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btraxが「DESIGN for Innovation 2016」を開催——イノベーションに対するデザインの重要性を徹底討論

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら。 異文化に特化したブランディングとマーケティングを行う btrax は17日、イノベーションでデザインが担う役割を検証するイベント「DESIGN for Innovation 2016」を、東京のマイクロソフト本社で開催した。2004年に Brandon Ka…

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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左から:John Creson 氏(Principal, DesignStudio San Francisco)、Jason DePerro 氏(Sr. Manager Product Design, Capital One)、Brandon K. Hill 氏(CEO, btrax)
Image credit: btrax

異文化に特化したブランディングとマーケティングを行う btrax は17日、イノベーションでデザインが担う役割を検証するイベント「DESIGN for Innovation 2016」を、東京のマイクロソフト本社で開催した。2004年に Brandon Katayama Hill 氏が設立した btrax はカリフォルニアを拠点とするエージェンシーで、日本・中国・韓国市場でのオペレーションにスコープを絞っている。イベントで Hill 氏らは、サンフランシスコ・ベイエリア、シリコンバレー、北米全域の最新のデザイントレンドについて語った。

午前の部では、イノベーションを生み出すデザインコンセプトや UX デザインを探求するワークショップが、また午後には、ネットワーキングに先立って、さまざまなテーマを網羅したパネルディスカッション形式のセッションが開かれた。デザインに関わるプロフェッショナルや学生だけでなく、(PricewaterHouse のような)会計事務所や(デザイン関連の知的所有権を扱う)法律事務所はもとより、デザインに関連する事業や活動を行うサポーターも顔を揃えた。

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Image credit: “Tex” Pomeroy

THE BRIDGE の読者にとって興味がありそうなのは、「Startups and Design」と「The Design for Stoeies」という2つのトピックのセッションだった。このセッションでは、アメリカとヨーロッパそれぞれにおける、デザインの使われ方について議論された。「Startups and Design」では、Design Studio のプリンシパル John Creson 氏が Airbnb のリブランディングなどの実例を紹介し、CapitalOne のプロダクトデザイン担当シニアマネージャー Jason Deperro 氏は、ユーザエクスペリエンスを追求する観点から、銀行業にとおいてもデザインの重要性が増していることについて触れ、CapitalOne がデザイン強化している事例を紹介した。

Airbnb のリブランディングでは、パッと見でシンプルであり、シリコンバレーのモチーフカラーである青色を避ける結果となった。「belong anywhere(どこにでも所属する——日本語では、「暮らすように旅しよう」と訳されている)」が実現できる、Airbnb ユーザのイメージに基づくものだ。ビジュアルを活用したブランディング戦略は、Airbnb による「Belo」ブランディングの誕生につながった。この新しいロゴは、Airbnb が掲げる人々・場所・愛について投影したものだ。

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Jason DePerro 氏は、「maker」に始まり現在では「banker」となったこれまでのキャリアを振り返った。多くのスタートアップの人が考えるように、ファイナンスは成功するのに重要な課題だからだ。「デザイン力は、どう未来を作るか」というイベントのサブテーマにならい、DePerro 氏は、今日、ユーザを獲得し留めておく上でデザインが果たす役割を、あらゆる組織が検証するようになっていることを指摘した。

その傾向を象徴するかのように、CapitalOne が最近、UX デザイン会社である Adaptive Path を買収したことも特筆すべきだろう。Storymaker の Managing Partner である Bjoern Eichstaedt 氏や、Pinterest のデザイン責任者 Katie Barcelona 氏による「The Design for Stories」のセッションでも示唆があったが、ストーリーにもデザインの重要性は適用される。Eichstaedt 氏はこのセッションで、ヨーロッパから発信される見方を披露した。一言で言えば、うまくデザインされたストーリーとストーリーマーケティングは、クライアントを惹きつけ続けるということだ。

後半のセッションでは、オーストラリア人の起業家で、Moneytree を創業した Paul Chapman 氏が、デザインとデータの役割を強調した。今回のイベントになぞらえデータについて話すなら、フランスの IP SaaS/データベースプロバイダ Questel の Charles Besson 氏(映画監督の Luc Besson 氏とは無関係)が、中国や韓国だけでなく日本にも顧客を増やしたいと考えていたことを述べておきたい。Questel のデザインデータベースは、この分野では最も情報が包括されており、自社のデザイン資産が十分かつ有効に活用されているかどうかを確かめたい企業には重要な存在だ。

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左から:伊藤英太郎氏(日立製作所 研究開発本部 東京社会イノベーション協創センタ リーダ主任デザイナー)、目黒友佳氏(NEC 事業イノベーション戦略本部 ビジネスモデルイノベーション室主任)、モデレータ:多田亮彦氏(btrax Japan ジェネラルマネージャー)
Image credit: btrax

今回のイベントでは、インフォバーンやマイクロソフトといった多国籍 ICT 企業に加え、電通、日立、NEC など大手日本企業からも登壇者が迎えられ、海外のみならず、大阪や京都はもとより、沖縄や北海道といった遠方からも参加者を集め、最高潮で幕を閉じた。(オリンピックやパラリンピックのロゴがようやく最近になって決まった)東京が2020年のランドマークとなる年を迎えるのを前に、デザイン業界が未来に目を向けるようになっているのは自然の流れと言えるかもしれない。

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Image credit: “Tex” Pomeroy
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btraxがSF中心部にコワーキング・スペース「D.Haus」をオープン〜福岡市、FOVE、崇城大学などが入居へ

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SF Japan Night の開催で知られるサンフランシスコのデジタル・メディア・エージェンシー btrax は28日(アメリカ太平洋標準時夏時間)、サンフランシスコ中心部の SOMA 地区に、デザインにフォーカスしたスタートアップなどを集めるコワーキング・スペース「D.Haus(ディーハウス)」を10月1日にオープンさせると発表した。 当初の入居者には、スタートアップの海外支援に積極的な福岡市…

