ドイツのスタートアップトレンドとモノづくり事情【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2017.6.18

本稿は、「Monozukuri Hub Meetup」を主宰する Makers Boot Camp のCEO の牧野成将氏による寄稿である。

Makers Boot Camp は京都を拠点とするハードウェアに特化したスタートアップアクセラレータである。今年2月には、20億円規模のファンドを組成している。

本稿における写真は、いずれもカンファレンスのオーガナイザーである RIOT by PIRATE による撮影。


RIOTの会場のにて

今回ベルリンを訪れたのは「RIOT by PIRATE」にパネリストとして招待されたからです。RIOT とは英語で「暴動」と略されますが、参加者全員には海賊の眼帯が配られ、まさにスタートアップで世界を変えようという意気込みの込められたイベントでした。ちなみに主催者である PIRATE は、起業家やスタートアップ文化を盛り上げることを通じて人と人とを結びつけているドイツのテクノロジーコミュニティーです。

参加者には眼帯が!

RIOT は最近のドイツのトレンドを強く反映しており IoT やインダストリアル4.0を中心としたセッションで構成され、VR/AR やスマートシティに関連したスタートアップが数多く参加していました。またアウディがメインスポンサーとなっており、ドイツではアウディ等の製造業がスタートアップ支援に積極的な点が印象的でした。

スポンサーのアウディの展示。試乗もできます!

「Global efforts around hardware prototyping」というメインステージのセッションにフランスでのハードウェアスタートアップ支援として多数の実績をもつ Usine IO のCEO 兼 Co-Founder であるBenjamin Carlu 氏と共にパネルセッションに参加してきました。

モデレーターは香港/中国を中心にハードウェアスタートアップを支援する Brinc.io Co のFounderである Bay McLaughlin 氏でした。

左から:Bay McLaughlin 氏(香港 Brinc.io Co)、Benjamin Carlu 氏(パリ Usine IO)、牧野成将氏(京都 Makers Boot Camp)

まずはそれぞれがどのようにスタートアップのサポートをおこなっているかの紹介からパネルディスカッションは始まりました。

私は次のように日本の状況を紹介しました。

大会社による伝統的な日本のモノづくり文化はドイツととても似ています。中小企業によって支えられている大企業のモノづくりですが、1999年以降日本の経済状況低迷し成長率も下がっています。しかしながら、中小企業の下請け構造は今も変わっていません。Makers Boot Campは日本の中小企業ネットワークを活かし、彼らの優れた技術と知識で世界中のスタートアップの試作支援をおこなっています。

Benjamin Carlu 氏(パリ Usine IO)

Benjamin氏 は、パリでのスタートアップの状況を次のように説明してくださいました。

パリとベルリンには多くのデザイナー、エンジニア、新規事業への投資も得ることができるという点でよく似ています。Usine はパリで爆発的に増えているスタートアップをサポートしています。すべてのメイカーズをの要求を受け付けることができるわけではありませんが、今のムーブメントの一翼をになっています。

私達の活動を通して多くのスタートアップをサポートするために優れたエンジニアやデザイナーが集まりやすい場を提供し、彼らがマーケットへ到達できるチームづくりをお手伝いしています。Usine のエコシステムは投資が集まってくるパリを中心に広がっています。

Bay 氏からは、次のような発言がなされました。

投資済みの優れたデザインと技術はどこでも見ることができますが、日本や韓国においてはまだその道を探求している段階であるといえると思います。Makers Boot Campが優れている点はグローバルコミュニティーのにモノづくりの可能性を広げる活動をおこなっていることです。

どのようにエコシステムがグローバルコミュニティをサポートしていくのか見ていきましょう。ハードウェア企業にとって世界で戦うことは必要条件となっています。日本や中国と言ったアジアの国々と戦う必要があり、先端的なテクノロジーにおいて東洋から学ぶことも多いのです。

Brinc のプログラムでは、世界の工場である中国で量産化や試作のサポートを行っています。Makers Boot Camp は最低発注量の必要がない1,000〜10,000ほどの小ロット生産に特化しています。日本でのモノづくりは少数生産の「量産化試作」が強みとなっています。Usine IO は中国、パリ、ドイツ、ブルガリアなどのモノづくりハブで少量から大量のモノづくりを支援しています。

モノづくりにおいてどこで、誰とやるか、その人が信頼できる人物なのかといった試作のネットワークを見つけることが最も難しいパートであるといえます。現在では電話帳のようなところから信頼できるパートナーを見つけることは至難の業です。アクセラレーターのようなプレイヤーと働くことの価値は、ビジネスの検証、フィードバックを得ること、紹介などのサポートをスタートアップが得られることです。中国で大量生産を行う前にローカルの試作支援を受けることは非常に重要であることを理解してください。

アクセラレータープログラムへ参加することの意義と試作支援を受けることでよりビジネスを発展させる可能性について語り、パネルディスカッションは終了となりました。

人気のあった出展中のスタートアップ「SNAPCUBE

展示スペースには、世界中から集まった70社近いハードウェアスタートアップが展示を行い、屋上では投資家とのマッチング、屋外にはフードカーや卓球台など自然と交流しやすい環境が用意されており、スタートアップ、投資家、事業会社が上手く交流できるようになっていました。ドイツの伝統的技術力とスタートアップの新規事業を生み出す力の相乗効果で発展を続けていることを感じられる、素晴らしいイベントだったと思います。日本も共通項が多いドイツから学ぶべきことがまだまだあると感じた1日でした。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------