成長するアジアの医療ヘルスケア関連IT市場とスタートアップ

SHARE:

Some rights reserved by Alex E. Proimosアジア地域において、医療やヘルスケアに関連するIT市場が大きく成長しようとしている。

人口の老齢化などの課題を解決するためのソリューションとして注目される、コネクテッドヘルス(医療連携:患者情報の取得・共有を可能にするITネットワーク)[1]やテレメディシン・テレヘルス(遠隔医療:電気通信を使った医療サービス)といったものを考える際、ITは必要不可欠だからだ。

IT専門調査会社IDC Japan株式会社は、国内のヘルスケア関連IT支出額予測を発表した[2]。同調査によると、医療・介護保険者、医療・健康介護福祉事業者、医薬品、ライフサイエンス、医療機器を含む国内におけるヘルスケア関連のIT市場支出額規模は、2012年に9,973億円、2013年が1兆134億円(前年比成長率1.6%)で、2012年~2017年の年間平均成長率は1.8%と見られており、2017年には1兆913億円へ拡大すると予測されている。

IT以外の要因からも、医療関連市場はアジアで盛り上がりを見せている。アジアの新興国では、人口増加、高齢化による人口動態の変化により、病院インフラの拡充が急務。急激な経済成長により、所得の増加やライフスタイルの変化が起きていることで、高度医療の需要も増している。

WHO(世界保健機関)によると、日本を除く主なアジアの医療市場規模は、2010年の40兆円から、2020年には122兆円と3倍の規模になるという見通しだ。もちろん、病院や医療事業を取り巻く環境は日本とアジアでは異なる部分もある。医師によって受診費用の異なる「自由診療」が適用されたり、株式会社による病院経営も認められるなど、民間病院の営利企業としての活動が保証されている点などだ[3] 。

アジアでも、公的病院では社会保障で民間病院よりも安く治療を受けられる。そのかわり、待ち時間が非常に長かったり、提供される医療サービスの質が低かったりするケースもあるという。そういったこともあり、民間の病院が提供する質の高いサービスへのニーズが高まっている。

アジア主要国は、より高度で質の高い医療を求めて移動する富裕層や中間層の受け入れを行なっているという点も、チェックすべき点だ。マレーシアでは、メディカルツーリズム(居住国とは異なる国や地域を訪ねて、診断や治療などの医療サービスを受けること)にも力をいれている[4]。

こうした成長産業へと挑戦しているアジアの医療関連スタートアップを以下に紹介していく。

アジアの医療関連スタートアップ

docdoc-korea

DocDocは、患者が簡単に医者の予約を取ることができるプラットフォームを提供している。アジアの先進国には高いインターネット普及率がありながらも、ヘルスケアサービスを集約して即時予約を容易にするようなサービスがなかった。DocDocや、その競合サービスであるDoctorPageは、この部分を狙う。両社のプラットフォームの大規模なデータベースには1万人以上の医師が登録しているという。

両サービスの後発に当たるのが、健康医療系オンラインコミュニティのCompareClinicだ。この分野では激しい競争が始まっている。

【関連記事】

meetdoctor

上記で紹介したサービスはいずれもシンガポールを拠点とするものだ。一方、インドネシアでもいくつものサービスが登場している。TanyaDokのように医療関連の情報のポータルを目指すものであったり、医師と患者のコミュニケーションをリアルタイムに行うことができるアプリのDokter Gratis、オンラインでの相談、健康に関する記事の紹介を行うMeetDoctorなどが活動している。

【関連記事】

Liang-Yi

中国ではIT大手企業のQihoo 360(奇虎)が、医療と健康に関する情報を提供するLiang Yi(良医、中国語で「名医」という意味)と呼ばれるバーティカルな検索サービスをローンチしている。同サービスには、ヘルスケア関連の正規ウェブサイト114件と病院の公式ウェブサイト1716件から1億5000万のウェブページを掲載しているとという。

医療関連の中でも、歯医者に特化してサービスを提供しているフィリピンのMy Dentist Palのようなサービスや、高齢者の健康管理に特化したSilverlineのようなサービスも登場している。

【関連記事】

今回はアジアに焦点を絞って紹介させていただいた。他の地域にも目を向けると、数多くの可能性やスタートアップを発見することができる。「Rock Health」や「Healthbox」のような、ヘルスケア系に特化して支援を行なっているベンチャーキャピタルも登場してきている。

これからスタートアップにチャレンジしたいと考えている人は、チェックしておきたい領域ではないだろうか。


※1 参考資料:コネクテッドヘルスの拡大|アクセンチュア

※2 参考資料:国内ヘルスケアIT市場 2012年第4四半期のトレンドと2013年~2017年の予測

※3 参考資料:「BIZGate – 急成長するアジアの医療関連市場に参入

※4 参考資料:「マレーシアの医療と外国人誘致政策

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する