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SF Japan Night の開催で知られるサンフランシスコのデジタル・メディア・エージェンシー btrax は28日(アメリカ太平洋標準時夏時間)、サンフランシスコ中心部の SOMA 地区に、デザインにフォーカスしたスタートアップなどを集めるコワーキング・スペース「D.Haus(ディーハウス)」を10月1日にオープンさせると発表した。

当初の入居者には、スタートアップの海外支援に積極的な福岡市のほか、ヘッドマウント・ディスプレイを開発する FOVE起業家育成プログラムを持つ熊本の崇城大学などが含まれる予定。また、岡村製作所の協力により、同社の家具やオフィス器具が D.Haus 内に提供・据え付けられる。

D.Haus は、アメリカのスタートアップのメッカとも言える SOMA(South of Market)に位置し、周りに高い建物が少ないため、窓からは Twitter の本社がかつてあった South Park 周辺や最近完成した Dropbox の自社ビル(TechCrunch 記事によれば12年間契約のリースとある)などを見渡すことができる。同じビルには、インキュベーション・スペースの Founders Den、フリーミアム CDN の CloudFlare、スマートロックの August なども入居しており、スタートアップをする上では、世界の中心に身を置いている実感が得られるだろう。

巷を賑わす「地獄のサンフランシスコ」にも書かれているように、サンフランシスコ市内のオフィスや住宅の家賃はうなぎのぼりで、シリコンバレーでスタートアップを始めようとする人には頭の痛い問題だ。D.Haus では敷金・礼金不要、費用の3ヶ月の前払いで最短契約期間は6ヶ月となっている。契約プランにもよるが、入居者にはデスク・椅子、Wi-Fi、電源、会議室利用、コピー機利用、イベントへの参加権などが提供される。オフィスのカギは August のスマートロックになっており、年中24時間入退室が可能である。

btrax では昨年から、日本企業が〝シリコンバレー式〟を現地で体験・理解を支援するプログラム「イノベーションプログラム」を実施しており、D.Haus とあわせて、より多くの企業のシリコンバレー進出を支援したいとしている。

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D.Haus が入居するビルの玄関。他にも入居する有名スタートアップの看板が並ぶ。
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10月3日開催のSF Japan Night ⅦI日本予選に登壇するスタートアップ12チームが発表(プレビュー)

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日本のスタートアップが、シリコンバレーで現地の起業家/投資家の前でピッチできるイベント SF Japan Night。不定期で開催されているこのイベントも、今年で第8回を迎える。THE BRIDGE では今回も、SF Japan Nightのメディアパートナーを務めることになった。 <これまでの SF Japan Night 関連記事> 第2回:SF New Tech Japan Night の最…

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日本のスタートアップが、シリコンバレーで現地の起業家/投資家の前でピッチできるイベント SF Japan Night。不定期で開催されているこのイベントも、今年で第8回を迎える。THE BRIDGE では今回も、SF Japan Nightのメディアパートナーを務めることになった。

<これまでの SF Japan Night 関連記事>

今回の SF Japan Night 東京予選は、10月3日(土)、東京駅前のグラントウキョウノースタワー、大和証券カンファレンスホールで開催される。予選に参加するセミファイナリストは12チームで、選考倍率は昨年の5倍に上ったのだそうだ。つまり、昨年のセミファイナリストが15チームだったことから考えれば、エントリの段階で今年は昨年の約5倍の申し込みがあったことになる。

東京予選でのピッチの結果選ばれた数社が、11月にサンフランシスコで開催される本選に臨む予定だ。THE BRIDGE でのこれまでの掲載記事を交え、セミファイナリスト12チームをご紹介しよう。

SF Japan Night 東京予選のチケットは、ここから購入できる(THE BRIDGE 読者向け15%割引適用済)。

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データ解釈の重要性とインダストリアルIoTの可能性——IoTスタートアップの創業者達が未来を語る

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サンフランシスコの一画にPCHと呼ばれるハードウェアスタートアップ向けのインキュベーター施設がある。4月23日、このPCHでクリエイティブエージェンシーである btrax 主催のIoTの未来に関して議論するトークイベント「The Future of IoT」が開催された。 ゲストスピーカーとして登壇したのは、Sprouting の Chris Bruce 氏、FarmX の Sanjay Rajp…

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サンフランシスコの一画にPCHと呼ばれるハードウェアスタートアップ向けのインキュベーター施設がある。4月23日、このPCHでクリエイティブエージェンシーである btrax 主催のIoTの未来に関して議論するトークイベント「The Future of IoT」が開催された。

ゲストスピーカーとして登壇したのは、Sprouting の Chris Bruce 氏、FarmX の Sanjay Rajpoot 氏、BKON の Richard Graves氏、そして Automatic の Thejo Kote 氏。モデレータは、btrax の Innovation Strategist である Tim Wagner 氏が務めた。

大事なのはデータより、その「解釈」

ディスカッションは、データに関するものから始まった。IoTとデータはよく引き合いに出される。デバイスを利用するにつれてデータが蓄積されていき、データ量が増えることでデバイス自身がデータパターンを認識していく。このサイクルを回すことで、より良いフィードバックを与える仕組みが一般的だ。

しかし、一般ユーザーは、データがどう扱われ、提供されるのかというテクノロジーの側面はあまり気にしない。彼らが一番知りたいのは、各IoTデバイスを利用することでもたらされるメリット、生活がどう良くなるかに尽きる。

モデレーターから、「データの利用価値を最も効率的、そしてシンプルにユーザーへ伝えるにはどうすればいいのか」という質問が投げかけられた。この質問に答えたのは、赤ちゃん向けのウェアラブルデバイス開発するSproutingを率いるBruce氏だ。モバイルアプリと連携させることで赤ちゃんの状況が随時把握できる製品だ。

ユーザーにデータを伝える上で大切なのはビジュアルです。例えば、Sproutingには9つのセンサーが搭載されており、1分間に2回データを収集できます。収集された豊富なデータをそのままユーザーに伝えることは簡単です。しかし、肝心なのはデータの解釈です。

