スタートアップにおけるデザイナーの存在意義とは?「Design dot BEENOS vol1」レポート #BEENOS

Junya Mori by Junya Mori on 2014.6.30

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スタートアップに関わる人々のためのイベント「Design dot BEENOS」が新しくスタートした。筆者は6月27日(金)に開催された初回のイベント「スタートアップにおけるデザイナーの存在意義」に参加した。

「Design dot BEENOS」はBEENOSが主催するイベントだ。アマゾンデータサービスとの共催となっており、コンセントのUXアーキテクトにして書籍「Lean UX」の監訳者でもある坂田一倫氏と共に開催するイベント。

初回には、スタートアップの創業者であり、経営者であり、デザイナーでもあるQiitaの小西智也氏が登壇し、自身の経験を語った。

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小西智也氏は、Increments取締役、創業者兼デザイナーとして、これまで「Kobito」「Qiita」「Qiita:Team」の3つのプロダクトの開発に携わってきた。スタートアップは、限られたリソースで、何が当たるかわからない中プロダクトを開発し、サービスを急激に成長させたいと考えている。小西氏は、スタートアップにおける製品開発を大きく以下の4つのステップに分けて説明している。

    1. 課題の発見と評価
    2. ソリューションの調査
    3. 製品の最適化
    4. 事業の拡大

このステップの中でも実際にものを作るのは2の途中から。この過程においてデザイナーは一体どういった役割を担っているのだろうか。

Qiitaの場合(ダメなパターン)

小西氏「Qiitaは、何もわかっていない状態から開発がスタートしました。デザイナーとしてキャリアがスタートして半年ごろで、「こうしたらいいんじゃない?」を詰め込んで開発し、自分たちの好きなようにサービス作ってみてリリース。すると思ったより反応がよくない。サービスリリースからしばらくして、Q&Aサイトから情報共有サイトへとピボットしました。

Q&Aサイトと比較すると反応はよく、簡単な検証ができました。その後、Onlab4期に採択され、メンターが付きました。そのときにヒアリングの重要性を認識し、以後はヒアリングとカイゼンを重ね、徐々にサービスが定着していきました。

Kobito の場合

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小西氏「Qiitaのユーザヒアリングをしていく中で、大きな課題の存在していることに気づきました。それは「エンジニアがメモをとるためのツールで良いものがない」というものでした。調べたところなかったので自分たちで作ろう、と。

今回はQiitaのときとは違い、まずはペーパープロトタイピングを実践。前回いきなり開発することに失敗していたことと、エンジニアからの圧力もあって。やり方は本を買って読んでみて実践してみた。ってやってみました。

しっかり検証をしてサービスをリリースした結果、Qiitaを作ったとき以上の反応が返ってきました。アプリが解決しようとしている課題と、提供する価値はおそらく正しいと判断でき、これが初めての成功体験になりました。このサービスは現在も開発を続けています。」

Qiita:Teamの場合(現在)

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小西氏「次に開発したのは、社内で情報共有しやすいツールがないという課題を解決するための社内の情報教諭ツール。このときはまずひたすらユーザヒアリングを実施しました。一ヶ月で30人くらい。そして、仮説をペーパープロトタイピングで検証。ソリューションの形はこれで正しいのか?を検証しました。

検証を繰り返すことで、作ろうとしているサービスはKobito以上に大きな課題があり、かつ提供できる価値も確信に近いと判断しました。価値の大きさに対応するためデザイナーを増員。今ではメンバー6人中デザイナーが2人になっています。」

デザイナーの役割

小西氏「先述したプロダクト開発の流れにおいて、1〜3の部分にうまく対応することができるのがデザイナーだと思っています。エンジニアやBizDevのメンバーはそれぞれ見なくてはならないポイントがあります。1〜3にまたがって見ることができるのはデザイナーだと思います。」

小西氏は、これまで話してきた内容を以下のようにまとめた。

    1. 製品開発に必要な力は大きく分けて「仮説検証力」「設計力」「実装力」の3つ
    2. 開発フェーズによってやるべきことは変わってくる
    3. フェーズで必要になる作業をチームでどう分担するかが大事

開発のフェーズによってやるべきことは変化し、その必要になる作業をどう分担するかが重要になる。このときデザイナーが価値を出すためには、「仮説検証力」「設計力」「実装力」で影響力を発揮することだと考えているという。

