新型コロナ“重篤化”をAIで発見せよ、中国・温州中央病院、ニューヨーク州立大学が共同で開発

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写真はイメージ:Photo by Markus Spiske on Pexels.com

ピックアップ:Experimental AI tool predicts which COVID-19 patients develop respiratory disease

ニュースサマリ:温州中央病院、ニューヨーク州立大学らは3月30日、新型コロナウィルスに感染した患者の中から、誰が重度の肺疾患を発症するのかを予測できるAIツールを開発したと報告している

今回のAIが特定できるのは「急性呼吸促迫症候群(ARDS)」。中国の温州にある2つの病院にいた53人の新型コロナ患者のデータを元にして、最大80%の精度でARDSを予測することに成功した。

使用された機械学習モデルは決定木、ランダムフォレスト、およびサポートベクターマシン。性別、年齢、肺炎患者転帰(PORT)スコアなどのこれまで有用とされた指標では予測は機能せず、最も予測に機能したのはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とヘモグロビンの増加、および筋肉痛であった。これらの相関関係は今後医師が考慮すべき臨床上の観点であることを示した。

研究に関わったニューヨーク州立大学のバーリ教授は、医師も新型コロナを現場で学習しながら対応している今の状況において、発表したAIツールは医師をサポートするだけでなく、病院が切迫した場合にどの患者に集中すべきかを意思決定するのに役立つと主張する。

研究チームは現在、ニューヨークの患者データを使用してさらに改良することを検討しており、4月中に展開することを目標としてる。

話題のポイント:まず、国境を超えてデータ共有の契約を取り付けた人物を賞賛したいです。研究のためとはいえ、米中間で患者データの共有が早急に行われ、4月から結果を医療現場へ反映することを目標としているそのスピード感に驚かされました。

連日のように食品医薬品局(FDA)が規則を柔軟に変更して、新型コロナの治療を可能な限り迅速に市場に投入することを表明している点も考慮すると、不可能なスケジュールとは言えません。

ただし、今回使用されたデータには新型コロナ感染者53人のうちARDSを発症したのは5人しか含まれていません。精度以前の課題として、医療現場に導入するにはデータ数を増やすのは絶対条件となりますが、この論文で協力者を集いやすくなったことは間違いありません。未開拓地を高速で駆け抜ける正攻法を見た気がします。

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写真はイメージ:Photo by Pixabay from Pexels

さて、ここからは新型コロナを発端としたARDSの早期発見のメリットを見てみます。

医療現場視点から見たメリットは、上記の通りトリアージです。誰にどんな治療が必要になるのかを把握できなければリソースの最適化は叶いません。医師は最大人数の救助に尽力するのをサポートします。さらに患者視点から見たメリットもあります。それは治療施設に自らARDS発症前に移動できることです。

ARDSの治療には気管チューブやマスクを使った人工呼吸器による管理、さらに重篤な低酸素状態に陥った場合は人工肺によるECMO治療を必要とします。新型コロナを受けて急遽実施された(一社)日本呼吸療法医学会・(公社)日本臨床工学技士会による人工呼吸器および ECMO装置の稼働台数調査によると、日本全国には人工呼吸器が約3万台、ECMO装置が1,412台しかないことが分かっています。

機材が揃っていても、運用には装置に熟練した医師による数週間の管理が必要となるため全てを稼働できるわけではありません。そのためARDS発症後に病院を移動しなければいけないケースも生まれるでしょう。

しかし、通常の人工呼吸で酸素化が維持できない患者を他院へ搬送するのは至難の業です。新型コロナによる肺炎の重症化は、突発的には起きず、感染から5~8日後に発展することが分かっているため、この一週間を利用して適切な医療施設に移動できることを可能にする点は今回のAIツールのメリットと言えるでしょう。

<参考文献>