例えば、現在の室温をそのまま伝えられても、それが赤ちゃんにとって適温なのかどうかはわからない。データをユーザーに垂れ流ししても仕方がないんです。そのため、アプリ画面が「緑」は適温、「赤」は要確認というデザインに行き着きました。このようにデータが持つ意味合いを直感的、かつシンプルにわかるようなビジュアルに作り込むことが重要です。

幅広い利用シーン、機能面、そしてユニーク性を押し出すハードウェアスタートアップは多い。しかしこの手のものを買ったとしても、使い勝手の悪いさから使わなくなることが頻繁に起きる。ユーザー体験の中で、「ユーザー」と「データ」をどう結び付けるかがしっかりと考え練れていないと、IoTが持つ本来の利用価値が見失われてしまう。

この点、Bruce氏の回答は、「伝え方」においてまだまだ不十分であるスタートアップが多いことを改めて気付かさせてくれるものであった。

次はトイレが来る?「IIoT」(インダストリアルIoT)の可能性

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ディスカッションの終盤には、このイベントのタイトルにもなっている IoT 市場の未来に関して議論がされた。各パネリストがそれぞれの未来予想を語るなか、Rajpoot 氏のそれはインダストリアルIoT(以下IIoT)の将来に触れるものだった。ちなみにIIoTとは、エネルギー産業や農業、流通業など、主に2B向けに開発されたデバイスの総称を示す。

これから2年先のIoT市場で大きなトピックになるのが、「農業」「ソーラー発電」そして「トイレ」です。例えばトイレ製造メーカーがIoT付きのトイレを販売すれば、ユーザーの毎日の体調管理ができたり、トイレを流す水の量を最適化できたりするでしょう。そして各トイレから消費した水の量に関するデータを蓄積すれば、各地域の水消費量を簡単に知ることができます。

このような具合に、IoTデバイスがあらゆる身近な製品に取り付けられることでデータ機器として活躍します。データが蓄積されることで、大きな産業にとって有益なものとなるでしょう。

Rajpoot 氏が言うように、個人的にも大手企業先導による IIoT デバイスの普及にはかなりの可能性があると思っている。スタートアップが企業側と組んでデバイスを売り込めば、一挙に一定量のデバイスを買い取ってもらうことができ、コンシューマー向けに売り出すよりメリットが大きい。また、IIoT 市場は2020年までには3190億ドルの規模にも上るというデータもあり、2B向け市場拡大のポテンシャルは高い。

IoTが生活に浸透してから動いても遅い

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北米ではすでに多種多様な IoT デバイスが出揃いつつある。アリーアダプター以外のマジョリティー層には未だ届いているとは思えないが、それも時間の問題だろう。普及が加速している背景には、コストの低下が挙げられる。実際、開発コストに関するデータを見ると、2000年以前は1,000ドルかかった GPS デバイスも、今では100ドル前後にまで下がっている。

最後になるが、ここで気に留めなくてはいけないのは、IoT が生活に浸透してから開発に取り組むのでは時が遅いということだ。日米間にはタイムラグがあり、北米のトレンドが数年後になって日本に来るというのはよく聞くが、それでは世界市場から見ても出遅れてしまう。常にアンテナを張り巡らし、誰よりも早くIoT市場の流れを見定める必要があるだろう。

今後、急激にIoTが広まっていく「IoT幕開け」が近づいていることを予感させるイベントだった。

情報開示:筆者は昨年インターンとしてbtraxで働いていました。

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btraxシニアアドバイザー佐藤英丸氏に聞いた、勝てる日本スタートアップのアメリカ進出戦略

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btrax と言えば、日本のスタートアップ界では、スタートアップのショーケース・イベント SF Japan Night(開始した当初は、SF New Tech Japan Night)を開催する会社として知られている。彼らの本業は、サンフランシスコを拠点に、日米のウェブ関連企業向けにコンテンツのプロダクションやマーケティングを提供する、デジタル・エージェンシーとしての業務だ。 btrax が設立さ…

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左から:btrax Japan シニアアドバイザー 佐藤英丸氏、同社広報担当 佐藤日奈子氏

btrax と言えば、日本のスタートアップ界では、スタートアップのショーケース・イベント SF Japan Night(開始した当初は、SF New Tech Japan Night)を開催する会社として知られている。彼らの本業は、サンフランシスコを拠点に、日米のウェブ関連企業向けにコンテンツのプロダクションやマーケティングを提供する、デジタル・エージェンシーとしての業務だ。

btrax が設立されたのは2004年だが、筆者がこの会社の存在を初めて知ったのは2007年、TechCrunch 40 でサンフランシスコを訪れたときのこと。当時から、「サンフランシスコを訪れるなら、btrax を訪問すべき」「CEO の Brandon Hill に会っておいた方がいい」という話は、あちらこちらから耳にしていた。

<関連記事>

そんな btrax も昨年で創業10周年を迎えた。企業が創業から10年経過した際の生存率は6%程度というから、これはスゴイことだ。2013年には東京オフィスを開設し、多田亮彦氏が btrax Japan のゼネラル・マネージャーに就任した。2014年における同社の大きな動きとしては、日米を代表するテック企業で豊富な経験を積んだ佐藤英丸氏がシニアアドバイザーに就任したことが挙げられるだろう。

佐藤氏は Citizen America、AOL Japan など名だたる有名企業で社長を務めた人物だ。2006年に Expedia が日本に進出するに際しチェアマンに就任、構想から9ヶ月で日本市場参入と日本語版サイト Expedia.co.jp 立ち上げという難業を成功させた。

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佐藤英丸氏

日本語版立ち上げに際し、Expedia でコンペをしました。コンペに参加した製作会社は東京から2社、アメリカから2社、そのうちの1社が btrax でした。

東京で運用する関係で、Expedia にとっては東京の会社の方が付き合いやすかったし、btrax の提示した金額は安くなかったけど、btrax の出してきたプランには enthusiasm と passion が感じられた。日本語版サイトは btrax にお願いすることになり、Brandon とはそれ以来の付き合いです。(佐藤氏)

