イーサリアムクライアントのStatus、非中央集権型メッセージネットワーク「Matrix」開発のNew Vectorに500万米ドルを出資

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近年、メッセージングアプリケーション市場の発展が目覚ましい。WhatsApp、Facebook Messenger、WeChat、Telegram などの急成長からビジネス領域の Slack に至るまで、メッセージングアプリは他のどのタイプのアプリよりも使われている。

しかし、一つひとつのシステムはクローズドされており、セキュリティと暗号化のレベルはそれぞれ異なっている。

Ethereum ベースのモバイルアプリである Status について言えば、これは全面的に P2P テクノロジーを採用している。その Status が本日(1月29日)、安全な分散型コミュニケーションの新たなスタンダード Matrix.org を運営する New Vector への巨額の投資を発表した。

このニュースの何が重要なのか? それは、New Vector に500万米ドルの投資を行うことで、Status が分散型メッセージングプラットフォーム業界の2つの巨大ネットワークの間に実質上のブリッジを結ぼうとしているという点だ。

Status の共同設立者である Jarrad Hope 氏は次のように述べた。

Matrix は今回の資金を活用して2018年中にチームを大幅に拡張し、Matrix プロトコルの開発と Riot.im アプリの改善を継続する計画です。Matrix はすでに世界中で何百万ものユーザによって使用されており、この数は2018年には数千万に達するかもしれません。

Matrix は、一元化されたセントラルサーバに依拠してセキュリティ保護をプロバイダに丸投げするのではなく、各ユーザがどこにデータをホストするのかを自己決定できるようにし、コミュニケーションのプライバシーを確保する。それによってユーザはすべてを自分でコントロールできるようになり、アプリケーションをスイッチする際の不具合も回避できる。

Matrix では、ユーザは種類の異なるコミュニケーションアプリやサードパーティーのツールを一つのワークスペース内で統合し、複数のプロジェクトを共有できる。ここで使える外部ネットワークの例としては、Slack、IRC、Twitter、Gitter などがある。独自のサーバを擁する New Vector からホストサービスとインテグレーションを受け取ることで、ユーザは完全なエンドツーエンド暗号化で守られたワークスペースを確保することができる。

Status は2017年に SNT トークンを販売し、24時間で1億米ドル以上の資金調達を達成した。現在は、Ethereum ネットワーク上で動作する分散型アプリ(dApp)でユーザが対話できるオープンソースのメッセージングプラットフォームとモバイルブラウザを開発中だ。また Status は、同社のクライアントが Sirin Labs が開発した世界初のブロックチェーンスマートフォン Finney に2018年中にプレインストールされる予定と発表した。

理論的には、分散型のブロックチェーン(および非ブロックチェーン)技術は、一つの業界市場に一つの勝者しか存在し得ないその他の SaaS ソリューションとは異なっている。では、複数のオープンソースプロジェクト間のパートナーシップによってどのように変化していくのか?分散型台帳ソリューションの領域では、実際に業界内で複数のプラットフォームの共存が可能なのか?それともやはり、マーケットは一つの勝者のみという構造になるのだろうか?

Hope 氏はこう話す。

現在は、例えて言えば1,000の新技術の花が咲き乱れている状態です。「優位な」ソリューション以外が淘汰されるダーウィン的進化のプロセスがそこに存在するのは事実ですが、今現在は、研究開発を経た新製品が競合しあう以前の、技術開発の初期段階です。例えば、一般的な自転車を想像してみて下さい。過去には、自転車とは何かをまだ誰も知らない時代がありました。そこから人々が最適な自転車のデザインに行きつくまでの段階で、じつに様々な構造が試みられました。それがまさに、今日の分散型テクノロジーの領域で起こっていることです。その中で私たちは、技術・研究を育てるための様々なアプローチをサポートしたいと考えています。それこそがより良い技術設計の選択を促し、未来の優れた製品を生み出すことにつながるからです。

では、メッセージングとコミュニケーションの未来はどうなるのか?AR ヘッドセットや対話型 UI などの新たなインターフェイスが普及するにつれてどのような変化が起こるのだろうか?

Hope 氏はこう見ている。

近い将来、AR デバイスの巨大市場が確立するでしょう。それを前提とした、コンテキストベースのコンピューティングとメッセージングの世界に向かっていると言えます。しかし、私たちは現在きわめて重要な岐路に立っています。一般大衆とオープンソースコミュニティの両方にとっての、集中化のリスクがますます認識されるようになっています。Equifax をはじめ、2017年中に発生した数々のデータ流出事件を見るだけでもそのリスクは明らかです。

これは確かに重要なテーマだ。Status と Matrix はそこに明快なソリューションを提示しようとしている。

現在、世界の既存のコミュニケーションとデータストレージシステムの多くが集中化されていますが、そこに今、分散化ベースのオプションが出現し、集中化技術の欠点を埋めようとしています。私自身は、近い将来世界中のコミュニケーションが P2P プロトコルで動作するようになり、個人や企業のセキュリティが強化され、それによってすべてのコンピューティングインターフェイスにおいて表現の自由が確保され、プライバシーはより強固なものになると考えています。(Hope 氏)

ベータ版リリースに先立つ今回の Matrix への投資は、Status として初の主要な外部投資となる。これはまた、同社が掲げる2018年の「積極的拡大計画」の第一歩となるものだ。

Status は昨年、Slack から Riot.im にコミュニティを移動させた。同プラットフォームが仮想通貨コミュニティのサポートをより強化しているからだという。

今回の新たな資本提携によって、Matrix と Whisper(Ethereum 独自のリアルタイムコミュニケーションプロトコル)の間にブリッジができ、Status の分散型アプリ(dApp)を Riot.im 上のウィジェットとして統合できるようになると期待されている。また、SNT トークンを用いることで、Riot.im 上での仮想通貨決済も実現する見通しだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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