#WebSummit 2020のピッチ・コンペティションは、エチオピア発のデジタル診療記録システム「ABAY-CHR」が優勝

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本稿は、WebSummit 2020 の取材の一部である。

リスボンで開催されていた WebSummit 2020 で、3日間に及ぶイベントのクライマックスとなるピッチ・コンペティション「PITCH」で、エチオピア発のデジタル診療記録システム「ABAY-CHR」を開発する Lalibela Global-Networks が優勝した。本稿では優勝した Lalibela を含む、ファイナリスト3チームを紹介する。

コンペティションには、世界中から千社に及ぶスタートアップがエントリし140社が参加を許され、準決勝や準決勝を経て決勝では勝ち残った3社が戦いに挑んだ。昨年の WebSummit の PITCH に引き続き、2年連続で医療系スタートアップの優勝。今年の姉妹イベント Collision の PITCH でも、医療系スタートアップが優勝していた

ピッチの審査条件は、プロダクトの可能性、ディスラプティブかどうか、財務面での評価、チーム構成、ピッチの品質の5点。決勝はの審査員を務めたのは次の方々だ。

  • Anna Scally 氏 —— Head of Technology and Media, KPMG(アイルランド)
  • Theresia Gouw 氏 —— Founding Partner, Acrew Capital(アメリカ・シリコンバレー)
  • Cristina Fonseca 氏 —— Venture Partner, Indico Capital Partners(ポルトガル)
  • Wayne Ting 氏 —— CEO, Lime(アメリカ・サンフランシスコ)

Lalibela Global-Networks(エチオピア)

Lalibela Global-Networks は、公衆衛生医療分野で28年にわたる経験を持つエチオピア系アメリカ人の医師 Wuleta Lemma が設立したスタートアップ。患者を中心に、どの病院・診療所でも機能するエンドツーエンドのデジタル診療記録システム「ABAY-CHR」を開発している。一般的な紙の診療記録の場合、患者が診療カードを破棄してしまうと、以前の診療記録は参照されることなく、医師は病歴を確認することができない。また、異なる医療機関で診療されると、以前の診療記録が引き継がれることもない。

ABAY-CHR では診療記録は病院サーバやクラウドに暗号化された形で保存され、病院の担当医師らは、自らのパスワードでログインして必要な患者の記録を閲覧できる。大病院でなくても、農村部にあるクリニックでもノーコードで導入できるのが特徴。Lalibela は月次利用料を徴収するが、紙で運用されている現在のシステムに比べコストを大幅に下げることが可能。エチオピアのみならず、周辺諸国や南アジア諸国への導入を目論む。Jack Ma Foundation(馬雲公益基金会)のトップ20ファイナリストに採択。

Rheaply(アメリカ・シカゴ)

近年、企業や組織はサステナブルな目標の設定を求められるようになっている。2016年に設立された Rheaply はクラウドベースのプラットフォーム「Asset Exchange Manager(AxM)」を提供、循環型経済の拡大に取り組んでおり、企業が使用済みの機器やその他のリソースを販売、レンタル、購入できるようにしている。再利用が優先され、企業は二重購入や不必要な資本投資を避けることができる。

Rheaply には現在6,000人以上のユーザがいて、その大半は、大学、製薬会社、バイオテクノロジー企業、テクノロジー企業、政府機関などだ。そのネットワークによって、14.5トンの廃棄物が埋め立て地に行くのを避けることを可能にし、2019年には全体で130万ドルを節約したことになるという。また、プラスチックに関しては、プラスチック製品を30万ドル以上を節約することに貢献したという。

swIDch(イギリス・ロンドン)

swIDch は、CNP 詐欺(デビットカードやクレジットカードを提示しない、e コマースなど非対面決済で行われる詐欺の総称)の不正撲滅を目指すサイバーセキュリティスタートアップだ。特許取得済みのアルゴリズムにより、決済会社がネットワークが使えない環境でも、追加インフラを必要とせずに動的なクレジットカード番号の発行を可能にする。カード番号が動的に変化するため、ユーザはカード番号が仮に漏洩したとしても不正な請求がもたらされる可能性がなくなる。

オフライン取引では、カード番号はカード券面に印字されておらず、標準的な EMV(セキュリティチップ)や、非接触または磁気ストライプ決済を採用。オンライン取引では、カードをスマートフォンにタッチすると、ワンタイムの動的なカード番号が表示される。このカード番号は、標準的なカード会員データと同じフォーマットを採用しているため、どのオンライン加盟店でも使用できる。動的または静的な仮想カード番号を使うことで、セキュアな環境維持に用いられるトークンサーバやメンテナンスコストも発生しない。