供価値が再認識されることでしょう。日本でオンライン診療・処方箋診断が導入され、一般的になるのには時間がかかるかもしれませんが、次の1、2年で当然のように議論されるはず。厚生労働省によると、2017年度の日本における調剤医療費は7兆6,664 億円と試算されています。いずれは処方箋配達サービスも当たり前になるかと考えれば、巨大な市場がTruepillの事業モデルの参入先となります。

処方箋デリバリー市場には、StripeのようなAPI・SaaSの考えを応用するスタートアップが活躍できる余白があるのです。こうした市場ポテンシャルをTruepillが示しています。日本のみならず、アジア市場でも十分あるでしょう。すでに処方箋デリバリーが認可されたアジア他国で、Truepillモデルをローカライズさせると面白いかもしれません。

今後、Truepillは数百のラボテストのAPI化も進めていくとのことです。テスト受入可能なネットワークを揃えることで、オンライン診療機関の顧客からの希望があれば、すぐにテストの注文と結果を自宅へ送付することができます。昨今、ヘルスケアIoTの精度も高まり、高機能キットを使った自宅内検査が可能となりましたが、新サービスが立ち上がればより検査が身近なものとなるでしょう。

医療機関のインフラとして機能するのがTruepill。とてつもない市場成長性を秘めていると感じます。日本ではこの座を誰が獲るのか、とても注目しています。

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