VentureCon Japan 2015〜午前のセッションで語られた日本・台湾・香港・中国のスタートアップ投資概況

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4月23日、e27 は3回目となる年次カンファレンス「VentureCon」を開催した。出席できなかった人のために、以下に午前中のセッションの内容をまとめた。

Mistletoeの代表取締役社長である孫泰蔵氏は、オープニングの基調講演で、日本のエコシステムの最新状況と日本の将来に対する展望を話した。孫氏によれば、日本のVC投資は2009年の9.4億ドルから2015年には18.7億ドルへとほぼ倍増している。実質的にIPOの数も成長を見せ、2009年の19社から2015年の第4四半期には130社にたどりつく勢いだ。たとえば、ゲーム・アプリ分野の Aiming は、企業評価額で最高の2.93億ドルを誇る。

日本のエコシステムでは、多くのことが起きている。IoT 分野で大きなパラダイムシフトが起きているのに加え、日本の若くて優秀なエンジニアやデザイナーらは、トヨタ、ソニー、ホンダ、東芝などを離れ、スタートアップを創業している。今日、日本ではシードアクセラレータの活動も盛んであり、大学からもイノベーティブなテクノロジーが生まれていると孫氏は語った。

サイバーエージェント・ベンチャーズ CEO 田島聡一氏、グローバル・ブレイン CEO 百合本安彦氏、JAFCO 投資部のグループリーダー井坂省三氏を迎えての最初のパネルでは、日本で投資すること、アジアで投資すること、世界で投資することのメリットとデメリットについて議論がなされた。このセッションは、B Dash Ventures のシニア・インベストメントマネージャーである西田隆一氏がモデレータを務めた。

百合本氏は、投資という観点からは好ましくない過剰流動性が市場にあると語った。過剰流動性はイグジット戦略をしやすくする環境を作り出す一方、2011年に比べバリュエーションがかなり高くなり、十分な利益を確保しにくくなるという点で、投資家には難題となっている。

田島氏は、日本国内のベンチャー市場は、多くの投資家たちがいることで競争が激しいが、国境を越えやすくしてくれるインターネットの恩恵により、VC はグローバルな視点で日本や日本市場を見るようになったと語った。

リーマンショック、ドットコム・バブルやその崩壊も経験してきた百合本氏は、グローバル・ブレインの優先課題は、投資先のスタートアップを世界市場で戦うのを支援し、アジア、シリコンバレー、ヨーロッパなどの地域に参入できるようにすることだと語った。個人的には、百合本氏は、アメリカや東南アジアの企業を支援したいとも付け加えた。

話は、形を成し始めて間もないエコシステム香港のベンチャー環境に移った。Cherubic Ventures(心元資本)のパートナー Tina Cheng(成之璇)氏のモデレートにより、Fresco Capital Advisors の Allison Baum 氏は、香港がユニークなのは、その地理的な優位性にあると語った。

アジアにおける香港の価値は、中国、インド、東南アジアなど、他の地域にある巨大市場へのハブになっているということ。これらの市場は文化的にもビジネス面でも異なっているが、香港はすべての市場のニュアンスを理解することができるだろう。

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Baum によれば、蠢き始めたばかりの香港の投資コミュニティは、その多くがエンジェル投資家で構成されており、エコシステムの成熟に必要なアーリーステージを担う企業ファンドは多くない。香港のスタートアップ・シーンはまだ若く、動き始めて5年目になろうかというタイミングではあるが、それでもビジネスしやすい環境として評価は高い。資本金を払い込まなくても24時間以内に会社を設立できるのは、香港でスタートアップが得られる恩恵トップ10の一つであり、これは政府の干渉が少ないために実現できていることだ。世界規模で生き残るのに必要な競争を生み出す、適者生存の論理なのだと Baum は語った。

ビジネスで香港が好環境だと言われる他の理由として、中国に隣接し巨大市場へのゲートウェイだという点が挙げられる。SOS Ventures の William Bao Bean と、HAXLR8R のゼネラルパートナー Benjamin Joffe は、ファイヤーサイド・チャットで中国でこれまでに起きたことを説明した。

中国には、欧米メディアで報じられないベンチャーラウンドで多くの金が動いていると、Joffe は指摘した。Bean は、簡単に説明した。

昨年、アメリカの VC からは400億、しかし、中国ではエンジェルから200億だ(訳注:通貨単位不明)。その多くはレイターステージだったが、今ではアーリーステージでも非常に多くの動きが起きている。中国の投資家は2〜3年でリターンを得ようとする。彼らは10年は待てないね。

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スピードの速さは中国の強みの一つであり、Bean によれば、これは既に成功した起業家世代がエコシステムに戻ってきていることが背景にあるのだそうだ。

競争が激しくなり、第二世代の起業家たちが Alibaba(阿里巴巴)や Tencent(騰訊)に買収され始めた。彼らは利益を出すまで働き続けようとはしない。そうやって、今度は第三世代の起業家たちが生まれている。多くのエンジェルが生まれる前に、アーリーステージのスタートアップたちが花咲いた。しかし、現在では何万件ものエンジェル投資が行われるようになった。

中国では巨大ユニコーン(訳注:評価額10億ドル以上の企業)が生み出され、投資家たちは自分たちの投資戦略を変え始めたと、Bean は主張する。以前のシリーズAラウンドの投資家はシリーズAに乗り換え、シリーズCラウンドを手がけていた投資家は、極めて早いアーリーステージへと注力している。投資先企業のバリュエーションが、そのようになってきているからなのだそうだ。

(午前に行われたセッションの模様はこちらから)

【情報開示】THE BRIDGE は VentureCon Japan 2015 のメディアスポンサーとして協力関係にあります。

【via e27】 @E27sg

【原文】

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