Facebook のようなローカリゼーションをあまり必要としないサービスとは対照的に、Eコマースに代表されるエンドユーザの使い勝手が売上を決める業態ではローカリゼーションが肝だ。ウェブサービスの世界展開は一見簡単に見えて、ローカリゼーションは国や民族の種類だけ必要なのかもしれない。

佐藤氏はその後、ComScore Japan のマネージング・ディレクターや MarkMonitor Japan(2012年に Thomson Reuters が買収)のゼネラルマネージャーなど、アメリカ企業日本法人の重役ポストを渡り歩くことになるが、その後も公私に渡って親交の続いていた Brandon から乞われ、昨年9月に btrax Japan のシニアアドバイザーに就任することになった。

アメリカ人だって、世界に興味がある

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by JD Lasica via Flickr (Licensed under CC BY-NC 2.0)

市場が大きいゆえの弊害かもしれないが、アメリカや日本には、自国内の市場にしか興味を示さない人は少なくない。自国に巨大な市場を持たない、ヨーロッパやアジアの小国の起業家のマインドセットとは対照的だが、足元に大きな市場があるのなら、そこに意識が捉われてしまうのは自然な流れだろう。

THE BRIDGE でも英語版を運用しているが、アメリカ人(英語版はアメリカ人だけを対象読者にしているわけではないが)にどれだけ日本のスタートアップ・シーンについて興味を持ってもらうか、というのはチャレンジングなテーマだ。筆者は「多くのシリコンバレーの人たちは、ひょっとして、シリコンバレーの外で起きていることには興味が無いのではないか」という疑念さえ持つことがあるが、長年にわたりアメリカ人と仕事を共にしてきた佐藤氏は、示唆に富んだ洞察を共有してくれた。

それは、伝え方や見せ方の問題でしょう。伝えたいところがどこなのか? 別に btrax はプレゼンテーションを教える会社ではないけれど、SF Japan Night などでは、登壇者にピッチのトレーニングをやっています。そこまでちゃんとやらないとダメ。アメリカ人が興味を持つところを押さえる、という努力が必要です。(佐藤氏)

昨今、アメリカの世相も変化してきている、という話を、筆者も海外のジャーナリストらからよく耳にする。これまで、グローバルな話題を扱う機会が少なかった、アメリカの総合メディアやテックメディアでさえ、日本に支局を開設したり、特派員を配置したりする事例が増えてきている。国内のイノベーションが一巡した中で、テック・コミュニティに居る多くのアメリカ人も、よりディスラプティブで新しいアイデアをアメリカ国外に求め始めたようだ。これは、日本のスタートアップにとって、大きなチャンスかもしれない。

ソーシャル・ゲームもマンガも、日本が世界に誇るビッグ・ビジネス

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一昨年、筆者は SurveyMonkey の Dave Goldberg と対談をする機会があり、アメリカのスタートアップ界では、多くのB向け(事業者向け)サービスが台頭しているのに、日本はなぜ C 向け(消費者向け)サービスが主流なのだろうか、という質問をした。彼の見解は当時の記事に記したが、そのときの筆者の頭の中には、暗に「日本にももっと、B 向けのスタートアップが増えるべきなのではないか」という思いがあったのかもしれない。

同じ質問を佐藤氏にもぶつけてみたところ、興味深い答えが返ってきた。

日本を訪れる外国人の中には、電車の中でネクタイを締めた大人がマンガを読み、ゲームに没頭しているさまを批判する人もいるが、日本には、そういうものを受け入れる文化があります。その文化的素地があったからこそ、日本のスタートアップ・シーンは、ソーシャル・ゲームやマンガのコンテンツを世界にもたらすことができるようになったわけだし。(佐藤氏)

B 向けが良くて C 向けが悪いなどという論理はどこにも存在しない。佐藤氏がアドバイスするのは、今いる場所がアメリカであれ、日本であれ、何よりも当地のスタートアップ・シーンの文化を受け入れよう、という心構えだ。

もちろん、スタートアップのビジネスモデルに多様性があるのに越したことはないが、アメリカに B 向けが多く、日本に C 向けが多いのは、そもそも文化の違いから来るもの。日本のスタートアップ・シーンをシリコンバレーのそれに準えて考えてみても、そこからはシリコンバレーの焼き直ししか生まれてこないのかもしれない。

アメリカでは、起業家は新しいアイデアを思いつくと、周りの人と共有する文化があります。すると周りの人は、そのアイデアをコピーするのではなく、一緒にやろうと言って起業家のところへ集まってくる。そうやって、スタートアップ・コミュニティが形成されていくのです。(佐藤氏)

役所や一部の有識者の意図や予想とは違った方向へと、アメーバのごとく自然増殖的に形を変化させていくのは、スタートアップ・コミュニティが見せる面白い側面だ。THE BRIDGE では海外のニュースを幅広く取り上げることで、世界のスタートアップ・シーンを空間軸をスライドさせて追いかけているが、今後はそれらがどのように変遷を遂げていくのか、時間軸をズラして観察してみるのも興味深い試みかもしれない。

btrax が追いかける2015年のテーマ

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SF Japan Night でスマートウォッチ・アプリの開発事例を紹介する、btrax CEO Brandon Hill。
Courtesy: btrax

btrax では今年の大きなトレンドの一つをウエアラブルと捉えており、特にスマートウォッチ・アプリの開発を日本の起業家やデベロッパに推奨している。btrax はアプリ・デベロッパではないため、自らスマートウォッチ・アプリを量産するのは彼らのビジネスドメインではないが、むしろ、大企業やスタートアップがスマートウォッチ・アプリを開発し、それらを世に出すのを積極的に支援していきたいようだ。

その一つの足がかりとして、btrax は Moto360 を購入し、OnTask という音声入力で To Do 管理ができるスマートウオッチ・アプリを開発した。このアプリは、11月にサンフランシスコで btrax が開催した SF Japan Night VII の席上で披露され、聴衆からの注目を集めた。

