iQONユーザーの6割は「雑誌を読んでいない」ーー彼らが電通と組んでブランディング広告を始めるワケ

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credit: FontShop via FindCC

私が物心をついた頃、情報の王様といえば雑誌だった。ファッションはもちろん、靴とか時計とか、文具なんて同じような特集のムック本を何度も何度も買った覚えがある。情報の中心地、東京でセンスのいい編集者が選んだ情報を手に取り、モノを探して街中を歩く。時には通販で購入する。ごくごく普通の出来事だった。

4年前、iQONというサービスに出会った時、私は自然と「雑誌の再開発」という言葉が思い浮かんだ。

雑誌の再開発とは決して難しい電子書籍のフォーマットでも、一部コミュニティの趣味の話でもない。そのまま、あの頃体験した雑誌のワクワク感、友人と共通の話題、何よりも読んでいて時間を忘れるあの感覚をインターネットの世界で「再現」することなのだ。あのトータルな体験生を再現して初めて雑誌というフォーマットに肩を並べられる。

もちろん、まだその答えを見つけたサービスには出会ってない。ーーでも、もしかしたらiQONは少しずつその境地に近づいているのかもしれない。

ファッションアプリiQONを運営するVASILYは11月7日、電通と連携して次世代の広告メディア展開を開始すると発表した。本日開始となるキリンビバレッジのキャンペーンを皮切りに、オリンパスイメージング、コーセーなど、ブランディング広告の配信を順次開始する。

配信クリエイティブ(配信開始されたら後にイメージを掲載する)については、先日発表したネイティブ広告に使われるiQONオリジナルの広告ユニットのイメージで、同社代表取締役の金山裕樹氏によれば、今後、iQONの編集タイアップや動画などに順次拡大していくとしている。またこれに伴いiQONではユーザーにアンケートを実施、約2000人のユーザーの内、約6割が「雑誌を読んでいない」という回答結果を得たとも発表している。

スマートフォンでのブランディング広告、課題は物理的な「面」

一般的にブランディング広告はパッとみたイメージ、つまり物理的に大きな面が有効に働く場合が多い。具体的にいえば、雑誌の見開きや大型のビルボードなどだ。さらにそれらの媒体を連動させて訴求し続けることで、企業は私たち消費者にメッセージを植え付けてきた。一方でウェブは定量的にパフォーマンスを計測できることから、誘導や獲得に向いた媒体とも言われてきた。

iQONが開始したネイティブ広告クリエイティブ例

しかし当然、接触するメディアが変化すれば、この状況も変わってくる。特に2000年のモバイル出現以降その変化は激しく、ある調査では生活者の1日あたりの携帯・スマートフォンの接触時間は、テレビに次いで2番目に長くなっているという状況も出てきているし(※)、また別の調査では1週間にスマートフォンをいじってる回数は1500回、なんていう数字も出てきているほど、このメディアの中毒性は高い。

もし、この物理的に小さな画面しか持っていないスマートフォンで有効なブランド訴求ができれば、わざわざ屋外広告や雑誌、テレビとの連携など、大型の連動企画を大量に打たなくても、効率的なキャンペーンが組めるようになるかもしれない。前述の通り、iQONユーザーは雑誌からどんどん離れていってる層だ。この中でキャンペーンが完結すれば燃焼効率は極めて高くなる。なお、ブランディングの効果測定は閲覧やクリック、アンケート、バズ分析などで実施するという。

キーになるのがクリエイティブだ。物理的に小さな画面でチマチマしたイメージ訴求バナーが動いてもあまり感動は呼び起こせない。おそらくその答えは動画にあるのだと思うのだが、その尺、クリエイティブの構成、キャラクターなど、従来のTVCMと同等でいいのか、このメディアに最適化された「解」があるのか、大変興味深い。もしくは全く違う何かか。

雑誌の見開き広告は長らくブランド広告の主力選手として君臨してきた。

さて、彼らはそれをひっくり返すことができるのだろうか?


  1. ※調査:博報堂DYメディアパートナーズ/携帯・スマホの接触時間が、パソコンを上回る~メディア環境研究所「メディア定点調査2014」 ~より

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