世界のスタートアップ・エコシステムをモニターする Startup Genome は先ごろ、例年発表している「Global Startup Ecosystem Report」の2017年版を公開した。このレポートの中でも毎年関心を集めるのが、世界中の20のスタートアップ・エコシステムの情報をランキングしたコンポーネント・インデックスだ。このインデックスは、パフォーマンス、ファンディング (資金調達)、タレント(人材)、マーケットリーチ、スタートアップ・エクスペリエンスの5つの主要なコンポーネントの評価を数値化しランキングしたものだ。
このランキングでは言語障壁などの理由から日本や東京は調査対象には含まれていないが、上位10位までを見てみると、アメリカ以外から北京・上海と中国から二都市がランクイン。2015年のランキングと比べてみると、5位だったテルアビブが6位にランクダウン、ベルリンは9位から7位に追い上げた。
アジアについて見てみると、アーリーステージ・スタートアップにおける資金調達成功率が世界平均5.0%なのに対し、シンガポールでは4.6%と低い数字に落ちていることをレポートでは懸念しているが、依然として強力な政府支援や Google による Pie の買収やGrab の7.5億ドルに及ぶ資金調達が市場の勢いを牽引しているとする。また、シンガポールは世界の中でも、起業家の平均年齢が30.2歳と最も若い。
北京と上海は、VC がスタートアップへの投資に失敗しても、そのマイナスを回収しやすいだけでなく、スタートアップが最大3万ドル相当の補助金が受け取れることも、スタートアップの増加に貢献している。北京には世界で2番目に多くのユニコーンが集積していて、現在までに24社のユニコーンが北京から生まれている。上海は、世界のアーリーステージ投資の11%、世界におけるイグジットの10%を占めている。
バンガロールの成長も有望視されているが、エンジニアが職に就きにくいこと、経験が平均的であること、ビザの取得成功が低いことを、レポートでは問題点に上げている。バンガロールのエンジニアは世界で最も賃金が安いため、能力に見合った費用を払うべきという考えが、依然受け入れられにくい点があると指摘している。
「Global Startup Ecosystem 2017」は、ここから閲覧するか、ここからダウンロードできる。
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