イスラム教徒が多数を占めるインドネシアで、コンドームやローション販売の足場を築くAsmaraKu

by Tech in Asia Tech in Asia on 2019.3.7

Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから


インドネシアについて思い浮かべてみたときに、もっとも縁遠いと思われるスタートアップのアイデアはコンドーム専門の e コマース企業だ。

しかし、友人のブライダルシャワーの小道具を購入するために、気まずい思いをしながら薬局を訪れてコンドームとローションを買うという経験をした後で、Grace Natalia 氏はまさにそういうスタートアップを始めた。

「ロマンティック e ストア」の AsmaraKu を Natalia 氏と共同設立した William Tunggaldjaja 氏はこう述べる。

弊社は購入に際してのエクスペリエンスが、オフラインよりもオンラインの方が優れている分野を見ています。

そして、インドネシア文化の中では特にそうですが、もっともそういう分野であるのはセクシャルウェルネス商品です。

AsmaraKu 共同創業者の Grace Natalia 氏(左)と、William Tunggaldjaja 氏(右)
Photo credit: AsmaraKu

AsmaraKu は2014年後半に設立され、2016年1月までに Alpha JWC Ventures と IMJ Investment Partners(当時)から非公開額のシード資金を調達した。また2018年には Singapore Press Holdings からプレシリーズ A で非公開額の調達も行った。

2人の共同創業者は同社が「ここ数ヶ月間」利益を上げているとし、キャッシュフローはニュートラルであるとしている。SimilarWeb の推定によれば、AsmaraKu のサイトには1ヶ月に50万人前後の訪問者がある。

信頼とプライバシーがカギ

AsmaraKu は Durex や Supreme といったブランドを携えてコンドームやローションの販売を始めた。これらのブランドは同プラットフォームにおいてもっとも人気の商品であり続けているが、同社はずっと商品の幅を広げてもいる。今や AsmaraKu は妊娠検査薬や排卵検査薬、性感染症の家庭用検査キット、ランジェリー、生理用品、そしてハネムーンのパック旅行といったものまで提供している。

人気があり比較的新しい他のカテゴリは、精力や妊活系のサプリだ。このカテゴリの顧客は年齢が高めの傾向があり、若い顧客は一般的にコンドームを求めるが、同社のチームは長期的な視野を持っている。

若いお客様が年を取られたら、弊社はサプリのカテゴリでそういったお客様を獲得します。

弊社は信頼できるブランドを築き上げようとしているのです。(Tunggaldjaja 氏)

また Joykit 系の商品もある。これは化粧品が詰まったコスメボックスと似たコンセプトの商品で、パーソナライズされたテーマに合わせた詰め合わせとなっている。たとえば、「ウェディングナイト」の詰め合わせにはバイブレーターとコンドームが入っており、生理前の女性をターゲットにしたものにはフェイスマスクと Lindt のチョコレートバーが入っている。

AsmaraKu の顧客は、理由は明白だが、プライバシーを重視している。同社はそのニーズに取り組むためのプロセスを向上させてきた(ウェブサイトでは「あなたが何を注文したのか知っているのは神のみです」と宣言している)。

包装にはブランド名は記載されておらず、製品は厳重な包みにしまい込まれている。銀行の取引も同社の正式名で記録されており、納品書も印刷されていないが、これは万が一顧客がうっかり落として他の人に見られたときのためであると Natalia 氏は言う。

公共の場で閲覧する人のために、AsmaraKu のウェブサイトには「プライバシーページ」ツールも組み込まれている。ユーザは1クリックですぐに、船の大きな画像のページに飛ばされるのだ。

AsmaraKu の Joykit バンドル品の一つ
Photo credit: AsmaraKu

2人の創業者は AsmaraKu のビジネスにとってもう1つの鍵となるのは信頼であるとしている。大部分が保守的であるインドネシア社会ではセックスは今でもタブーな話題である。特に都市部以外の女性の間ではそうであり、彼女たちの性教育と避妊の主な情報源は地元の助産師である。

このため、AsmaraKu の顧客は情報のために同プラットフォーム自体を頼りにしている。同社はブログを運営し自分たちで作成したコンテンツを公開しているが、そのうちのいくつかは医療の専門家による寄稿である。

そしてその情報そのものも非常に基本的な場合がある。AsmaraKu のウェブサイトで最も検索される語句は「コンドームの使い方」だ。カスタマーサービスのチャットでは、オーラルセックスで妊娠するのか、ローションで避妊できるのかといったような質問がされる。

弊社が販売しているものは非常に個人的なものですので、そういった質問で AsmaraKu を信頼していただければ、ブランドとしての AsmaraKu を本当に信頼していただけます。

一旦信頼してくださったお客様は弊社を離れることはありません。(Natalia 氏)

