日本人起業家によるベトナムの飲食店向けB2Bマーケットプレイス「KAMEREO」運営、シリーズAで5億円を調達

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KAMEREO のメンバー:左から3番目が代表取締役 CEO 田中卓氏、左から5番目が CTO 東角比呂志氏
Image credit: Kamereo

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

ベトナム・ホーチミンシティ(HCMC)を拠点に、飲食店向けの仕入れプラットフォーム「KAMEREO」を運営する KAMEREO は18日、シリーズ A ラウンドで5億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、タイ財閥 CP Group(Charoen Pokphand)傘下の食品関連企業 CPF Group、Quest Ventures(求索創投)、ジェネシアベンチャーズと、名前非開示の個人投資家。ジェネシアベンチャーズは、前回の2019年1月に実施されたラウンドに続く参加となる。

Quest Ventures は、中国で Groupon クローン Wowo(窩窩、もしくは55Tuan=55団)を成功させ、NASDAQ 上場させたシンガポール人起業家 James Tan 氏や中国人起業家 Yunming Wang(王贇明)氏らが2010年に設立したベンチャーキャピタルで、これまでの投資先は60社超。有名な投資先には、先月ユニコーンクラブ入りが明らかになった自動車売買&サブスクの Carro や、早ければ年内にも SPAC(特別目的買収会社)を使ってアメリカでの上場が報じられているフリマアプリの Carousell などがある。

「Kamereo」
Image credit: Kamereo

KAMEREO はベトナム・ホーチミンシティ(HCMC)を拠点に活動する日本人起業家、田中卓氏により2018年6月に設立。彼はクレディスイス証券に勤務の後、ベトナムの外食産業界を席巻するピザチェーン「Pizza 4Ps(ピザフォーピース)」で取締役 COO を務めた人物だ。BRIDGE が報じた際には、日本でいうインフォマート(東証:2492)のような、飲食店がさまざまなサプライヤーとの間で生じる連絡・取引・管理を効率化するプラットフォームを標榜していたが、そこから少し事業をピボットしたようだ。

日本とベトナムでは構造が違う。日本では、チェーンや複数店展開している飲食店も多く、サプライヤーがどこか一店舗に卸し始めると、そこから芋づる式に取引が始まって、ネットワーク効果が出やすい。レストランには、サプライヤーにオーダーした通りのものが正しく届く。

しかし、ベトナムは飲食店もサプライヤーもまだ発展途上だ。店によっては家族経営みたいなところもあり、一店舗ではオーダーにボリュウムが出ず、近くのマーケットから直接買ってきたりしていて、ネットワーク効果も出にくい。そこで、2019年8月に、サプライヤーサイドの仕組みを改善する事業にピボットした。現在は、生産者から買い付けて店に届ける事業を展開している。(田中氏)

KAMEREO のメンバー
Image credit: Kamereo

ホーチミンシティを訪れた人ならわかるかもしれないが、街のあちこちで開発が進む一方、昔ながらの市街地には細い路地が残っている。そういったところにタイムリーに食材を届けるために、バイクが重宝しているそうだ。バイクでは一度にはたくさんの食材を運べないが、KAMEREO ではホーチミンシティ市内に複数の物流拠点を設けることで、飲食店と倉庫の間を効率よく往来できるよう工夫しているという。店舗からの支払は、COD(代金引換)以外に、半月毎、1ヶ月毎などの選択肢を用意し、掛け売りを可能にしている。

食材の買い付けにあたり、野菜の多くは農家など小規模事業者から調達しているが、肉については屠殺場や HACCP 認証を受けた生肉工場など設備投資を必要とするため、大手企業との契約が必須になる。今回のラウンドに参加した CPF Group はタイ企業ながら、ベトナムに東南アジア最大の鶏肉加工工場を有するなど、ベトナムのフードサプライチェーンにおいても無視できない存在だ。KAMEREO ではそういった背景から、今回 CPF Group からの資金調達を決めた。

B 向けの食材サプライチェーンプラットフォームは、各国で堅実な成長を見せている。アメリカの FoodMarven、中国の Meicai=美菜(ブルームバーグは5月、アメリカでの IPO 準備にあると報じた)、インドの Ninjacart(5月時点の時価総額は5億米ドル)、ケニアの Twiga Foods 、ポーランドおよびハンガリーの Supp.li などがそれだ。KAMEREO の現在の社員数は約100人。同社ではホーチミンシティに続き、2022年にはベトナムの首都で人口2位の街ハノイに進出し、ベトナムにおけるリーディングプレーヤーの地位を獲得したいとしている。

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