近年、リクルートテクノロジーズが自社のエンジニアをベルリンのスタートアップに派遣するなど (EIR; Entrepreneur in Residence)、社員に日本以外のスタートアップ・シーンに身を置いてもらうことで、企業内イノベーションを活性化させようという動きが増えつつある。btrax では、昨年から大企業向けにシリコンバレーに身を置くことで企業内創業を支援する「イノベーションプログラム」を展開しており、このような機会を通じて、スマートウォッチ・アプリ開発を始めとする事業支援を加速させたい計画だ。

昨年で7回目を迎えた、btrax を象徴づけるイベント「SF Japan Night」も、これまでに増してアクセルを踏みたいと佐藤氏の鼻息は荒い。

昨年の SF Japan Night には50社からエントリがあり、そこから選ばれた日本予選登壇が15社、ファイナリストの6社がサンフランシスコでの本選に登壇しました。予選に残ったスタートアップのうち3社が女性CEOだった。スタートアップ・シーンに女性が増えてきたのは、うれしいことですね。

来年は、テック系とは全く違う業界からも SF Japan Night のスポンサーを募りたいです。参加機会を増やすために、東京以外の地域での開催にも、エクスパンションを検討してみたい。日本のスタートアップがアメリカに出て行く上で、特に、ものづくり系は大きな強みになるでしょう。もっとたくさんのスタートアップに出てきてほしい。

佐藤氏という新たな戦力を獲得して、日本のスタートアップ・シーンや大企業をシリコンバレーとつなぐ上で、btrax が果たす役割はさらに大きなものになっていくだろう。

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SF Japan Night VII の本選表彰式(2014年11月、サンフランシスコ)
Courtesy: Takashi Fuke

仕事をしている者にとって、日頃から気になるのは、自分の出したアウトプットにクライアントがどれだけ満足してくれているか、ということだ。もし、クライアントが「あなたの仕事ぶりに惚れたので、あなたと一緒に仕事したい」とやってきて同僚になったら、それは、あなたの仕事に対する最大の賛辞と言えるだろう。創業10年目を迎えた btrax に、かつてのクライアントであった佐藤氏が参画したというのは、そういうことを意味するのかもしれない。

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SF Japan Night Ⅶの日本予選が9月27日に開催、予選通過者にはDraper Universityで米国勢との対戦試合も

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日本のスタートアップが、シリコンバレーで現地の起業家/投資家の前でピッチできるイベント SF Japan Night。不定期で開催されているこのイベントも、早くも第7回を迎える。THE BRIDGE では今回も、SF Japan Nightのメディアパートナーを務めることになった。 <これまでの SF Japan Night 関連記事> 第2回:SF New Tech Japan Night の最…

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日本のスタートアップが、シリコンバレーで現地の起業家/投資家の前でピッチできるイベント SF Japan Night。不定期で開催されているこのイベントも、早くも第7回を迎える。THE BRIDGE では今回も、SF Japan Nightのメディアパートナーを務めることになった。

<これまでの SF Japan Night 関連記事>

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堀江貴文氏

今回の SF Japan Night 東京予選は、9月27日(土)、東京駅前のグラントウキョウノースタワー、大和証券カンファレンスホールで開催される。イベントで冒頭では、元ライブドア代表取締役でSNS株式会社ファウンダーの堀江貴文氏が基調講演を行う。

予選に参加するセミファイナリストは次のスタートアップ15社で、東京予選でのピッチの結果選ばれた6社が、11月5日(水)サンフランシスコで開催される本選に臨む予定だ。THE BRIDGE でのこれまでの掲載記事を交え、セミファイナリスト15社をご紹介しよう。

SF Japan Night 東京予選のピッチコンテストの審査員は、安倍内閣の特別技術アドバイザー斎藤ウィリアム氏、STORYS.JP の共同創業者で現在は DeNA のベンチャーキャピタリストを務める James Riney 氏、元 Skype で Atomico パートナーの岩田真一氏、そして SF Japan Night の主催者である btrax の CEO Brandon Hill 氏らが務める。

なお、サンフランシスコでの本選の前日である11月4日(火)には、シリコンバレーのVC Draper Nexus のインキュベーション施設 Draper University で、ファイナリスト6社とDraper Nexus 選出のアメリカのスタートアップ数社との間で、対戦ピッチ試合も予定されているとのことだ。こちらのイベントもあわせて楽しみにしたい。

SF Japan Night 東京予選のチケットは、ここから購入できる(9/15締切、THE BRIDGE 読者向け先着15名10%割引適用済)。

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なぜ世界を前提としたプロダクトづくりがスタートアップにとって大切なのか、その理由と3つのアドバイス

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日本のスタートアップは世界を前提としたプロダクト開発をする必要があるのだろうか? もちろん答えはそのスタートアップのモデルや到達したい場所による。しかし「世界展開」は決してなんとなく言われているだけのことではない。 ブランドン・K・ヒル氏はアジアを中心としたクロスカルチャーのブランディングおよびマーケティングを提供するコンサルティングファーム「btrax」の創業者兼CEO。 北海道に生まれ、サンフ…

日本のスタートアップは世界を前提としたプロダクト開発をする必要があるのだろうか?

