「Teachme Biz」運営のスタディスト、シリーズCでVC5社から約8.3億円を調達——マニュアル作成ツールから〝SOP〟基盤への進化を目指す

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スタディスト代表取締役 鈴木悟史氏
Image credit: Studist

クラウド型マニュアル作成・共有ツール「Teachme Biz」を提供するスタディストは22日、シリーズ C ラウンドで約8.3億円を調達したことを発表した。このラウンドに参加したのは、日本ベンチャーキャピタル(NVCC)、Salesforce Ventures、三井住友海上キャピタル、三菱 UFJ キャピタル、DNX Ventures の5つのVC。

これは、同社にとって、2015年12月に実施したシリーズ A ラウンド(NVCC、三菱 UFJ キャピタルから総額1.5億円を調達)、2017年5月から8月にかけて実施したシリーズ B ラウンド(Salesforce Ventures、リクルート、NVCC、三菱 UFJ キャピタル、ちばぎんキャピタル、横浜キャピタル、三井住友海上キャピタルから総額3.3億円を調達)に続くもの。NVCC、Salesforce Ventures、三井住友海上キャピタル、三菱 UFJ キャピタルは既存投資家であり、前回ラウンドからのフォローオンでの出資。

同社の会社概要の履歴によれば、ここに示した以外に創業来1,000万円程度の調達を実施している可能性がある。同社の累積調達金額は、今回のラウンドを含め13億円超に達した。スタディストでは調達した資金を使って、マーケティングの強化、東南アジアでの拡販強化、各種 SaaS との API 連携、クラウド型 SOP(標準業務手順書)プラットフォームへの進化に向けた開発に注力するとしている。

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スタディストは2010年3月に創業。世の中の職業のうち、資格・経験や感覚的なノウハウに依存しない職業が約9割との調査結果をもとに、これらが何らかの形で「仕組み化」可能との判断から Teachme Biz の開発に着手、2012年末に正式ローンチした。現在2,400社が Teachme Biz を利用しており、製造業・小売業・飲食業など労働集約型や他拠点展開している企業がユーザの約半数を占めるという。最近では、事業承継や製造業における世代交代の波が影響し、地方銀行の紹介から商談に結びついているケースも多いという(スタディストは地銀26行と提携しており、地銀経由でもたらされた過去2,388商談のうち、403件が受注に結びついたそうだ)。

Teachme Biz は、SaaS に典型的なリカーリングのビジネスモデルを採用、Teachme Biz の売上(ライセンス売上)がスタディスト全体の約9割を占め、その成長も対前年比150%と順調に推移している。キャッシュフローは十分あるが、前受収益のため(Teachme Biz では月額費用×12ヶ月分を前払する)、スタディストは会計上、役務提供を終了した部分の金額についてしか売上計上できない。期の途中で自己資本がマイナスになることを避けるのも、今回の増資の理由の一つにあったそうだ。

また、今回発表された Teachme Biz の SOP プラットフォーム化には、企業が ISO や HACCP など認証への準拠を求められる社会変化も影響している。マニュアルと異なり、SOP では作業手順が構造化しているため汎用性・応用性が高くなる。既に現行の Teachme Biz においても、ユーザは構造化された状態でテキストだけでなく映像を使った説明を配置できることから、外国人労働者が増えつつある飲食業、複数拠点で統一されたオペレーションを随時追加する必要のある小売業などで重宝されている。

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4月にローンチした「Teachme Biz for SFA」は、個社毎の運用に合わせたヘルプページを作成し、Salesforce の各画面に直接表示できるソリューションだ。これは Teachme 側で API を開発し、それを Salesforce と連携することで実現させている。この SFA のケースと同様に、スタディストでは SaaS 型サービスプロバイダにとって、チャーンレートの低減を狙ったヘルプ環境の充実が肝要になると考えており、AI、RPA、ERP、IoT など各種プラットフォームに向けた API 開発や開放、連携サービスを提供していく考えだ。Teachme に作成されたマニュアルをもとに、チャットボットが社内問合せや一般顧客に応対するケースも出てくるだろう。

スタディストは既にタイに進出しており、バンコクを拠点として、執行役員でグローバル事業部部長の豆田裕亮氏のほか、複数名のタイ人社員が Teachme Biz の拡販に従事している。既に20社前後がタイで Teachme Biz を採用しているが、日系現地企業の RPA 準備(RPA 化対象のタスクやワークフロー整理)に広く利用されているそうだ。今後はタイ市場向けのプロダクトマーケットフィット(PMF)を進めつつ飲食業・小売業向けの拡販を図り、日系企業向けの RPA ツールとのパッケージ販売などとあわせ、2020年2月末までにタイ企業ユーザ120社の獲得を目指す。また、日経の報道によると、ASEAN 市場ではタイに続く2つ目の拠点として、マレーシアにも進出することが明らかになっている(22日午前8時更新:スタディストの説明によれば、マレーシアに拠点を設立する事実はなく、現時点ではアライアンスを検討中とのこと)。

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