先日、遂にベトナム初のクラウドファンディングプラットフォームがローンチされた。同プラットフォームを運営するのは、DynabyteやThe Missing Cornerなど、ハノイを拠点にする様々なスタートアップからやってきた7人のチーム。
設立者は、現在シリコンバレーに拠点を置くアメリカ企業Emotiv社(スクリーン上のものを脳波でコントロールするヘッドギアを製作)の現CEO、Nam Do氏だ。ベトナム初のクラウドファンディングプラットフォームとなるIG9(英語の「Ignite(イグナイト)」を文字ったもの)は、ハノイとホーチミン市で運営される。
クラウドファンディングはアジアにとって新しいコンセプトではない。日本からインドネシアに至る地域には少なくとも9つのサービスがある。IG9チームはベトナムのクラウドファンディング業界で最前線に立つことを目指している。そこで、詳細を得るために同プラットフォームのCEO、Lew Yin How氏に話を聞いてみた。
ベトナムのように現金取引が主流の国で、クラウドファンディングのプロジェクトは実際にどのようにしてオンラインで資金を集めるのですか?
「IG9はベトナム初のクラウドファンディングプラットフォームなので、支払いオプションをできるだけ広げたいと思っています。ですから、支払いがサービスを制限する要因にはなりません。決済オプションには、通常のオンライン決済や銀行振込、代引きなどが含まれます。また、当社のオフィスと指定パートナーでの支払いも可能です。」
代引きサービスはベトナムの大手eコマース企業が支払いを受け取る方法なので、当然ながら、IG9にとっても代引きサービスが最も主流の決済オプションとなるだろう。
ベトナムのように、クラウドファンディングに馴染みのない初期段階にある市場で、どのようにして名前を広めるつもりですか?
「私たちの戦略は、すでに大きなコミュニティを持っているプロジェクトに取り組むことです。最初のプロジェクトの1つに、St. 319というダンスグループがあります。このグループは、Facebookの『いいね!』を何十万も集めており、Youtubeでもたくさん視聴されています。そういったプロジェクトが私たちのプラットフォームを活用する場合、 両サイドがプロジェクトを促進するのに既存のコミュニティを活用できるということに、私たちは互いに合意しています。」
今回のローンチで、IG9は4つのプロジェクトを掲載し、今後数週間でさらに20件のプロジェクトをローンチする計画だ。認知度のあるプロジェクトの成り行きが、ベトナムのクラウドファンディングモデルの試金石となり、現時点では存在しないユーザベースにとっては大きな学びの時となるだろう。
Kickstarterとはどう違うのですか?
「Kickstarterは主にクリエイティブなプロジェクトに力を入れています。ですが、私たちはこのモデルにはどんなことにでも使えると見ています。つまり、市場の反応によりけりです。IG9の方向性には2通りあります。
1つは、Kickstarterのように、クリエイティブなプロジェクトをメインにすること。もう1つは、スタートアップのためのクラウドファンディングに力を入れることです(が、市場が成長するには時間がかかります)。ですから、私たちが最初に力を入れるのはクリエイティブなプロジェクトになるでしょう。」
現在、IG9が受け入れているプロジェクトのカテゴリーは次の14種類:アート、マンガ、ダンス、デザイン、ファッション、映画&ビデオ、フード、ゲーム、音楽、写真、出版、テクノロジー、演劇、そしてコミュニティ。
Kickstarterのようにプロジェクトを監督していくのですか?
「IG9には、キャンペーン前、キャンペーン期間中、キャンペーン後の3つの段階があります。私たちのチームは、プロジェクトのクリエイターと密接に取り組み、サポーターになりうる人にとって大きな価値と非常に興味深いキャンペーンを作っていきます。
私たちの経験からいうと、プロジェクトのクリエイターのほとんどは資金集めをしたことがありません。ですから、私たちはKickstarterがする以上のことをして彼らを指導していきます。Kickstarterの対応は、ほとんどが審査をするだけで後は干渉しないというものです。
キャンペーン期間中には、サポーターとの交流や、アップデートの配信、マイルストーンの達成、もしくは新たな報酬があるかなどの通知を簡単にできるようにサポートします。キャンペーン後には、クリエイターがサポーターと連絡・交流しやすいようにし、サポーターのためにアップデートをしたり、報酬を提供するためのフォローを行ったりします。」
当然ながら、クラウドファンディングプラットフォームのいいところは、コンテンツを判断するトップダウン型の大手投資家やパブリッシャーに既存のやり方を取っ払って衝撃を与えることで、一般消費者が自ら市場に何を望んでいるかを決めることができる。
これは、トップダウンのコンテンツが多く、しかも検閲されているベトナムのようなところでは本当に革新的なサービスとなりうる。ベトナムでは、クリエイティブなプロジェクトやコンテンツのプロジェクトは文化省によって大きく規制されていて、わずかでも物議を醸すようなものは禁止されることが多い。
「私たちが今行っているアプローチは、まずは保守的にサービスをスタートさせ、規制範囲内に当てはまるプロジェクトを運営していくことです。この問題についてはサービスを進めながら解決していきます。」
こういった矛盾が同プラットフォームで実際にどう展開するのか、もしくはプロジェクトの掲載者がローンチ前に自己検閲するのかは今はわからない。 Lew Yin How氏が
「状況がどうであれ、私たちが取り組んでいるプロジェクトはいずれ実現するものだから」
というように、問題にならないかもしれない。
いずれにせよ、プロダクトやサービスの開発に消費者がより多く参加できるようになるのは歓迎だ。SGEのスタッフが、アジアのクラウドファンディングサイトの素晴らしいリストをこちらに紹介している。クラウドファンディングをしようと思っているのなら、キャンペーンを始動する前に、堅固な計画を立てることを忘れないでほしい。
【via Tech in Asia】 @TechinAsia
BRIDGE Members
BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。- 会員限定記事・毎月3本
- コミュニティDiscord招待