両氏によれば、e コマースの視点からはセクシャルウェルネスの商品にはビジネスとしての意味が大いにあるとのことだ。

マージンが大きく、返品がほとんどありません。誰もコンドームを返品したりしませんから。そして商品はほぼ年間を通じて売れます。(Natalia 氏)

製品のサイズが比較的小さいために配送や保管の費用も安価であり、リピート購入率も高い。

現時点ではインドネシアにおけるこういった商品の市場規模は不明瞭だが、中国では大きなビジネスになっており、この分野は2020年までに94億米ドルの収益に達すると見込まれている。主なプレイヤーは Alibaba(阿里巴巴)の Hema(盒馬)スーパーマーケットチェーンだ。

インドネシアでは顧客はセクシャルウェルネス製品を Lazada や Tokopedia のようなところ、ならびに伝統的な選択肢である実店舗の薬局やコンビニエンスストアで買うことができる。AsmaraKu が始めたときは似たようなeストアがいくつかあったが、それらは廃れてしまった。

だが AsmaraKu の顧客はインドネシアからばかりではない。シンガポール、中国、そして中東の顧客にも製品を販売している。後者からの需要は、同プラットフォームにハラルのカテゴリができた一因である。

障害は常にあるが、希望もある

アメリカの大学を卒業後、2人の創業者はキャリアの初期をアメリカで過ごした。Natalia 氏は会計事務所の Deloitte、そして Tunggaldjaja 氏はテック大手の Microsoft だ。彼らが最初に出会ったのは帰国してからのことだった。Natalia 氏は最初 Rocket Internet にベンチャー開発で採用され、その後 Lazada のマーケットプレイスのトップとなったが、Tunggaldjaja 氏はそこでバイスプレジデントを務めていた。

Lazada の後、Natalia 氏は Expedia へ移り、Tunggaldjaja 氏はレストランディスカバリープラットフォーム「Zomato」とソーシャルネットワークアプリ「Path」のカントリーマネージャーとなった。力を合わせる前に2人ともが別々に、後に AsmaraKu という形になるアイデアを思いついていた。

Tunggaldjaja氏 は主に技術とマーケティングの方面を担当し、インドネシアのあらゆるコンドーム工場と面会してきた Natalia 氏はマーチャンダイジングと運営を引き受けている。

AsmaraKuの最近の主な動きは花き産業への参入である。2018年、同社は Outerbloom という姉妹ブランドをローンチし、同ブランドのウェブサイトやジャカルタのショッピングモール Grand Indonesia にある実店舗を通じて、花束やフラワーアレンジメントを販売している。

2つのブランドのターゲットは連携していると Tunggaldjaja 氏は言う。なぜなら AsmaraKu の顧客は主に男性であり、フラワーアレンジメントを購入するのも大部分が同じく男性であるからだ。

これはインドネシアでもっと開発されるべきニッチ市場です。なぜならアメリカや中国のような市場では花きは10億米ドルのバーティカルな市場となっているのですから。

インドネシアではあまりプレイヤーは多くありません。主に小さなビジネスとインスタグラマーです。(Tunggaldjaja 氏)

2018年に同社は Outerbloom というフラワーショップのブランドをローンチした。

いずれにせよ、世界最大のイスラム教徒が多数を占める国でこういった製品を販売するには、障害はよくあることである。たとえば、同社のマーケティングのメッセージは結婚したカップルを明確にターゲットとしているが、これは現地の社会通念に則ったものである。

雇用もまた困難な部分である。

当初アパートで仕事をしていたときは、応募者の母親と実際に会い、アパートを拠点としているコンドーム会社で娘を働かせても大丈夫だと説得しなければなりませんでした。(Natalia 氏)

他のeコマース企業が容易に使えるマーケティングのチャンネルは問題外だった。たとえば銀行は販促の割引のためにAsmaraKuと提携しようとはせず、Google はあらゆるサーチエンジンマーケティング(SEM)のキーワードを拒絶した。

これらに対抗するために、独自のコンテンツへの投資のような、他のもっと費用効率の良いマーケティング戦略をチームは考え出した(Natalia氏によると、同社のトラフィックの80%は最初はブログから入ってくるという)。また Google  のシンガポールオフィスと緊密に協力し、AsmaraKu のウェブサイトをクローリングして正当なビジネスをしていることが確認された後は SEM 問題も解決された。

最終的には希望の道も見えてくる。Tunggaldjaja 氏はこう指摘する。

「認識の問題」は究極的には良いことです。タブーが強ければ強いほど、ユニークなセールスポイントも強くなっていくのですから。

総合的な市場規模は大きいですが、たとえば電化製品と同じくらい大きくなるということは絶対にありません。ですが、それが弊社にはちょうど良いサイズ、弊社がこのカテゴリを自分たちのものにできるサイズだと思います。

そして Natalia 氏はこう付け加えた。

もし誰かがAsmaraKuのようなことを始めたいと思ったら、弊社がくぐりぬけてきたようなことを経験しなければなりません。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------