コロナ禍で事業は9割減、飲食店「DX」favyはどう復活した

SHARE:

ニュースサマリ:飲食店向けデジタルマーケティング支援などを手がけるfavyは3月に東日本旅客鉄道(JR東日本)が提供する定額制サービス「JRE パスポート」に同社のソリューションが採用されたことを発表している。導入が決まったのは「favyサブスク」で、JR東日本が手がけるエキナカ、駅ビルの店舗中心にサービスの提供を開始する。

導入が決まっている店舗のひとつ、コーヒーショップ「ベックスコーヒー」では4月1日よりベックスコーヒープランとして月額3,500円で来店ごとにブレンドコーヒーのSサイズを1日3回まで提供してもらうことができる。これ以外の店舗もそれぞれでオリジナルの月額定額サービスを提供する。なお、複合の店舗が入居するエキュート品川では、一部の店舗を対象とした共通の「エキュート品川サブスク EVERYDAY PLAN」を月額300円で提供し、店舗ごとにドリンクサービスや割引を受けることができる。

話題のポイント:favyは個人的にも興味を持って創業前から取材をしているスタートアップのひとつです。飲食店向けデジタルマーケティング支援と言えばぐるなびや食べログ、Rettyなどを中心とする口コミやクーポン、集客支援が王道ですが、ここにサブスクリプションの考え方や、店舗貸しなどを含めた多チャンネル戦略を組み合わせたのが特徴です。いわゆる「OMO(オムニチャネル最適化)」の考え方は現在、モバイルオーダーなどで広がっています。デジタルからリアル店舗への誘導ですね。

さて、そんなfavyなんですが当然ながらここ数年のコロナ禍の影響を真正面から受けていたようです。favy代表取締役の高梨巧さんにお話伺ったのですが、favyに有料クライアントとして登録していた8,000店舗は最終的に800店舗まで落ち込んでいたことを教えてくれました。

高梨さんに許可をいただいて取材の一部をポッドキャストとして配信しているので、詳しくはそちらをお聞きいただきたいのですが、この危機に対して高梨さんたち経営陣はかなり早いタイミングで事業規模の縮小を断行し、結果、最盛期に200人いたメンバーは半減してしまいます。

ただ、ここが彼らのポリシーというか、飲食店に関わるスタッフは一切手をつけなかったそうです。というのも彼らは飲食店向けのデジタル化支援をする傍ら、自らも事業者としてショーケース的に店舗を運営しているので、もし、ここのスタッフを切ってしまえば、そんな会社が他の飲食店のデジタル化支援などできないと考えたようです。

では、高梨さんたちはそこからどのように舵取りをしたのか。答えはエンタープライズにありました。

エンタープライズへ舵を切った結果、JR東日本などが導入企業に

そもそも高梨さんは81世代の起業家なんですが、創業期のアイレップに参加した経験もあり、デジタルマーケティングに関しては相当の知見があります。そこで、早期に積み上げが効いて、かつ、大きな予算が期待できるエンタープライズに一気に舵を切ることができたのです。

ただ、これまで小さな飲食店向けに丁寧にデジタル化支援をしてきたメンバーにすると、スキル的にも大きな路線変更になるため、このタイミングで話し合って、残るかどうかを決めたというお話でした。

その後、これまで手がけてきたサブスクリプションサービスをキリンビール(※)などの大手に対して提案し、昨年の秋頃からはJR東日本グループのコーヒーショップ、ベックスコーヒーへの導入を足がかりに今回の提携に漕ぎ着けた、というわけです。

足元の店舗数は、小規模飲食店を集めていた時の8,000店舗(favy有料の利用店舗)には及ばないものの、現在、favyサブスクソリューションを利用している店舗数は約3,200店舗以上に回復しており、売上などの事業規模については、エンタープライズ向けの事業貢献もあって、コロナ禍前の水準にほぼ戻ったそうです。

飲食店版「WeWork」を再開

これに加えて、favyでは元々、飲食店向けコワーキングスペースの事業を模索していました。今回、取材で伺ったre:DineGINZA(リダイン銀座)もその一つで、銀座一等地の9階にあるフロアには、いくつかの飲食店がfavyのデジタルインフラを活用しながら飲食店経営をしています。

この飲食店向けコワーキングスペース事業を彼らは「RaaS(Restaurant as a Service)」と呼んでいて、不動産や什器だけでなく、飲食店の開業に必要な集客やデジタルインフラの提供もすべて含めて提供する、言わば「レストラン版WeWork」モデルです。

現在、コロナ禍が落ち着きつつある今、彼らはこの展開をさらに拡大させようとしています。3月17日にオープンした宮城県の「仙台みらいん横丁」もその一つで、飲食店をやりたいシェフは、売上歩合でここに入居することができます。さすがだなと思ったのはここがサブリースではなく、マスターリースによる運営だという点です。

通常、屋台村のような飲食事業を手掛ける場合、集約する事業者は不動産会社からその場所の契約を一括して引き受け、入居する事業者に貸し出し(サブリース)ます。しかしこれでは、今回のような災害が発生した場合、飲食店を集約する事業者はリスクが大きすぎることになります。

そこで高梨さんたちは不動産事業者と交渉し、家賃については入居する飲食店の歩合ベースで支払われるモデルに変えたそうです。不動産事業者は店舗となる場所を、favyは飲食店が開業できるためのスペースづくりやデジタル化支援をするという協業モデルです。

入居する飲食店も始めやすいのはもちろんですが、やはりやめやすいというのもメリットです。結果、なかなか借り手が見つからない場所にも入居希望が相次ぎ、現在、提供している横丁シリーズのほとんどは埋まっているということでした。

7年近くかけて積み上げてきた事業規模が10%になった時、辞めようと思いませんでしたか?と尋ねたのですが、ほぼ即答で全然、と返した高梨さんの顔が忘れられません。

※BRIDGE Membersの方にはポッドキャストの書き起こしを配信いたします。

【ここからはBRIDGE Members(会員)の方のみご覧いただけます】

続きを読む

※記事初出時に吉野家の名前を挙げましたが、こちらのリリースにある通り、サブスクリプションの取り組みではなく、シェアレストランにおける別の取り組みでした。訂正の上補足させていただきます。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度「BRIDGE Members」を運営しています。会員向けコミュニティ「BRIDGE Tokyo」ではテックニュースやトレンド情報のまとめ、Discord、イベントなどを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。登録は無料です。
  • テックニュース全文購読
  • 月次・テーマまとめ「Canvas」
  • コミュニティDiscord
  • イベント「BRIDGE Tokyo」
無料メンバー登録