Think about community not ICO.【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2017.8.11

Omise CEO 長谷川潤氏

本稿は、タイを拠点とするフィンテック・スタートアップ Omise の CEO 長谷川潤氏によるものだ。Omise は6月から7月にかけ ICO(Initial Coin Offering=仮想通貨売却による資金調達)を実施し、2,500万ドルを調達している。本稿は長谷川氏が Medium を投稿したものを、本人了解のもと転載し、THE BRIDGE が再構成したものである。

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ここ最近 ICO 周りでの出来事・ニュースに関する話題には事欠かないというのが現状ですね。と言っている私自身も、ICO に関わっている張本人なわけですが、今回この ICO を通して多くのことを学んでいる最中でもあります。

最初に…

2014年 Echelon Thailand でのベータローンチ
Image credit: Omise

2013年にタイで  Omise を E-commerce platform として起業したわけですが、自身が E-commerce platform で経験した Payment の問題の大きさからピボットに至り、2014年の後半より Omise は、完全な Fintech 企業になりました。しかしご存知の通りまだ「Fintech」という言葉さえも存在していない時期でした。簡単にいうとタイミングがとても良い時期でした。

2015年より、あるきっかけから Blockchain の存在を知ることになり、最初に接したのは Bitcoin ではなく Ethereum でした。Ethereum の魅力に、一瞬で取り憑かれました。もちろん価格ではなく(その当時はまだ ~$1)。何よりも私を引きつけたのは、コミュニティとエコシステムです。

単なるインベストメントリターンと考えるのではなく、どうやってこのエコシステムを健全に動かして行くかを考えたアーキテクチャとスケーラビリティに魅力があるのです。その結果、私たちは Ethereum の DEVgrants に投資・寄付を行うことを決断しました。その当時の私たちにとっては高額な出資でしたが、その可能性を加速させるために貢献できるならばとの決断でした。

私たちの出資者も、その当時は「Jun またクレイジーになったか。」と思っていたことと思います。しかし、その結果私たちは初期の貢献者たちとの強いつながりを持ち、このエコシステムの一員となることができています。

一例としては、私たちが支援してきた、Ethereum ベースの Raiden Network です(Git link)。CEO の Heiko Hees 氏は、Ethereum が直面するであろう問題であるトランザクションスピード「TPS(Transaction per Second)」に初期からアプローチしている貴重な立場にある優秀な方です。

その後、さらに私たちは多くのつながりをつくって行くことになります。Ethereum のファウンダーたちや、このコミュニティ・クリプトソサイエティの中心となる人物たちです。

クリプトソサエティ

Image credit: timbrk / 123RF

皆さんは金融(Finance)という分野を単純に分解してみたことはあるでしょうか? 今の社会は、現金・クレジットカード・ポイントなどの本来の「価値」を表現する単位を用いて、実際の「価値」あるものと代替えしているわけです。そして、そうした「価値」を単位化したものを交換することができるようにもなったわけです。物々交換では価値を単位化するのが難しいので共通化しようとしたわけですね。

そこで、コミュニティが存在するようになり、「では1ドルは、このくらいのもの(チョコレートとか)の価値です。合意できますか?」といった形で「通貨」が存在するようになったわけですね。それが広がっていき、ソサエティー(社会)がその「価値」を認めてやりとりして行くようになったわけです。

しかし、それぞれの国の政治的な考え(集中管理型:centralized)により各国で別々の「通貨」が存在するようになりその管理を行う必要性が出てきました。結局のところ一時的に便利な「価値代替方法」は見つけましたが、世界を繋ぐこととは程遠い複雑な社会となりました。さらに現金という形は、クレジットカードなどの便利ものへと進化もしてきました。クレジットカードを分解して考えると、前もって本人が支払えるであろう金額を予測しておき、使った「価値」をまとめておくものです。

この「通貨」の上にできた便利なレイヤーにより世界はそうはいっても便利なところへと進化してきました。しかし、インターネットの発展と普及により、もっと便利な方法が求められてきました。そこで存在するようになったのがクリプトカレンシーなわけです。このクリプトカレンシーは、人類が直面してきた集中管理型が故の根本原因を改善する画期的なアーキテクチャーでした。Decentralized アーキテクチャーを備えており、本当の意味での分散型管理を推し進めたわけです。