上記3つすべてをおさえながら活動することで、デザイナーとしてスタートアップ内で良いポジションがとれる、そう小西氏は語る。小西氏は創業メンバーとしてスタートアップに関わるデザイナーの意義は、

  • ユーザに届く価値を最大化すること
  • 価値を届けるために必要なすべてを美しく設計する

の2つだと考えているという。

小西氏「だれよりもユーザの声を聞き、そしてそのユーザに価値を届けること。それが僕の思うスタートアップにおけるデザイナーの存在意義でもあると思います。」

トークセッション

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小西氏のプレゼンテーションが終了し、BEENOS戦略ディレクターの山本氏、コンセントのUXアーキテクトの坂田一倫氏の3名によるトークセッションが行われた。

デザインを導く立場に

山本氏:「デザイナー」というと、Photoshopを使ったり、グラフィックデザインをする人というように認識されがちですよね。デザイナーからそういったツールを取り上げたときに何ができるのかが重要だと思うんです。その際に、ユーザヒアリングなど作っている以外のときに何ができるのかは重要ですよね。

小西氏:グラフィックにする部分の作業は極端な話、自分でなくてもできることだと思っています。なので、作ること以外の部分でどれだけ価値が発揮できるかが大事かなと。

坂田氏:これから先、デザイナーはデザインをするのではなく、デザインを導く立場になっていくと思うんです。デザインの本質的な部分、どうやってユーザの課題を解決して、価値を発揮するのか。それを行うためにユーザヒアリングなどが必要になってきます。

ユーザヒアリング

坂田氏:ユーザヒアリングといっても、質問は難しいじゃないですか。どうやって身につけていったんですか?

小西氏:最初は自分で考えて試していたんですけれど、あるとき読んだユーザヒアリングに関する本で、台本が載っていたので、それを参考にするようになりましたね。

坂田氏:スタートアップでユーザヒアリングをするときって、間違いの質問をしてしまう人が多いと思っているんです。スタートアップは新しいものを作ろうとしている人たちが多いので、世の中にニーズがあるかがわからない、だから「こんなものが在ったら使いたいですか?」と未来の質問をしてしまう。それじゃ答えは聞き出せない。

山本氏:なるほど。

坂田氏:いかにユーザに共感するかが大切なんですよね。小西さんは、ユーザヒアリングの頻度が高いことが素晴らしいと思います。「ユーザ視点に立つ」ことと「ユーザのために」は違うんです。ユーザのために、というのはユーザ視点ではない。モノづくりになると盲目になってしまう人が多い中で、ユーザの共感を確かめるために、プロダクトの勘所を見失わないようにするために、一度ではなくユーザに頻繁に尋ねることはとても重要です。

デザイナーの成長

小西氏:今年の4月に新しくデザイナーがジョインしました。ずっとデザインの仕事をしてきた人ということもあって、ディテールに凝ってしまい、そこに多くの時間を使ってしまうことが多かったんです。そんな彼にどうしてもらったらいいかな、と考えてユーザヒアリングに同行してもらいました。

山本氏:それは素晴らしいですね。デザイナーって、危機意識を持っている人ほどユーザヒアリングをしないといけないと考えていると思うんですけれど、組織がそれを許可しないことも多い。それを小西さんが許可しているのは良いですよね。

坂田氏:小西さんはビジュアルなど実際のデザインスキルに関してはどのように習得されたんですか?

小西氏:ビジュアル面のデザインスキルは、他のサイトのデザインを閲覧し、どこがいいのかを比較して勉強していました。海外のサイトデザインのシンプルさが本質につながっていると考えて、いろいろ研究しました。ただ見た目の美しさではなく、「なぜこのデザインになっているのか」という理由や背景を考えるようにしていましたね。

デザイナーはグランドデザインから関わるべき

山本氏:そもそもデザイナーはグランドデザインから関わるべきだと考えています。そもそもの企画などからですね。小西さんは企画などから関わっていたんですか?

