
独立系 VC のエースタートは7日、宇宙スタートアップに特化したファンド「スペース・エースタート」を組成すると明らかにした。調達がクロージングしていないため最終的なファンド規模は確定していないが、50億円規模を目指すとしている。1ショットのチケットサイズは二桁億円規模になると見られ、結果として投資先は数社程度に絞られる見込み。ユニコーンになることがほぼ確実視される宇宙関連スタートアップへの出資に特化する。
昨年11月、宇宙構造物デブリ除去に特化したスタートアップ Astroscale はシリーズ D ラウンドで5,000万米ドルの調達を発表しているが、このラウンドへのエースタートの参加は、新ファンドからの出資たっだ模様だ(エースタートは1号ファンドから Astroscale のシリーズ C ラウンドにも出資している)。
エースタートは、インターネットカフェ運営のネクストジャパン、「銀のさら」や「ファインダイン(fineDine)」といったフードデリバリ最大手のライドオン・エクスプレスなどを、CFO として IPO に導いた渡邊一正氏が2015年に設立。VC 業界に身を置きながら事業家としてイグジットした経験を買われ、ハンズオンを期待して資金調達の引き受けを依頼されるケースが多いという。エースタートの1号ファンド、2号ファンドあわせて数十億円規模に成長しており、「ホテル番付」の空や調理ロボット開発のコネクテッドロボティクスなど、技術フォーカスのスタートアップに積極的に投資しているのが特徴と言えるだろう。

渡邊氏は、数あるバーティカルの中から特に宇宙に特化したファンドを立ち上げた理由として、宇宙スタートアップにしか存在しない条件があるのだという。日本の多くのスタートアップが海外展開前に国内市場での成長に特化するのと対照的に、宇宙スタートアップにとっては、創業の日から世界市場で競うことが宿命となる。確かに国内需要にのみ特化した宇宙ビジネスというのは聞いたことがないし、人材調達や打ち上げ場所の確保をはじめ、日本国外を意識しないで事業を進めることの方が難しい。
加えて、宇宙スタートアップは成功までに多額の投資を伴う。従来、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の号令のもと、日産、IHI(当時は石川島播磨重工業)、三菱重工といった大企業がしのぎを削っていた日本の宇宙産業だが、この分野にも果敢に成長するスタートアップが生まれ始めている。ロケット開発や衛星開発には多額の資金が必要となるが、この分野へのリスクマネーの供給はアメリカやヨーロッパと比べ決して多くない。
渡邊氏は新ファンドの組成や新ファンドからの出資を通じて、このバーティカルへのリスクマネーの呼び水になりたいようだ。多額の資金を必要とする宇宙スタートアップだからこそ、世界的に見て条件の厳しくない東証マザーズで早期に上場し、IPO を通じて市場から広く資金を調達するというアプローチは理にかなっていると言えるだろう。
スペース・エースタートの資金調達は2019年春にクローズ予定で、前出の Astroscale に加え、年内にも日本の有望宇宙スタートアップ数社への出資を実施するとみられる。
<参考文献>
- 宇宙が「ビジネス」になるとき、日本は世界とどう戦うか?(MIT Technology Review)
- 日本発 宇宙ビジネスまとめ、1.2兆円市場でベンチャーが続々と資金調達する理由(ビジネス + IT)
- エス・マッチング
- 宙畑
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