しかし、この仕組みは人々の動向に左右をされるため注意を払う必要もあります。つまりコミュニティーを形成する人間がとても重要になってくるわけです。大半(マジョリティー)を占める人間が合意すれば「正しい」と決断する環境を作る必要があるわけです。この社会を見ればわかりますが、基本的に人類の大半が泥棒になることがないのと同じように、ほぼ確実にコミュニティーにとって「健全かつ・正しい」と思われる決断がなされます。

しかし、そのソサエティ・コミュニティのエコシステムを崩してしまう可能性があるのが ICO です。……と言いつつ、なぜ OmiseGO は ICO を行なっているのかと思われるかもしれません。ICO 自体は、次の世代の資金調達法であり画期的な方法だと思いますし、運用方法を間違えなければそれ自体には信じられないポテンシャルがあると思います。

ですから、OmiseGO も ICO を行なっているわけです。しかし、いくつかの点に注意を払う必要があります。

  1. 多数の参加者が参加できることを保証する。
  2. 不必要な金額を集めることをしない。
  3. 何を得るかではなく、何を与えるかが重要である認識
  4. 常にコミュニティーと密接な関係を保つ(ICO 後も重要です)
  5. 透明性

こうした要素は、私たちが運営しているSlack / Twitter / Reddit 等で活発に議論されてきて、私たちが至った結論です。実際に、上記の必要性から私たちは自分たちの ICO 自体もアップデートしてきました。Public ICO を Private ICO に切り替えたのもそれが理由です。

Image credit: lightboxx / 123RF

アドレスを公開して行えば、もちろん30秒で xx M USD という事も需要から考えれば可能です。しかし、その方法では「持っているものはさらに持つことになる」という理論から離れることはできません。そこで、私たちは真っ向からそうした考えと相対することを決断しました。もちろんこの考え自体も全ての人の同意を得られるわけではありませんし、それを望んでもいません。しかし、いかに健全にこのエコシステムを運用するかを考えた際に、こうした結論に至ったわけです。

最終的にICOの方法に関してもスタンダード化していくことになると思います。またきっと政府さえも関わっていくことになるでしょう。しかし、それまでの間にいかにこの ICO という手法がより健全に運用できる新たな方法なのかを証明することが、将来の私たちの社会に大きな影響をもたらすわけです。また、クリプトカレンシーの新たなソサエティーのためにも必ず必要なことです。

あえて名前を挙げることをしませんが、このソサエティの一員であるならば、Disrupt が起きるのは、Developed された状態にあるものの中であり Developing している最中ではないことを肝に銘じるべきだと思います。実際にエコシステム(生態系)を築くまでは、そこに共存し、底上げする必要があり、そこで対立することではありません。調和(ハーモニー)こそが重要なわけです。ICO で、1年でとんでもない金額を集めようとしたり、上限なくお金を集めたりするのは、エコシステムを腐敗させることであり、個人的にあまり感心しません。

(プロジェクト自体を否定しているわけではありません。プロジェクトはどのプロジェクトも興味深く、本当に素晴らしいと思います。)

Omise の考えるエコシステム


Omise のエンドゴールとして「Online payment for everyone」という目標を掲げています。過去2年半あまり多くのビジネス運営者と接してきて彼らのペインポイント、そしてそのインフラを提供している側のペインポイントをみてきました。そしてそうした問題を解決するために、全速力で走ってきました。そして、築いてきたのが本当の意味で私たちのゴールを達成するためには、自分たちでエコシステムを持っていく必要があるという点です。ある人たちは夢物語だと、また他のもっと資金力のある企業がそんなことは行なっていくと考えられるかもしれません。

しかし、いかに早くそれを実現するかが本当の意味で重要なのです。確かに、私たちだけでは実現は無理かもしれません。しかし上述したように皆(ソサエティ)を巻き込んで実現していけば、より早く、より確実にこのアイデアを現実にすることができます。Omise は、ここからブーストをかけて、本当の意味で全速力で進み出します。

Omise Payment は引き続き、価値を受け取ることのできるアクセプタンスをビジネス・個人に向けて提供していきます。OmiseGO は、その価値をやりとりすることのできるネットワークを構築していきます。そして、もっとエキサイティングな発表を今年の Q3 にできればと思っております。

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