小西氏:そうですね、企画から関わっていました。

山本氏:じゃあグランドデザインからデザイナーとしてコミットされていたと。たとえばなんですが、デザインオペレーターとなってしまっている人に対して、何かアドバイスはありますか?けっこう悩んでいる人は多いと思うんですよ。

小西氏:デザインしたものは世の中に出て行くと思うんですよ。その感想を実際にユーザの元に聞きに行くことで、自分がデザインしているものが世の中にどのような影響を与えているのかがわかりやすくなると思います。それを実感してみることじゃないでしょうか。

山本氏:サービスは人が使って初めて成立するものですし、使っているからの評価を気にしたほうがいいということなんですかね。

坂田氏:デザインにとって重要なのはユーザにどう使われて、どうサービスに貢献し、事業に貢献したかなんですよね。デザインはユーザに伝わらないといけない。伝えるためにはどうしたらいいか、伝えるための仕組みをどう作っていくのかの参考にするためにもユーザヒアリングは重要です。

スタートアップにおけるデザインの最適化

会場から:デザインって時間があればあるだけ最適化が可能なものだと思います。ですが、スタートアップは時間との勝負。時間が限られている中で、デザイナーは最適化とのバランスをどのようにとっていくべきなのでしょうか?

小西氏:私はデザインに迷ったらまず出してみて、そのプロダクトをユーザのところに行き、話を聞いてみますね。

坂田氏:最適化って2種類あると思います。理想の状態における最適化と、その時点で可能な最適化の2軸。「今日届けられる最適な状態はなんだろう?」と考えつつ、それだけだと指針がなくなってしまうので、その先の最適な状態を描きながらやっています。

山本氏:私はデザインもとても重要だと思っているのですが、スタートアップにとってはビジネスが最優先であるべきだと考えるようにしています。それは、スタートアップは人に使ってもらうためにサービスを作っている。使っている人というのはそのサービスに依存した人生を過ごしている可能性がある。であれば、サービスは存続しないといけない、そんな責任があると考えています。存続するためにはビジネスという視点は外すことができないものです。

小西氏:デザイナーがスタートアップに最初から関わるのであれば、ビジネス感覚はマストと言ってもいいですよね。デザイナーにビジネス感覚があるとスタートアップの中でもうまくコミュニケーションがとれると思います。

成長するデザイナー像

山本氏:私がずっとやっていることは読書をたくさんすること。週に4、5冊読んでいて、本のジャンルは多様です。本を読んで考えることで、考える力が高まると考えているからです。考える力を高めることは、ツールの使い方などでは身につかない、根本の力をつけることにつながっていくと思います。他のサービスと差別化するためには、ストーリーをちゃんと提供できているかが重要です。色々な書籍を読むことは色んなストーリーを把握することにもつながります。

小西氏:論理的に整合性があるかどうかがデザインをする上では重要だと思っています。論理的に正しいかどうかを考えていることはデザイナーにとっても大切ですね。

坂田氏:私が重要だと考えていることは3つです。まず一つ目は情報に敏感であるかどうか。人と話したり、いろんな情報に触れるといったデザインしない時間がとても大事です。2つ目は、絵を描くこと。自分が普段思っていること、感じたことをテキストではなく形にして表現することが大切です。描くということは自分とノートとの対話。描くことによって自分の考えを確認することにつながります。3つ目はロジカルシンキングです。「なぜ?」という質問を自分に投げかけ続け、仮説でも良いので考えを持っておくことはとても大切なことです。

スタートアップに関わるデザイナーの集まる場

「Design dot BEENOS vol1」では、非常に濃いトークセッションが繰り広げられた。スタートアップにメンバーとして関わるデザイナー、サービスの成長にコミットするデザイナーはあまり多くないと筆者は感じている。だが、少ないながらもこうして対話と交流の場を持つことはスタートアップが成長していく上で非常に重要なことではないだろうか。

Design dot BEENOS Vol.2は、7月31日 (木)に「ゼロからつくるUX」というテーマで開催される。次回ゲストは、Coineyのデザイナーである松本隆応氏。スタートアップにおいてデザイナーが初期段階からフルコミットし、デザインに力を入れることで何が起こるのか、ということについて語られる予定だ。

スタートアップに関わっている、もしくは関わろうと考えているデザイナーの方はぜひとも足を運んでみてほしい。

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Junya Mori

Junya Mori

モリジュンヤ。2012年に「Startup Dating」に参画し、『THE BRIDGE』では編集記者として日本のスタートアップシーンを中心に取材。スタートアップの変革を生み出す力、テクノロジーの可能性を伝えている。 BlogTwitterFacebookGoogle+

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