大型調達のソラコムが出資側にーー誰もが15キロ圏内の広域ネットワーク事業者になれる新たな展開を発表

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2016.5.25

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大型調達のソラコムが今度は出資側に回った。

「モバイル通信のクラウド化」を推進するソラコムは5月25日、省電力広域(LPWA)ネットワーク事業に参入することを明らかにした。これに伴い同社はLPWA事業を展開するM2Bに出資、戦略的業務提携を実施したことも明かしている。

M2Bは2015年10月に創業したLPWA事業者。LPWAのネットワーク方式のひとつ「LoRaWAN」の業界団体LoRa Allianceにおける日本初のコントリビュータとして日本規格の策定にも関わるなど、同方式の牽引を務めてきた。

ソラコム代表取締役の玉川憲氏によれば同社への出資比率については非公開ながら、戦略的事業展開に関して十分に意思疎通できる状況にあるとし、また、玉川氏を含め数名がM2Bの役員として参画することも教えてくれた。両社は今後、LoRaWANを活用したLPWAネットワークの実証実験を開始し、商用展開を進めるとしている。

誰でもLPWA事業者としてサービス提供できることの凄さ

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さて、ここまで読んで「これはすごいものだ」と理解した人は恐らく相当の通信技術ウォッチャーだと思う。私は正直言って、玉川氏の説明を聞いてもしばらくピンとこなかった。

そもそも今回ソラコムが開始するとしているLPWAネットワークというのは、データ転送量的には少ないものの、省電力かつ広域をカバーできる通信技術で、IoTやM2M通信では注目されているキーワードになっているそうだ。

さらに彼らが出資までして関わりを深めた「LoRaWAN」というのはそのLPWAの規格のひとつで、元はIBMと半導体ベンチャーのセムテックが開発した無線技術になる。これらの規格の比較は上記の表の通りだ。ちなみにこれらは利用者に特別な免許を必要としない。

で、何が凄いのか。

ーーそう、ソラコムが可能にしたこと、つまりモバイル通信のSIMを第三者である私たちがコントロールし、自分たちのビジネスとして利用できるようにしてくれたことーーこれと同じことを広域ネットワークでも可能にしてくれる点にある。

SORACOMの凄さは第三者が「SIM」を自由に発行・運用できることーーIoT向けモバイル通信PF、ソラコムが提供開始

乱暴に言えば、基地局を自分で設置して、誰でも簡易な通信事業者になれる環境を彼らは提供しようというのだ。ソラコムが出現した際、「1人MVNO事業者」が現れたのと同じ理屈だ。

玉川氏らの話を元に、資料を使ってもう少し具体的に説明しよう。

基地局ゲートウェイ5台で八王子全域をカバーする通信網を構築

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「LoRaWAN」で通信ネットワークを構築する場合、この試作イメージにあるゲートウェイとモジュールがあれば双方でデータ通信が可能になる。ソラコムのSIMはこのゲートウェイ側に入ることになる。玉川氏によれば近い将来、SORACOM Airと同様に「LoRaWAN」をウェブインターフェースで操作可能になるということだった。

驚くのはカバー範囲だ。このゲートウェイ5個あれば八王子全域をカバーできるのだという。

つまり、私がこいつをこの地図のように設置すれば、この範囲でモバイル通信(その裏はドコモネットワーク)を提供できる事業者になれるのだ。

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もちろん、キャリアと全く同じというわけにはいかない。そもそも通信速度は普段使ってるスマートフォンのものとは比べものにならないほど遅い。けれど、IoT関連デバイスであれば十分な記録を残すことができる。

「例えば地域のインフラですね。道路だったり電線。こういう場所に災害が発生した際、そこが正常なのかどうかは把握することができます」(玉川氏)。

こういったインフラに近い場所になると当然、大量にカバーしなければならないと同時にメンテナンス問題が出てくる。電源などないのが普通だ。ここも省電力設計が役立つ。玉川氏によれば今回ソラコムが試作する端末側のモジュールは、電池ひとつで数年は持つという省電力を実現しているという。

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電池問題を解決すればそれこそ様々な場所からデータが取れるようになる。

ではこのインフラを幾らで構築できるのだろうか?

玉川氏の説明ではこのルーターが数十万円程度、モジュールに至っては生産ロットによって数百円ぐらいまで落とせるということだった。ビジネスを考える上で十分可能な仕入範囲だ。

いかがだろうか。正直、文字では書ききれないほどビジネスチャンスに溢れた取り組みだと思う。もちろん、技術的な検証は私では難しいので、もしかしたら「絵に描いたモチ」で終わるのかもしれないが、それでも話を聞いていて夢が膨らむ話題だった。

さらに詳しい内容は7月13日のイベントで発表する予定なのだそうだ。さらにウォッチしたい人はこのページを追いかけるといいだろう。

 

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