〝人の縁〟から潜在的な転職候補者を企業につなぐ「Spready(スプレディ)」、8ヶ月間に及ぶ仮説検証を経てβ版を公開

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Spready
Image credit: Spready

ある調査によれば、社会人が一生の間に繰り返す平均転職回数は、日本の3.5回に対し、アメリカは15回。欧米文化においては、転職は常日頃から意識しているキャリアステップのための手段であり、日本人にとってのそれは、今置かれている仕事環境に不満を覚えた時や、一つの区切りがついた時に腰を据えて考える選択肢、という違いがある。

したがって、欧米であれば、近日中に転職を迎えるかかどうかはともかく、潜在的転職先とは常日頃から広く薄く連絡を持っておくというのが流儀だが、日本では最初の面接をしてから3ヶ月以内に転職が発生しなければ、その人が転職する可能性は無い、とするのが人事担当者や人材紹介会社が考える一般的なタイムスパンだ。

この状況を変えようとしているのが、インテリジェンス出身で、サイバーエージェント・ベンチャーズ(当時)で「HR Support Team」をリードしていた佐古雅亮氏だ。佐古氏によれば、これまで転職市場は、「転職を希望する個人」と「人材が欲しい企業」を「雇用」という関係で結んだだけのスキームが何十年も続いてきた。日本では転職希望者一人あたり、平均8.5社と面談する現状からも、このままでは欲しい人材が採用できない、転職市場におけるミスマッチは無くならないだろうと、彼は説明する。

転職市場はスーパーレッドオーシャン。市場は非常に大きいけれど、皆、底の部分(雇用を軸に、企業と転職希望者をつなぐこと)だけをやっている。労働人口が減少していく中、もっと労働力の流動性を高める努力が必要だ。

そこで雇用を前面に置かない形の、人同士の縁をベースにした「つなぐサービス」を考えた。雇用を前提としないのでカジュアルにつながることができ、もし可能性があって、双方が了解・希望すれば、転職につながるというアプローチだ。(佐古氏)

Spready の仕組み
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自分の友人を6人辿れば世界中の人と繋がれるというように、世界は意外と狭い。日本、ましてや、スタートアップやテクノロジーに近い業界であれば、1ホップか2ホップを経れば、ほとんどの人と繋がれてしまうのではないか。これを欧米式かつ個人側をトリガーにして機能しているのが LinkedIn なのだろうが、日本では欧米ほどはワークしていない。佐古氏の手掛ける Spready では、この欧米の LinkedIn で起きていそうな動きを企業側のトリガーにより実現させている。

Spready では、企業側が欲しいと思う人材像を、Spreader と呼ばれるご縁を紹介してくれる個人群に提示。Spreader は自分の友人や知人の中から該当者を選び、企業担当者とカジュアルに会ってみることを勧める。欧米の転職文化における「常日頃から広く薄く連絡を持っておく」状態を擬似的に作り出すわけだ。企業から Spreader に提示されるジョブデスクリプションや求めるスキルセットが、ピンポイントであればピンポイントであるワークするので、この点が既存の転職サービスとの明確な差別化に繋がっている。職業やスキルのロングテール時代に合ったサービスとも言えるだろう。

OB 訪問マッチングの「Matcher」やソーシャルヘッドハンティングの「SCOUTER」、リファラル採用の「MyRefer」や「Refcome」、就活支援の「就活メンターズ」などとも似ているが、Spready のポイントはあくまで雇用、つまり転職を初めから前提としないこと。仮説検証フェーズで Spreader は200名を超え、サービスは順調な滑り出しを見せているが、Spready にとって最も難しいのはユーザ企業にとってのカスタマーサクセス、つまり、転職や雇用に至る前の段階で、どれだけ企業に満足を感じてもらえるかだという。

Wantedly が「カジュアル面談」というコンセプトを打ち出してきたとき、「ああ、これは素晴らしい発明だ」と思った。カジュアル面談は多くの企業に受け入れられるようになったが、Spready がまさにやろうとしていることも、これまで同じようなコンセプトが無かっただけに、お客に理解してもらうことがチャレンジだ。(佐古氏)

Spready は本サービス開始を5月に予定しており、何人紹介できたかなどのコンバージョンベースではなく、何案件を同時に Spreader と進めることができるかによる、サブスクリプションベースでの料金モデルを採用する見通しだ。

Spready は2018年12月、GMO Venture Partners、UB Ventures、SMBC ベンチャーキャピタルから資金調達している。調達ラウンドと調達金額は不明だ。

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