もちろん答えはそのスタートアップのモデルや到達したい場所による。しかし「世界展開」は決してなんとなく言われているだけのことではない。

ブランドン・K・ヒル氏はアジアを中心としたクロスカルチャーのブランディングおよびマーケティングを提供するコンサルティングファーム「btrax」の創業者兼CEO。

北海道に生まれ、サンフランシスコ州立大学在学時からウェブデザインやプログラマとして活躍、現在はbtraxが主催するSF New Tech Japan Nightなどの運営を通じて国内スタートアップの海外進出を支援している。

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本稿ではブランドン氏がMovida Schoolで起業家たちに語った、サービスを考える上で必要な世界展開の視点を次の4つに整理してお伝えする。

1:最初から世界を視野に入れたサービスづくりを考える理由
2:プロダクトを絞り込むことで高いユーザー体験を生み出す
3:マーケットによって異なるニーズの違いを理解する
4:「国内生産、海外展開」のチーム作り

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最初から世界を視野に入れたサービスづくりを考える理由

もしかしたらここに疑問を持っている起業家もいるかもしれないが、ブランドン氏はやはり「数の限界」を指摘していた。

「日本のITベンチャーとシリコンバレー等を中心とする世界的なスタートアップの違いはプロダクト構成にあります。当然、ひとつの事業にフォーカスした方が圧倒的に強い。 人やカネ、ノウハウといったリソースを集中的に投入できるからです。 絞って成功すれば大きな収益も大型株式公開も見えてくる」。

facebookにTwitter、はたまた最近100億ドルの評価を得たDropboxにAirbnbといった世界的なスタートアップはいずれもプロダクトを絞っている。

「一方、国内だけで進めると、会社がある程度の規模になったとき、どうしても人口の限界があるので、次の事業の柱を立てなければスケールが厳しくなってしまう。この例は楽天やサイバーエージェント、DeNAなどずらりと並ぶ」。

ブランドン氏によれば、最初からグローバルに展開を考えた場合、対象となるユーザー数はざっくりと日本だけを考えた場合に比較して10倍の差が生まれるのだそうだ。つまり世界展開には「なんとなくいいな」ではなく明確な理由がある。

では具体的にどうやったら世界に通用するプロダクトを展開できるのだろうか。以下にブランドン氏のアドバイスを続けよう。

プロダクトを絞り込むことで高いユーザー体験を生み出す

facebookやEvernote、TwitterにInstagram。全て日本のものじゃないけど使える。なぜ、そういう違いが日本のプロダクトと海外のものに生まれるのか。それはやはりひとつのプロダクトにフォーカスしているからだ。品質の追求にどうしても差が生まれる。

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「例えば私はお店探しにサンフランシスコでYelpを使うのですが、価格帯や席の空き具合、人数を指定するとすぐに該当店舗が出てきます」。

しかし、国内にはこの体験性を再現してくれるプロダクトはないという。市場が小さく、広告などのマネタイズを優先させるあまり、ユーザー体験を犠牲にしている可能性があるというのだ。こうなるとさらに海外には通用しなくなってしまう。

マーケットによって異なるニーズの違いを理解する

マーケットにあったプロダクトを展開しなければ他の地域で使ってもらうことは困難になる。例えばメッセージングであれば、アメリカにいるときはLINEではなくより多くの友人が使っているWhatsAppを使うし、中国であればWeChat、韓国であればカカオといった具合の話だ。

「マーケット毎にニーズが違うんですね。例えばアメリカでは電話というのはそもそも定額なんです。だから無料通話を押してもニーズはありません。一方で日本では1分いくら、という価格設定ですから無料通話を欲しいと思う人もいるでしょう」。

ローカルルールの熟知は当然の話だということがよくわかる。

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「国内生産、海外展開」のチーム作り

ブランドン氏が今回の話でもっとも難しいポイントとして挙げたのがチームビルディングについてだ。彼の話を整理しよう。

シリコンバレーの技術者は日本の4倍かかる

まず、シリコンバレーで最高の技術者を採用する、というのは馬鹿げた話なのだそうだ。理由は単純、既に大手に取られてるからだ。さらに技術者の価格高騰も優秀な人材に手を出せない理由のひとつになる。ブランドン氏の話には、初任給で1500万円なんていう数字も挙げられていた。

「それぐらい出さないと大学卒業して数年の経験しかない人でも雇えないんです。数千万から数億円という数字もあるんです」。

国内生産、海外展開の事例

一点、日本のスタートアップが有利になる方法があるという。それが「国内生産、海外展開」の方法だ。日本のチーム(特に開発)はコストがシリコンバレーに比べて安い。給料は倍、それなのに働く時間は半分。結局コストとしては4倍かかることになる。

日本にものづくりの拠点を持ち、資金はシリコンバレーで調達する。このスタイルに成功しているのがgengoやTokyoOtakuModeなどだ。ボードメンバーが世界で通用する人材を集めているのも共通している。

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最初から世界に向けて作ればいい

また、日本でうまくいった事業を世界展開する場合、リソースの配分が難しい。海外展開したとしてもすぐに成功するわけではないし、多くの場合は結局国内の事業が優先となり、いつの間にか海外向けのサービスが消えてしまうことにもなりかねない。

これに対するブランドン氏のアドバイスは「最初から海外向けに作ること」とシンプルだ。

「海外ユーザーに使ってもらうことを最優先に考えて、結果的に日本のユーザーもつけばよかったね、という展開を目指した方がいい」。

この判断はなかなかできるものではないが、自身のプロダクト、マーケット、そしてなによりどの高みを目指すのかで、決めるべきことなのだろう。

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新進気鋭 btraxの日本法人GM 多田氏に聞いた、スタートアップのシリコンバレー進出支援にかける思い

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サンフランシスコに本拠を置くデジタル・エージェンシーの btrax は先頃、日本法人の btrax Japan を設立し東京オフィスを開設した。同社顧客でもあるゲーム・デベロッパとのオフィス・スワップ [1] で六本木ヒルズに拠点を設け、日本の顧客向けのサービスを強化するとしている。btrax Japan の設立にあたっては先月、東京でローンチ・パーティーが開かれ、会場には Telepathy の…

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btrax Japan ローンチ・パーティーにて、多田亮彦氏(左)と Brandon Hill氏(右)

サンフランシスコに本拠を置くデジタル・エージェンシーの btrax は先頃、日本法人の btrax Japan を設立し東京オフィスを開設した。同社顧客でもあるゲーム・デベロッパとのオフィス・スワップ [1] で六本木ヒルズに拠点を設け、日本の顧客向けのサービスを強化するとしている。btrax Japan の設立にあたっては先月、東京でローンチ・パーティーが開かれ、会場には Telepathy の井口尊仁氏をはじめ多数の著名人が招かれていた。

