日本は将来的にWeb3の最前線に立てるーーIPFSやFilecoinなど手がける「Protocol Labs」/ETHGlobal・Gathering in Tokyoインタビュー #1

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Web3インキュベーター「Tané」が主催するWeb3 Gathering #1 in Tokyo/会場となったアクセンチュアのスペースにビルダーたちが集まった

4月14日から16日まで東京・虎ノ門ヒルズで開催されるETHGlobal Tokyoにあわせ、世界各国からビルダー・起業家が続々と集まっているようです。ETHGlobal Tokyoはイーサリアム開発者と起業家のためのグローバル・エコシステム「ETHGlobal」が主催する、3日間のハッカソンイベント。実践的なハッカソンを中心としたイベントで、イーサリアムコミュニティに参加するキーパーソンたちによるワークショップやパネルディスカッション、ハッキングセッションが行われます。

各国から主要なWeb3・クリプト関連のビルダーや起業家が集まることからサイドイベントも多く開催されており、本誌BRIDGEもそのうちのひとつ、Web3インキュベーター「Tané」が主催するWeb3 Gathering #1 in Tokyoにメディアパートナーとして参加してきました。アクセンチュアが運営する東京・麻布十番にある会場には事前登録で160名の起業家・ビルダーたちが集い、国際色豊かなコミュニケーションの場となったようです。

本稿ではいくつかのプロジェクトに話を聞くことができたので各記事にて紹介いたします。

Filecoinなど手がける「Protocol Labs」

Protocol Labsは2014年にJuan Benet氏によって設立されたオープンソースの研究・開発を手がけるラボで、テクノロジーによって人間の存在を良くすることを目的としています。プロジェクトにはIPFSやFilecoin、libp2pなどがあり、コンピューティングに関連するさまざまな分野の研究開発に資金を提供する助成金プログラムも運営しています。会場にはProtocol LabsのStrategic Partnerships & Programsを担当するJames Tunningley氏が来場していました(太字はBRIDGEの池田将によるインタビュー。回答はすべてJames氏)。

Protocol LabsのStrategic Partnerships & Programsを担当するJames Tunningley氏

ーーProtocol Labsの仕事について教えてください

James:Protocol Labsは、デジタル人権とオンライン権利を確立し、すべての人が安全で安心できるような技術開発を目指しています。ARやVR、ブレイン・コンピューター・インターフェースなどのオープンかつパーミッションのない技術も開発しています。インターネットのアップグレードとデジタル人権の促進のために、IPFS(Interplanetary File System)やFilecoinなどのプロトコルやツール、サービスを開発・構築しています。

また、Protocol Labsは、次世代のスタートアップを支援することにも注力しており、特にWeb3スタートアップ向けのエコシステムを構築しているFoundersというチームがあります。これまでに300以上のスタートアップをサポートし、2億ドル以上の資金調達を支援してきました。アクセラレータプログラムや創業者サービスを提供し、専用ファンドやメンタープログラムなどを通じて、特定のニーズを持つスタートアップのサポートも行っています。

また、Protocol Labsは独自の投資プログラム「Phil VC」を実施しており、最近では第2回となるPhil VCが開催されました。このプログラムでは、プレシードからシリーズBまでのポートフォリオから25のスタートアップが、世界中の800人の有力投資家にプレゼンを行い、投資家とスタートアップを直接結びつけるプラットフォームになっています。

Foundersコミュニティは、Y Combinatorのエコシステムに似ており、創業者同士のつながりを生み出す場所になっています。このコミュニティでは、Web3ビルダーやインターネットのデジタルニーズに取り組むビルダーたちが、最高の場所でつながることができます。Protocol LabsとFoundersコミュニティは、技術開発とスタートアップ支援を通じて、デジタル人権の確立と人類の進歩を目指しています。

