韓国版Kickstarterの「Ucanfunding」、日本での韓流スター・イベント開催支援に意欲

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アイデアをプロジェクトとしてプラットフォームに投稿し、多くの個人から資金調達し、そのアイデアを実現するクラウドファンディングは、韓国国内でも頻繁に目にするようになった。beSUCCESS では、韓国で急成長している Ucanfunding に面会し、同社の成長を通じて、クラウドファンディングについて話を聞くことができた。

韓国のクラウドファンディング・プラットフォームは、ほとんどが Kickstarter の影響を受けたものです。Ucanfunding も Kickstarter をベンチマークしてローンチしたと言われていますが、ローンチの段階で特に注力したのは、どのような点ですか。

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Ucanfunding
チョン・ジュナ(전준하)取締役

当初は社会問題、つまり、人々が関心を持ちそうな公益性の高いプロジェクトに焦点を合わせました。Kickstarter は、寄付型のプロジェクトは登録できないようになっています。しかし、韓国では、クラウドファンディングに対する認知度が低いので、皆が知っているプロジェクトでないと、支援を引き出せないと考えたのです。例えば、ソ・ギョンドク(서경덕)教授のアリラン・プロジェクトは、ソ教授が有名であることに加え、アリランを守ろうという愛国心に訴えることで、資金調達が成功しました。このような種類の自主企画プロジェクト通じて、クラウドファンディングへの関心を高め、Ucanfunding を知ってもらうことができました。現在は、Kickstarter が展開していたカテゴリである、文化や芸術分野にも展開を始めています。

Ucanfunding が企画するプロジェクトと、ユーザが企画するプロジェクトでは、割合はどのような感じでしょうか。

最初は Ucanfunding 企画プロジェクト10件に対して、ユーザ企画のプロジェクトが0〜1件でしたが、現在では7:3から6:4になりつつあります。

2011年に開始した韓国のクラウドファンディングは、まだよちよち歩きの段階にある。韓国国内のクラウドファンディング会社は、これまでに1,800億ウォンを集めているが、一方、アメリカの Kickstarter は2009年のローンチ以降約7億ドルを集めており、その差は歴然である。また、韓国ではクラウドファンディングに対する人々の認知度が低く、プロジェクトや資金をを集めるのは難しい。

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Kickstarter(左)と Ucanfunding(右)のプロジェクト・カテゴリの比較

Kickstarter には13件、Ucanfunding には11件のカテゴリが存在する。同じカテゴリのほか、Kickstarter には、fashion(5%)、food(5%)、theater(4%)のカテゴリが存在し、Ucanfunding には、life(7%)、supporting(17%)、sports(7%)が存在する。music & danceが占める割合は、Ucanfunding の方が13%多く、art & photography や、film & video は Kickstarter の方が23%多い。

design & tech は、Kickstarter 10%、Ucanfunding 11%とほぼ同じ割合だが、Kickstarter は、デザインプロジェクト280件、ハイテクプロジェクト129件を集めているのに対し、Ucanfunding は design & tech カテゴリとして、まとめて14件しか集められていない。特に tech のカテゴリには、プロジェクトの性格に大きな違いが見られる。

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tech カテゴリの比較、Kickstarter(左)、Ucanfunding(右)

Kickstarter と比べて、弱いカテゴリには何かテコ入れをされていますか。

当初 Kickstarter と比べ、足りない部分を補強する努力してきましたが、それは成功に結びついていません。しかし、必ず成功できると信じているので、今後も補強を続けて行きたいと思います。

Ucanfunding は自分達の強みを smart crowdfunding、すなわち、従来のプロジェクトの投稿を待っているだけのクラウドファンディング・プラットフォームから、自ら有望なプロジェクトを発掘し、登録されたプロジェクトの資金調達が成功するよう、1対1のコンサルティングを提供する、能動的なプラットフォームを目指すと説明している。

smart crowdfunding とは、具体的にどのようにコンサルティングを提供されるのですか。

出資者に対するメリットをどのように提供するか、目標調達金額をいくらに提供するか、などの決定プロセスをコンサルティングしています。これは我々のこれまでの経験に基づいたものです。

成功するプロジェクトの条件は何でしょうか。

何より、人々から「成功してほしい」という期待をを募る必要があります。例えば、インディーズバンドがアルバムの制作費をクラウドファンディングするなら、そのバンドのアルバムを待ち望むファンが必要です。

反対に、プロジェクトによって、クラウドファンディングが難しいケースはありましたか。

成功の可能性は高いものの、クラウドファンディングの条件に合わず、誘致できないプロジェクトが多くありました。プロジェクト・オーナーがクラウドファンディングをよく知らない場合もあり、我々も人手が足りず、すべての人々に接触し説明することは困難でした。例えば、最近、流行っているロックフェスティバルでは、企画会社や運営委員会はリスクをとって、出演歌手と交渉してギャラを前払いしています。しかし、その代わりに企画段階からクラウドファンディングすれば、初期コストのリスクを下げることができます。出演する歌手の顔ぶれを公開して資金調達すれば、顧客の立場から言えば、公平な方法だと見ることができます。さらに、楽屋を訪問できるオプションとか、先着10名にVIP席を提供するとか、多様なオプションを追加すれば、誰も不満を持たないフェスティバルが開催できるのではないでしょうか。このように、やってみたいプランやアイデアはあるものの実行できておらず、残念です。

以前、エクイティ型(投資型)クラウドファンディングへの進出に言及されていたと思います。

株式型クラウドファンディングに興味があります。Ucanfunding は、現在のエンジェル投資家やベンチャーキャピタルのような役割を担えると考えています。株式型クラウドファンディングを通じて、投資余力のある中産階級の資金が、ベンチャー業界にも流入するようにしたいと思っています。

最後の質問になりますが、海外進出の計画はありますか。

もちろん、あります。海外で韓流スターとのプロジェクトを念頭に置いています。特に、日本で成功する可能性が高いと思います。歌手 The One が資金を募ったとき、日本のファンが支払ったケースがあります。韓国国内では認知度が低いものの、日本で人気のある超新星 や One Kill などで資金を募れば、日本でクラウドファンディング・プラットフォームを構築する上で、よい結果を出すことができると思います。

クラウドファンディングで最も重要なのは、社会的な問題でもなければ、カテゴリの多さでもない。多くの人から「うまくいってほしい、成功してほしい」という思いを募ることができるかどうかだ。助けたいと思う心、応援したいと願う思いを集められれば、そのプロジェクトが(韓国の新体操選手である)ソン・ヨンジェ(손연재)の合宿募金であれ、スタートアップのサービス/製品であれ、資金調達が可能だ。Ucanfunding は、そのメリットに着目し、これまで着実に事業を進めて来た。今後、より多くの研究と企画で、韓国版 Kickstarter の領域を越えて、Ucanfunding スタイルのクラウドファンディングを作っていくことに期待したい。

著者注:Ucanfunding は2012年5月に Incujector という名前でサービスをスタートしたが、スポンサーシップのみならず、投資の概念を導入すべく、Ucanfunding に名称を変更した。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

【原文】

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