このパーティーで気になっていたのは、司会を務めた btrax Japan のゼネラル・マネージャーの多田亮彦氏のことだ。btrax の CEO Brandon Hill が日本法人設立にあたってヘッドハントした人物だが、パーティー会場では言葉を交わす時間もなかったので、改めて多田氏にお願いして、新たな事業に向けた彼の思いなどを語ってもらった。

クロスボーダーにシフトする業務展開

btrax は2004年、北海道出身の Brandon Hill が、サンフランシスコの自宅を拠点に開設した(関連記事)。当時、同社の顧客はアメリカの企業のみだったが、2006年頃から大手旅行口コミサイト TripAdvisor の日本市場向けのローカリゼーションやマーケットエントリを手がけることになり、それをきっかけに、日米にまたがって取り扱うプロジェクト依頼が多くの顧客から寄せられるようになった。その結果、現在、btrax が取引する顧客の割合は、アメリカ企業 60% に対して、日本企業 40% にまで増えた。

日本市場に進出したいアメリカのエンタープライズやスタートアップだけでなく、最近は、サンフランシスコやベイエリアを拠点に、新ウェブサービスやアプリを立ち上げようとする日本企業からの相談も増えている。もちろん、日本からでもサービスのローンチは可能だが、この地域に集まる人脈や人材が、サービスをより洗練されたものにし世界展開を加速させる。そのような顧客からのオーダーをより細かくサポートすべく、今回の東京拠点の開設に至った。

都市デザインへの傾倒がもたらした、シリコンバレーとの出会い

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btrax Japan GM 多田亮彦氏

興味深いことに、btrax Japan の新ゼネラル・マネージャー多田氏のバックグラウンドは、都市デザインなのだそうだ。確かに、世界各国でスタートアップのインキュベーション等を手がける人々に会うと、コンピュータや情報技術ではなく、都市デザインのバックグラウンドを持っている人が多いのには驚かされる。おそらく、現在の世の中では、都市を形成する上でスタートアップは必要不可欠な要素であり、スタートアップが生み出す革新や文化こそが、都市の変化を牽引していくからだろう。

日本の大学を卒業後、ロンドンの建築専門学校で都市デザインを6年間学びました。帰国後、建築系専門出版社に就職しましたが、担当していた職務の関係で海外出張が多く、さまざまな人に出会う機会に恵まれました。そのような課程で、デジタル・ファブリケーションの分野に興味を持つようになったんです。

彼はデジタル・ファブリケーションのコンセプトを本格的に日本に持ち込みたいと考え、それまで務めていた出版社にも別れを告げ、単身シリコンバレーに乗り込んだ。

ベイエリアには d.school [2]もありますしね。 サンフランシスコ市内に行けば、TechShop というコワーキング・スペースがあります。まるでスポーツジムのように、会社帰りに立ち寄っては、皆、何かを作って行く。TechShop を日本に持ってきたかった。しかし、労働環境の違いもあり、日本にはまだそのようなカルチャーは育っていません。時期尚早、そこで違うアプローチを考えてみることにしたんです。

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Golden Gate Park BBQ with Drikin
CC BY-NC-SA 2.0: via Flickr by Fumi Yamazaki

デジタル・ファブリケーションの波を、どのようにしたら日本に持ち込めるかーー思案をこらしていると、彼は友人の誘いで、サンフランシスコ在住のブロガー・ドリキン氏が Golden Gate Park で開いたバーベキュー・パーティーに参加し、そこで Brandon Hill と出会うことになる。

今後、ユーザ・エクスペリエンスというものを追求していくと、ハードウェアとインターネットの融合は不可避だと思います。これはまさに、デジタル・ファブリケーションが向かう方向に通じますね。Brandon はそこに可能性を感じている。私は Brandon と意気投合し、btrax Japan のマネージャーの任を引き受けることになりました。

人の出会いとは不思議なものだ。これまでも、Goodpatch の土屋尚史氏など多くの人材を輩出してきた btrax だが、多田氏が同社の新しい風となって、日本の起業家文化にどんな影響を与えてくれるか楽しみだ。

6回目を迎える Japan Night、ユナイテッド航空が東京〜SF往復航空券を提供

sfjnight年に2度、卓越した日本のスタートアップをサンフランシスコに招き、彼らに投資家や起業家の前でのピッチの機会を与える SF Japan Night(btrax 主催)。今回が今までと違うのは、ゴールドスポンサーのユナイテッド航空が東京〜SF往復チケットを提供してくれる点だ。詳細は SF Japan Night のウェブサイトを参照してほしいが、10月5日の東京予選で優秀な成績を収めたスタートアップが、11月7日にサンフランシスコで開催される本選に出場するにあたり、一定量のチケットを拠出するそうだ。

海外には、興味深いスタートアップ・イベントがたくさんあるが、当然、交通費は自腹というケースが多く、台所事情が厳しいスタートアップはついつい二の足を踏んでしまう。少しではあるけれども、そのハードルが幾分下がることになる。締切が今月いっぱいまでに延長されているので、アメリカを含む海外展開に興味のあるスタートアップは、この機会に応募してみてほしい

SF Japan Night(以前は、SF New Tech Japan Night)への登壇をきっかけに、最も大きな成長を見せたのは翻訳スタートアップの Gengo だろう。2010年に 500 Startups らから75万ドル、シリーズAラウンドで Atomico と 500 Startups から525万ドル、今年はじめには複数投資家から 1,200万ドルをシードB資金調達している。このイベントから次なる Gengo が生まれるよう、今後登壇されるスタートアップの健闘を期待してやまない。


  1. 自社のオフィススペースの一部を他社に貸与する代わりに、相手のオフィスの一部を借りるしくみ。違う国で無料でオフィスを利用できるメリットがある。参考:SwapYourShop.com
  2. スタンフォード大学のデザインスクール「d.school(Institute of Design at Stanford)」。公開講座も開かれている。
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デジタルマーケティング会社「btrax」が東京オフィスを開設、次回のSF Japan Nightのピッチ募集を開始

