
Image credit: ProfinanSS
スタートアップの立ち上げや企業の新規事業開発を財務観点から支援するプロフィナンスは18日、事業数値計画を作成し経営ノウハウを習得できる SaaS「ProfinanSS(プロフィナンス)」を正式ローンチした。同社では、ProfinanSS を通じて起業家や事業家による経営を高度化することを目指し、日本のイノベーションの活性化に寄与したいとしている。
プロフィナンスはインスパイアで投資先支援、デロイトトーマツコンサルティングで国内外の M&A などに携わってきた経営コンサルタントの木村義弘氏により2018年2月に設立。企業における経理や会計は、最もシンプルな形としては Excel ファイルなどの表計算ソフトウェアを使って作成・共有されることが多いが、この仕組みの難点はファイルの管理が属人化してしまい他の社員が容易にはメンテナンスできない点だ。
大企業などで事業部やグループ会社が多かったりすると、数字をまとめる側もまとめられる側も工数は大変大きなものとなる。PL 上で営業利益は黒字化できていても、株主が期待するであろう期待収益(一般論として、上場企業で10%、スタートアップで20%)が出せているかどうか、あるいは、そのために次なる一手を打つことに思考をフォーカスしづらくなってしまう。

ProfinanSS では、web 上に表示された必要項目に値を入力していくだけで、管理会計の視点に基づいた売上や利益の管理、予実管理などが可能となる。この種のツールは世の中にいくつか紹介されており、確かにスタートアップが投資家から資金調達を行う上でも有用な情報が整理されているため、「資金調達を効率化できるツール」として見られがちだが、本来は経営判断のためのツールであるべきと木村氏は主張する。
ProfinanSS を使えば、資金が足りているのか足りていないのか、そして、その資金はエクイティで調達すべきなのか、デットで調達すべきなのか、などを判断する材料になる。投資家に相談するかどうかも、本来ならそのあとに判断すべき。(木村氏)
これに関連して、木村氏は最近、11月に東京で開催された「ALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2019」で最初に登壇したトレジャーデータの芳川裕誠氏の一言に賛意を覚えたという。
SaaS は、ソフトウェアのデリバリモデルとして非常に面白い。突き詰めれば突き詰めるほど、経営がアートからサイエンスになっていく。(芳川氏の発言は、スマートキャンプの「ボクシルマガジン」から引用)

会計にあたって SaaS を活用することで実現できるのは、Excel で作成してきた数表が単に web 化されるということではない。数字を見るのが得意な人が経験に基づいて経営していたのがこれまでのアートな経営だとしたら、SaaS の導入によって経営者は自分の持つアートな側面をよりビジネスのクリエイティビティに向けることが可能になるかもしれない。
計算の背景にある数式とかに囚われることなく、経営者がむしろ、利益を改善したり最大化したりする上で、どうやってお客を獲得すべきか、どのような手段があるかなどを考えるのに時間を費やせられるようになる。そんな気づきを与えられるプラットフォームにしたい。(木村氏)
VC や CVC の知見を取り入れながら機能をブラッシュアップ

Image credit: ProfinanSS
ProfinanSS は主にベトナムで開発されている。数字という世界共通言語を扱ったサービスであることもあり、当初は英語版でのローンチも視野に入れていたが、当面は国内のスタートアップ経営者や CFO、大企業の新規事業部門などを対象にすることをかんがみ、日本語版で運用する。
ここ数ヶ月はクローズドβ版として運用され、10社程度の VC や CVC から知見をもらって機能に反映してきた。将来は、NDA を交わした関係にある投資家が、潜在投資先や既存投資先の企業の情報にコメントを入れられるような機能も追加検討している。オープンソースの思想にならって、「情報をオープンにして、みんなで前に行きたい。みんなからフィードバックをもらうため、当面はフリー(無料)でいきたい。(木村氏)」としている。
木村氏は財務を見る点においてプロフェッショナルな存在だが、そんな木村氏でも事業計画を作る上で、数字を組み上げていく上での苦労は絶えなかったという。予実管理を始め、自分が一番苦労してきたところを誰かにやらせたくない、そんな思いが ProfinanSS を作る原動力となったそうだ。
ProfinanSS と全く性格や機能を同じくするサービスは確認できていないが、部分的には、スタートアップ資金調達管理 SaaS の「smartround」、サービス事業者向けの継続利用促進 SaaS の「KINCHAKU」、予算管理効率化クラウドの「DIGGLE」などが、それぞれ似たような側面を持つ。
プロフィナンスは現在のところブートストラップモードで運営されているが、将来的には ProfinanSS に VC をはじめとする投資家の視点を積極的に取り込むことを意図して、外部からの資金調達も検討したいとしている。
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