フィードバックループの短縮化【ゲスト寄稿】

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.


私たちが日頃から投資先企業に推奨している考え方のひとつに、「フィードバックループの短縮化」の追求がある。

フィードバックループを短くすること、つまり「スピードを上げる」ことは、スタートアップ企業がダイナミックな市場を切り開くための基本だ。フィードバックループを加速させることは、リーンスタートアップの哲学におけるMVP(顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)の概念を支えるものだ。

短いフィードバックループを追求するのと逆の戦略は、行動する前にテーマを深く研究し、プロジェクトのあらゆる側面を丹念に理論化し、想像しうるすべての結果に対する計画を準備することである。この方法は、長期のプロジェクトに有効かもしれないし、一般的には、ミスが命に関わるような状況では必要とされている。(しかし、政府がボランティアに同意を得て十分な情報を提供した上でワクチンの安全性試験を行い、より短いフィードバックループを認めていれば、コロナの死者を抑えられたと主張することができる。)とはいえ、このようなアプローチは、スタートアップにおいてはほとんどの場面で不利となる。

設計、MVPの構築、配備、市場フィードバックの収集、これらの繰り返しをスタートアップが行うことが、製品の市場適合性を見つけるために極めて重要である。顧客に製品を試してもらい、これを繰り返すことが製品開発に不可欠な市場洞察を得るにおいて最速の方法だ。しかし、私はこのような考え方が当たり前でないことに驚いている。

短いフィードバックループの考え方を利用する場面は、スタートアップの最初の製品と市場の適合性を検証する段階にとどまらない。これは営業、人事、投資家向け広報活動、ベンダー管理など、会社のすべての業務に浸透させる必要がある。短いフィードバックループで運営することは、スタートアップの機敏な動きを促進し、学習を加速させることで競争優位の源泉となり得るのである。(逆に、混雑した市場や変化の激しい市場では、これを怠ると競争上不利になる。)

例えば、優秀な営業マンは、当然ながら即時のフィードバックを求める。さらに、人間は短いフィードバックループで成長する性質があり、それは幼児としての最初の一歩から始まっているのだ。これがこの分野の学術研究の一例となる。

社員への迅速かつ頻繁なフィードバックもまた重要である。スタートアップの社員が、自分の仕事が期待に応えているか、あるいは正しい優先順位で仕事をしているかなどが明確でないと、組織の集団的な焦点がずれてしまう。これは、士気を低下させることにもなりかねない。同様に、部下が安心して上方へのフィードバックを行えるような環境を作ることも、スタートアップのCEOの責任だ。

さらに、投資家へのフィードバックサイクルを短くすることは、多くのメリットをもたらす。ビジネスの最新情報を頻繁に提供することで、投資家の間でスタートアップが常に注目され、顧客の紹介や資金調達、さらには社員の採用などにおいて投資家が協力しやすくなる。また、スタートアップの財務状況が悪化する前に、投資家に注意を喚起することで、予防的な機能としても働く。

多くの起業家にとって、この行動は自然に身につくものだ。私たちはこれを賞賛し、すべての創業者がこれを習慣として取り入れることを推奨している。

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