
東京を拠点とするスタートアップで、理系学生の人材データベース「LabBase(ラボベース)」を運営する POL(ポル)は24日、シードラウンドで5,000万円を調達することを明らかにした。このラウンドのリードインベスターは BEENEXT が務め、他にサイバーエージェント・ベンチャーズ、Draper Nexus、Beyond Next Ventures、エンジェル投資家が参加している。なお、バリュエーション、出資比率、エンジェル投資家の氏名については明らかにされていない。今回調達した資金を使って、POL ではシステム開発体制を強化するとしている。
POL は2016年9月、東京大学理科二類2年生の加茂倫明氏らが設立。加茂氏は以前、エス・エム・エス創業者の諸藤周平氏率いる、シンガポールの REAPRA グループ傘下の HealthBank で、オンラインダイエットサービス「BIVIE」の立ち上げに携わったシリアルアントレプレナーだ。POL にはこのほか、元ガリバーインターナショナル(現在の IDOM)専務取締役で、FiNC の社外取締役でもある吉田行宏氏が参画しており、コアメンバーは現在10名ほどで構成されている。
POL が取り組んでいるのは、理系学生の就職/採用市場における需給の不均衡是正だ。就職フェアや就職サイトといった一般的な採用市場に出てくる卒業予定の学生の多くは、8割が文系で残る2割が理系とされる。理系の学生が市場に出回らないのには、いくつかの理由が挙げられる。
- 学科や教授の推薦で、就職活動をする以前の段階で就職先が決まってしまっている。
- 研究に忙しく、就職活動に時間を割きにくい。研究室で、インターンが禁止されているケースもある。
- 就職活動に対する意識が高くない。(先輩も推薦で就職してるので、なんとかなるのでないか……との意識 など。
一方、理系学生が現在の就職環境に満足しているかというと、そんなことはない。彼らにとって、最大の問題は、自分の専門知識やスキルを磨いてみても、それらを活かせる職場環境がどこにあるかを容易に見つけることができない点だ。満足はいかないものの、適当なところで手を打って就職するか、または、期待する職場に就職できないために大学に残って研究を続け、結果的にポスドク問題を誘発しているのも事実だ。

このような問題を解決するために、LabBase では、学生が研究ポートフォリオ、論文、学会での発表履歴、実験内容など、アカデミアに寄せたプロフィールを掲載でき、企業とつながれる環境を提供している。昨年12月末から企業側からの事前登録を開始し、約100社がサインアップした。今年の本サービス開始後からは、そのうち20社が有料で利用を開始しているそうだ。
一方、学生ユーザはこれまでに550名ほどが集まっていて、そのうち約7割が東京大学や東北大学の理系学生、そこに、北海道大学・筑波大学・京都大学・大阪大学の学生を加えると全体の9割を占めるという。これといった広告やマーケティング活動も行なっていないのに、これだけコアなユーザを集められている背景には、全国に50名程度いるアンバサダーという学生ネットワークの存在がある。彼らは無報酬で、金銭的なインセンティブが無いにもかかわらず、理系学生の就職を幸せなものにしたいという POL のビジョンに共感し、ユーザ獲得やエンゲージメント強化に協力してくれているのだそうだ。
この分野は「研究室(ラボ)×テック」から「ラボテック」と呼ばれ、国内ではアカリクが競合として先行するが、市場全体におけるシェアはドミナントなものには至っていない。アメリカにでは、ResearchGate、figshare、The Center for Open Science、Science Exchange、Instrumentl、Quartzy などのラボテック・スタートアップがあり、POL は今後、彼らの動向をベンチマークしていくものと見られる。
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