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。 サンフランシスコに本社を置く、デジタルマーケティング・コンサルタンシーの btrax は今週はじめパーティーを開催し、東京オフィスのローンチを祝った。実際には、オフィスは六本木ヒルズ森タワー37Fに存在するが、多くの人が入場する都合上、パーティーは別の場所で開催された。Telepathy One の井口尊仁氏などの有…

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

btrax_logoサンフランシスコに本社を置く、デジタルマーケティング・コンサルタンシーの btrax は今週はじめパーティーを開催し、東京オフィスのローンチを祝った。実際には、オフィスは六本木ヒルズ森タワー37Fに存在するが、多くの人が入場する都合上、パーティーは別の場所で開催された。Telepathy One の井口尊仁氏などの有名起業家を含む150人以上が一堂に介し、同オフィスのオープニングを祝福した。

今回のローンチにあたり、Aki Tada 氏が日本オフィスのジェネラル・マネージャーに任命された。現地オペレーションによって、彼は既存の日本のクライアントによりよいサービスを提供し、日本のスタートアップがアメリカ市場へ、現在に増して進出できるように支援したいと考えている。

btrax は日系アメリカ人の Brandon Hill によって、2004年に設立された。サンフランシスコや東京のスタートアップ・コミュニティにとっては、同社は SF Japan Night のオーガナイザーとして知られている。SF Japan Night とは、サンフランシスコ・ベイエリアの起業家や投資家に、将来有望な日本のスタートアップを紹介する半年に一度のピッチイベントだ。同社はウェブ企業が外国市場へ参入するのを支援しており、顧客にはカルビー、Expedia、Trip Advisor、キッコーマン、DeNA などの著名企業が名を連ねる。

同社は最近、SF Japan Night の第6回について発表した。予選サテライトイベントは東京で10月5日に予定されており、最終戦は10月の下旬にサンフランシスコのコワーキング・スペース「Pivotal Labs」で開催される。現在、ピッチ登壇の申込はここから受け付けている。締切は8月15日だ。なお、このコンペティションについて、より多くのことを知りたければ、Hill 氏が明日開催される BizWeb イベントを訪問するので、そこで詳細を聞くことができるだろう。

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左から:btrax の日本オフィスGM の Aki Tada氏と、CEO の Brandon Hill氏

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日本のスタートアップたちがシリコンバレーでピッチする「SF Japan Night」が開催、優勝したのはこのチーム!

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日本のスタートアップをシリコンバレーで露出する機会をつろうとbtraxがスタートしたイベント「SF Japan Night」。先月、東京原宿にてプレイベントが開催されたこのイベントのファイナルが先日、サンフランシスコで開催された。 残念ながらSd Japanのメンバーは現地でのイベントに参加することはできなかったが、btraxチームから届けてもらった情報を元に、現地の様子をレポートしたいと思う。前…

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日本のスタートアップをシリコンバレーで露出する機会をつろうとbtraxがスタートしたイベント「SF Japan Night」。先月、東京原宿にてプレイベントが開催されたこのイベントのファイナルが先日、サンフランシスコで開催された。

残念ながらSd Japanのメンバーは現地でのイベントに参加することはできなかったが、btraxチームから届けてもらった情報を元に、現地の様子をレポートしたいと思う。前回のセミファイナルでサンフランシスコに行くことになっていたのは、comobaco、grafic、designclue、ShareWis、UIscope、WHILLの6社。ファイナルではこれら6社がピッチを行い、優勝チームを争った。

審査員として参加していたのは、アクセラレータプログラム800 Birdsのエグゼクティブ・ディレクターShirley Lin氏。SignalFireのイベントディレクター、Ahmed Siddiqui氏。RightVentures の共同創業者、Edith Yeung氏。GinzamarketsのCEO、Ray Grieselhuber氏、TMT Investmentsの投資家であり、インキュベータ HappyFarmの長であるIgor Shoifot氏の5名。

当日は、現地のスタートアップやベンチャーキャピタル関係の人、IT企業の人、その他、地元オーディエンスに加え、サンフランシスコに住んでいる日本人の留学生、SXSWに行くために日本からアメリカに渡っていた方等が参加した。プログラムの内容はセミファイナル時と変わらず、ピッチが行われ、審査員によって審査が行われた。

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審査の結果、見事優勝を果たしたのはShareWis。順位は以下のとおりだ。

      1st ShareWis
      2nd WHILL
      3rd designclue

セミファイナルから順位を上げ、優勝を果たしたShareWisの辻川氏にコメントをいただいた。

ShareWisの辻川です。正直な話、優勝できるとは思っていませんでした!サンフランシスコに来て気づいたんですが、やはり教育系スタートアップの盛り上がりは日本に比べてUSの方がすごいです!その波にうまくのれるようShareWisチーム一丸となって世界に挑戦したいと思います!

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現地から、審査員のうち何名かの人からのコメントも届いている。

Edith Yeung氏:
素晴らしい起業家たちが日本から参加してくれた。情熱があり、謙虚でありながらも必要なことは何でもやるという意思を持った人たち。彼らと出会えてとてもうれしい。

Igor Shoifot氏:
驚くべき新鮮なアイデアたちだった。素晴らしいプレゼンテーションもあり、大きな可能性をもっていたことが感じられた。

今年も「SF Japan Night」を開催したbtraxのチームからは今回のイベントを振り返って、感想を語ってもらった。

「SF Japan Night」の開催は今回で5回目となりますが、回を重ねる毎によりハイレベルな争いになってきているように思います。参加者のみなさんの英語によるプレゼンテーションも素晴らしいものでした。また、今回はWebサービスのみならずハードウェアの出場者も数社あり、非常に面白い回となりました。今後も年に2回のペースで開催して参りますので、世界に発信したいイノベーターの皆様のご応募お待ちしております!

日本から世界に発信するための機会は数多くある。日本のスタートアップにも、こうした機会を積極的に活かして、自身のサービスを世界に伝えていってもらいたい。

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