毎回「コイニー来ませんか?」と言われてましたーー隠れたキーマンを調べるお・コイニー井尾氏インタビュー

by OshibaTakanori OshibaTakanori on 2014.11.1

編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。

国内外で盛り上がるクレジットカード決済事業。外資のサービスが次々に日本進出をする中、国産サービスとして存在感を放っているコイニー。佐俣奈緒子社長の元先輩であり、現在はコイニーで執行役員事業開発担当として大活躍する井尾慎之介氏にインタビューしました。

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大柴:お噂はお聞きしていたのですが、お会いするのは初めてで、今日はよろしくお願いします。

井尾:よろしくお願いします!

大柴:元々奈緒子さんと同じ職場の先輩だったと伺ったのですが?

井尾:そうです。ペイパルの時ですね。

大柴:その辺も含めて、まずは井尾さんのキャリアを伺おうと思います。学生の頃はどんな感じでしたか?

井尾:高校まではテニスのプロを目指して頑張ってました。大学に入ってからは普通に。バイトばかりしていましたね。就職したくないなぁと思ってました。ただ4年になった頃に幼なじみに「このままでどうするんだ」と忠告されまして。「じゃあ就職活動してみようか」と。就職氷河期と呼ばれる時代だったのですが、富士通の内定をもらえました。

大柴:富士通!大企業じゃないですか。

井尾:そうなんです。親とかも納得してくれるだろうし、よかったです。

大柴:富士通ではどんなお仕事をされていたのですか?

井尾:プロダクトマーケティングを最初にやりました。そのあとコーポレートブランドを経営企画で。80年代まで法人向けの商品を主に扱っていたのですが、90年代になるとコンシューマ向けの商品も作り始めて。そこでようやく会社としてブランディングの重要性を認識しまして。全世界で同じCMを打ったり、いろいろとやりました。そのあとプロダクトマーケティングの部門に戻りました。

大柴:なるほど。富士通で3年半くらい働いて、その後マイクロソフトに転職します。なぜですか?

井尾:富士通は良い会社だったのですが、自分の仕事の量が外的要因によって左右されるんですよ。

大柴:と言いますと?

井尾:インテルとかマイクロソフトなどの外部企業の状況によってスケジュールが変更したりするんです。自社の事情以外の要因は自分ではどうにもできないので。

大柴:なるほど。

井尾:それに、マイクロソフトの人達と会っていく中で「良い意味ではじけた人達ばかりだな」って感じたんです。面白そうだなぁって。それと、よりマーケティングに強い会社に行ってみたかったんです。面白そうな人達、自分がやりたい業務に強い会社。その辺が決め手となってマイクロソフトに転職しました。

大柴:マイクロソフトってはじけまくってたんですね。

井尾:「Windows 2000」の発表の時に某ホテルの壁をぶち抜いたりして(笑)。

大柴:凄い(笑)。

井尾:そんな尖った人達と一緒にWindowsサーバーのマーケティングなどをやっていました。丸4年くらいですかね。

大柴:マイクロソフトを辞めた次は?

井尾:Solid Information Technologyというフィンランドのスタートアップに転職しました。データベースの会社で世界で70人程従業員がいました。その中で日本人は5名。マイクロソフトに比べて一気に小さな組織にいきました。

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大柴:富士通、マイクロソフトと大きな企業でやってきましたが、突然のスタートアップへの転職。どういう理由からでしょうか?

井尾:仰る通り、これまで大きな看板の下で仕事をしてきました。ふと看板が無くなったらどうなるんだろう?って思ったんです。自分の力、実力が知りたくなったというか。そんな想いでスタートアップに飛び込みました。まぁ失敗したら戻ればいいなくらいな気持ちもありました(笑)。

大柴:スタートアップはどうでしたか?

井尾:日本法人のマーケティング担当として働いていたのですが、転職して1年くらい経った頃に業績が悪くなり、日本法人5名中3名をレイオフしなくちゃいけなくなりました。結果、自分とエンジニアの2名が残ることになりました・・・。

大柴:おぉ・・・。

井尾:それが2007年のことなんですが、翌2008年に会社がIBMに買収されまして。このタイミングで自分は辞めようと思ったのですが、お世話になっていた方々からのアドバイスもあり、残って企業統合をスムーズにするためにがんばりました。落ち着くまで半年くらいやろうと思ってたのですが、結局1年半くらいいました。

大柴:IBMからペイパルに転職されます。

井尾:そうですね。資金決済法の施行が決まり、ペイパルが日本進出の準備を始めており、知り合いを通じて紹介されました。当時ペイパルのことはあまり知らなくて「テクノロジー企業なのかな」くらいの知識。事業開発とマーケティングの担当として入社したのですが、初日のミーティングで「あ、ここは金融の会社なんだな」と認識しました。想定外でした(笑)。

大柴:どんなとこで「金融の会社だな」って思ったんですか?

井尾:なんか聞いた事ない用語がミーティングや社内で飛び交ってまして。TPVだとかBPSだとか。

大柴:なんですか、それ?

井尾:1BPSは0.01です。決済の世界は小数点以下が多くて。円周率は314BPSです。

大柴:な、なるほどぉ。

井尾:過去の経験が活きるかなって思ってたのですが、年齢的に新たな領域にチャレンジできる最後のチャンスかなと思って。知らないことだらけなので、逆に吸収も早かったですね。でも1年しないで辞めたんです。

大柴:え、そうなんですか。あ、ところで奈緒子さんと一緒に仕事したのはこの頃ですか?

