ニュースサマリー:ホテルブランドの開発・運営を手がけるNOT A HOTELは2月28日、第三者割当増資の実施を公表した。これは昨年10月に公表されたシリーズAラウンドのセカンドクローズで、前回のファーストクローズの調達と合わせて約28億5,000万円を集めた。前回の発表時はここに融資を組み合わせて総額で30億円を集めるとしていた。シードラウンドから調達した総額は50億円になる。
シリーズAラウンドで増資を引き受けたのは合計16社と名称非公開の個人投資家で、増資した資金はソフトウェア開発部門や建築部門を中心とした採用拡大に投じられる。
出資した各社の顔ぶれは次のとおり。ANRI、オープンハウスグループ、SMBCベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタル、KDDI Open Innovation Fund(3号)GMO VenturePartners、マーキュリアインベストメント、オリエンタルランド・イノベーションズグローブアドバイザーズベンチャーズ LLP、And Do ホールディングス、サンケイビル、静岡キャピタル、ちばぎんキャピタル、みずほキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、STAR CAPITA INVESTMENTS LIMITEDの16社。これに個人投資家が加わる。
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話題のポイント:昨年10月に実施した増資のセカンドクローズで、これでシリーズAラウンドは予定通り完了した模様です。濱渦伸次さんに近況を伺ったところ「創業4期目・100億円販売」に向けての方策がみえてきました。ポイントは「金融スキーム」「NFT」「ChatGPT」です。それぞれ紐解いてみます。
NOT A HOTELローンは実現するのか?

今回の増資で目を引くのが金融機関の参加です。SMBCベンチャーキャピタルやみずほキャピタルなどのメガバンク系は他のスタートアップ投資でもおなじみですが、静岡キャピタル、ちばぎんキャピタル、広島ベンチャーキャピタル(広島銀行系)など地銀系が入ってるんですね。KDDIについてもじぶん銀行があります。
NOT A HOTELのイメージはどうしても「富裕層・投資物件」になりがちですが、彼らが目指す先は日本人の「住む」という価値観や行動の変革です。旅するように住む、流動性を前提とした住環境をどのように提供するかというビジョンがあり、そのための仕組みを構築しているのがNOT A HOTELなのです。
だからこその分割販売であり、NFT会員証のような「スキマを埋める」仕組みなんです。この辺りは過去のインタビュー記事などを参照いただければ幸いです。さておき、一般的な個人・家庭が家を購入するためには住宅ローンが当然のように必要なのですが、NOT A HOTELは新興スタートアップのためこのローン商品を作るのが難しい。金融機関的な信用がなかったんですね。
通常、金融機関が物件を担保にローン商品を開発して購入者に提供するわけですが、金融機関としては物件もまだないこれからのスタートアップに対して目隠しで与信してくれるほど甘くはありません。つまり、お金を借りるのは完全に「個人の与信」に頼らざるを得ない状況で、かなりの富裕層に限定されてしまいます(販売開始2カ月で40億円ほぼ完売、NOT A HOTELが切り開く「カートで別荘買う時代」と次の課題)。
しかし、いい意味で予想を裏切ったのが2021年9月から開始した60億円の販売実績です。宮崎、那須と物件はあっという間にほぼ完売し、そのスキマを埋めるNFT会員証、ホテルとしての利用についても2024年いっぱいまで空きがない状態になっています。「100%稼動するホテル」を濱渦さんたちは実現したのです。
地銀やじぶん銀行との具体的な取り組みについて濱渦さんはノーコメントでしたが、これまでの経緯からみてもこのセンでの取り組みになるんじゃないかなと踏んでいます。
次につづく:価格が上がったNFT会員証のワケ
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