ーー支援プログラムについてもう少し詳しく教えて下さい

James:私たちはさまざまなアクセラレーターモデルを用意しており、Long Hash、Techstars、Outlier Venturesなどの大手アクセラレーターと共同ブランドモデルで提携しています。これらのパートナーシップを通じて、共同でスタートアップを選定し、デューデリジェンス・プロセスや投資委員会を経て共同投資を行います。また、アクセラレータプログラムの全期間を通じてサポートし、Demo DayやProtocol Labsのような後続ファンドで再び投資することもあります。

さらに、ちょっとそのスキームとは異なるのですが、日本を拠点とするFraction VenturesやF Venturesとパートナーシップを結び、アクセラレータ・インキュベータプログラムを運営しています。彼が日本ではアクセラレーター・インキュベーター・プログラムを運営し、地域や世界各地から素晴らしいスタートアップを探し出してきています。また、投資も彼らが実施します。確か、Fraction VenturesはNext Web Capitalというファンドにも出資していたはずです。

一方の私たちはこれらのすべてのスタートアップに投資するわけではありませんが、すべてのスタートアップに技術支援を提供します。技術スタックに関するワークショップを開催し、創業者コミュニティへのアクセスを提供します。また、メンターシップ・プログラムや他の創業者とのつながりをサポートし、私たちのテクノロジーを活用している、または将来的に統合する可能性があるチームに投資します。

こういった企業に対しては通常、他のパートナー企業と同じような評価基準で投資します。私たちが採用するモデルにはさまざまなものがありますが、それらはマクロ的な状況とスタートアップの資金調達戦略を考慮しています。強気な市場で誰もがたくさんの資金がある時には、トークンへの投資が増えるかもしれません。

ーーポートフォリオの状況はどのようなものですか

James:Protocol Labsのネットワークには、600社以上が参加しています。Demo Dayについて話をしましたが、Demo Dayは通常、投資プログラムのPhil VCから始まります。Phil VCは、ウェブ全般の分野をカバーするスタートアップから、通常25社程度を選択します。そして、投資家に資金を求める企業がすべて紹介されます。これは800人以上の投資家に対して同時にピッチを行うことができるもので、個別に話をするのとは異なる機会です。別の機会もあって私たちのエコシステム全体において、私たちが構築したプロトコルや、私たちの技術の上に参加している新興企業、すなわちIPFS、Filecoinなど、約600社の新興企業たちとつながることができるのです。

ーー日本市場に何を期待しますか

James:日本でWeb3が流行している理由には、3つの要素があると思います。まず、「政治」です。岸田首相は、クールジャパンの取り組みに非常に前向きで、素晴らしいことだと思います。税制、DAO規制、NFT、デジタル資産など、多くの重要な点を明確にしています。その結果、より多くのスタートアップ企業がここに来るようになるでしょう。政治的な支持は素晴らしいことで、成功のための重要な基盤となります。米国で起きていることはまさに逆行するものです。

そして、経済状況ですが、以前は資金調達の面で少しギャップがあったと思います。VCはWeb3のスタートアップにはやってきませんでした。資金を経済に還元せず、安全策をとっていたからです。

このイベントを主催しているTanéやアクセンチュア・ベンチャーズその他多くの投資家は、Web3に本当に力を入れています。そして、個人あるいは社会的なレベルにも目を向ける必要があると思います。

そして先ほど述べたように、日本では開発者の数が増えています。

日本では識字率が非常に高く、開発者の数も非常に多いので、Web2の従来の開発者がWeb3に移行していくのを目の当たりにしていますが、これは素晴らしいことです。このように、日本は将来的にWeb3の普及の最前線に立つことができる、非常に強力なポジションにあると思います。

私たちは、Protocol Labs、IPS、Filecoinとして、ETHGlobalのハッカソンに協賛していますし、ETHGlobalのすべてのイベントに協賛しています。ですから、Foundersコミュニティを通じて彼らをサポートする、本当に強力なビルダーを募集しています。

また、政策立案者や研究者、投資家など、Web3を軌道に乗せようとするすべての人たちとの出会いも求めています。様々なイベントでお話できることを大変嬉しく思っています。

次回はdYdX Foundation CEOのCharles d’Haussy氏のインタビューをお届けします

インタビュワー:池田将、写真:佐々木峻

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