井尾:そうですね。奈緒子ちゃんは最初インターンでした。学生なのに超優秀だったんですよ。超優秀だったので辞めた後も「いつか一緒に仕事したいな」って思っていました。

大柴:ところで「奈緒子ちゃん」って呼ばれているんですね(笑)。

井尾:最初のインターンの頃にそう呼んでてて、コイニーに入った後に「社長って呼ぶ?佐俣さんって呼ぶ?」みたいに聞いたんですが、「奈緒子ちゃんでいいですよ」ということで、そのまま呼んでます(笑)。

大柴:ペイパルを辞めて、その後テスラに移られますね。

井尾:はい。ご存知の通り、ペイパルとテスラは創業者が同じでして、人の交流は多かったんです。ペイパルから転職していった人も何人かいて、その人に誘われました。新しいことをやってみたいなと思って転職しました。また業界が変わります(笑)。

大柴:ITから金融、そして電気自動車。

井尾:ペイパルに入った時は金融用語がわからなかったのですが、今度は電池の技術用語がわからない。交流とか直流とか。小学校の頃に習ったようなことから勉強し直しました。

大柴:しかし、その後、またペイパルに戻るんですね。

井尾:テスラのロードスターが売り切れて、モデルSの予約が開始されました。そのタイミングでペイパル本社の人から電話がありました。「新規事業をやらないか?」と。その新規事業がPayPal Hereでした。テスラの業務も一段落したし、その新規事業をやってみようとペイパルに戻りました。

大柴:なるほど。

井尾:早速事業計画を考えて「これは携帯キャリアとパートナーシップを組んでやるのがいいな」という結論に。最初にミーティングをしたのがソフトバンクで、そこから一気に合弁会社を設立することに決定しました。それからというもの、合併の準備やサービスの準備など、ペイパル社員なのに毎日ソフトバンクに通いました。そして無事にサービスもでき、合弁会社も設立できました。

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大柴:その後、コイニーですね。

井尾:そうです。でも事業としてPayPal Hereのマネージメントを辞めるつもりはなかったんですよね。自分が最初から立ち上げに関わったサービスだし、そういう経験もなかなかない。だから辞めるつもりはなかったんです。

大柴:ほほう。

井尾:そんな時に奈緒子ちゃんと食事する機会があって。「そろそろ飽きたんじゃない?コイニーに来ませんか?」って言うんですよ。いやいや、さすがにないわ、と(笑)。その後、半年くらいの間、5回くらい話したんです。食事しながらとか。それで毎回「コイニー来ませんか?」と言われたんです。でも奈緒子ちゃんは飄々としてるから、冗談なんだろうなって思ってたんです。そこまで押してくるわけでもないし。

大柴:なるほど(笑)。

井尾:去年の6月か7月くらいにまた晩ご飯を一緒に食べることになって。行くとアンリ君(佐俣アンリ氏。佐俣社長の夫であり投資家)も来ていて、こう言うんです。「彼女は本気なんです」って。それで自分も真剣に考え始めました。最初に話した通り、奈緒子ちゃんの優秀さは知ってるし、一緒に働きたいと思ってた。それに奈緒子ちゃんが一人で立ち上げてやっているのは凄く大変だというのがわかるし、こんな僕でも役に立てるのかなぁって。それで8月中旬くらいに「行く」と伝えました。

大柴:そして10月からコイニーに入社されるわけですね。現在、コイニーではどのような業務をされているのですか?

井尾:事業開発担当として、クレジットカード会社との連携などが主です。経歴的にマーケティングも長いので、組織的にはマーケティングや広報も管轄しています。リスク管理などもやっています。プロダクト以外では営業とバックオフィス以外はやっています。

大柴:その辺の業務って井尾さんが入られる前は奈緒子さんが担当されていたのですか?

井尾:そうなんです。もう僕が入った時は奈緒子ちゃんの業務がパンパンで。朝から夜までスケジュールがいっぱい入ってて。まずはそのタスクをどんどん引受けていくことをしていました。アクワイアラーの知識があるのが奈緒子ちゃんと僕くらいなので。金融業界出身の人がいなかったんですよね。

大柴:そうなんですか。

井尾:当時はあまり金融業界出身の人の採用は考えていなかったようです。その辺を一手に引受けたことによって、奈緒子ちゃんが「社長」として次のことを考える時間ができました。あとプロダクトに集中できるようになった。それは良かったことですね。

大柴:メディア対応や登壇などは奈緒子さんの担当ですかね。

井尾:そうですね。僕みたいなおじさんが出てもしょうがないし(笑)。

大柴:いやいや(笑)。では最後に井尾さんの今後の展望をお聞かせ頂ければと。

井尾:会社としてはスマホ決済No.1を目指します。ますは日本でNo.1を実現し、それから世界にいきたいです。コイニーのみんなは優秀だし、日本発のサービスで世界を穫りたい。外資での経験も長いので、よりそう思うのかも。

大柴:仕事以外では?

井尾:ワインバーやりたいですね。実はペイパルからテスラにいく頃に実際やっていたんですよ。ワガママなオーナーのお店にしたいですね(笑)。DJもやりたいですね。

大柴:仕事も趣味もちゃんとしてて凄いなぁ(笑)。いや、今日は長い時間ありがとうございました!

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