【ゲスト寄稿】20000人が通う、WEBに誕生した学校の新しいカタチ「schoo(スク ー)」の今までとこれから[前編]

この記事をゲスト寄稿してくれたのは森健志郎さん。1986年大阪生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートにて広告営業・広告制作業務を行う。SUMMOなどを担当した後、リクルートを退職。退職後、株式会社スクーを立ちあげ、同社の代表取締役社長。「WEB上に誕生した、学校の新しいカタチ」をコンセプトに、schoo WEB-campus(スクーウェブキャンパス)を運営している。


株式会社スクー代表取締役社長・schoo WEB-campus理事長の森健志郎と申します。今回Startup Datingに寄稿する機会を与えて頂きまして誠にありがとうございます。2011年10月に創業した弊社は、12月に「schoo WEB-campus」という、授業動画を見ながらコミュニケーションを楽しむ「学校の新しいカタチ」を目指したサービスをリリースし、4カ月で約20000人の方にご登録頂くまでになりました。今回は株式会社スクーの立ち上げから、今、そしてこれから目指すものについてお話させて頂ければと思います。

schoo WEB-campusとはどのようなサービスか?

schoo WEB-campusを一言で著すと、

【学ぶことを軸とした、コミュニケーションプラットフォーム】

だと言えます。もう少し詳しく説明します。schoo WEB-campusは、これまでに「eラーニング」、「動画系サービス」、「セミナーの動画配信サービス」など、様々な切り口で語られてきました。しかしこれらは、いずれも私達が志向するサービスの方向性とは異なっている、全く違う概念のものを指しています。

私達が目指す「コミュニケーションプラットフォーム」をより具体的に説明すると、仮想キャンパスを模したschoo WEB-campus上で、生中継の授業を見ながら、場所・性別・年齢・面識など全ての制限を超えて、ユーザ同士が実名で意見交換を楽しむことが出来る場所のことを指します。私達が重要視しているのはコンテンツを見るすることではなく、そのコンテンツを基にしたユーザのコミュニケーションをどのように作っていくか、です。

schoo WEB-campusの特徴(2012年4月段階)

―授業時間は30分
―様々なジャンルのスペシャリストが「先生」として登壇
―生中継の授業(アーカイブ未公開)
―授業後に参加者がリアクションを行う

毎回の受講者数:500〜1000名
リアクション率:30〜40%

授業時間を30分と設定しているのにはこだわりがあります。schoo WEB-campusの授業は、生中継で参加していただくことを重要視しています。なぜなら、生中継の授業を見て「リアクション」を提出し、そのリアクションにコメントを付けていくことで、あたかも大教室で1000人を超える生徒が意見を交換しあえるような同期性を実現したいからです。そのためには、アーカイブではなく生中継で授業を受けて頂きたい。そして、30分がPCのモニターの前で集中力が続く限界です。

また、生中継の授業には様々なジャンルでご活躍されている方々を「先生」としてお招きし、毎週木曜日に授業を行なっています。これまで先生を務めて下さったのは、ハイパーインターネッツの家入一真さん、面白法人カヤックの柳澤大輔さん、nanapiの古川健介さんといったweb系サービスを創りだそうとしている方々。またブックコーディネーターの内沼晋太郎さん、出版社ディスカバー21の干場弓子さん、電動バイクメーカー、テラモーターズの徳重徹さんなど、幅広いジャンルの有識者の方々に登壇して頂きました。これらの授業群を「ビジネスクリエイティブ学部」という位置づけで配信していきます。

これまでに、幅広いジャンルの著名人に先生としてご登壇頂いていることもあり、どうしても「コンテンツの魅力」がスクーの価値だと思われがちですが、スクーの最も大きな価値は世代や居住地などのバックグラウンドを超えた「横断的なユーザ同士のコミュニケーションが生まれる仕組み」にあると考えています。現地で学ぶ学校では実現できない、その場にいる人全員との授業中チャットや、授業終了後の「リアクション」というコメント機能を通じた交流によるコミュニケーション。それを通じて、既存のオンライン学校のような限られたレイヤーの狭いクラスタではなく、参加条件を徹底的に下げたオープンな意見交換こそ、このサービスが生み出していく本当の価値だと考えています。

株式会社スクーを始めようと思ったきっかけ

私の前職は広告代理店のディレクターでした。毎日、クライアントと社会の接点を探り続ける日々を過ごしてきました。「社会人3年目で起業してやろう」とは考えていましたが、具体的なプランがあったわけではありません。ある日、目が覚めたときに、schoo WEB-campusの素案となるアイデアを思いついてしまったのです。そして、その日の内に上司と相談し、退職に向けて段取りを決めました。このときの素案と今のschoo WEB-campusのあり方は方法論こそ異なりますが、大まかなコンセプトは変わっていません。

schoo WEB-campusを実行するまでの思考プロセスを3つに分けて分析します。

1.「社会にとって何が必要なのか」と考える
全ての社会問題の根幹は、「教育・学び」によって変えていくことが出来ると思っています。それらについてブレイクスルーを起こすことで、幅広い分野に大きく貢献できる、やりがいのある分野だと思っていました。ただし、「教育現場を変える」ためにschoo WEB-campusをスタートさせたわけではありません。大上段が「教育の変革」ではなく、教育なら社会問題を変革出来るかもしれないという点に希望を見出していました。しかし。ここまではぼんやりと「社会人の学び」についてビジネス化してみよう、という曖昧なものでしかありません。

2.「学びは娯楽なのではないか」と仮説を立てる
東日本大震災が発生した後、少しの間、広告業界はほとんど開店休業状態でした。そのタイミングで少し時間に余裕が出来たときに、テレビで『ハーバード白熱教室』を見る機会がありました。画面の中ではサンデル教授の「ディレクション」によって生徒を巻き込んで、まさに白熱した授業が繰り広げられている。さらに画面の中だけに留まらず、ソーシャルメディア上やWEB上でも、関連するトピックが立ち上がり意見の交換が積極的になされていました。その光景を目の当たりにして、今後、「娯楽」というカテゴリにおいて学びが大きく進化していくのではないかという仮説を立てました。

3.「ソーシャルメディアが一般化した未来」を夢想する
次にソーシャルメディアについて考えました。ソーシャルメディアの普及は今後も止まることはないと思います。Facebookが実名制で、パーソナルなコミュニケーションを行うためのインフラとなっていく様を見ている中で、「オンラインでコミュニケーションすること」が特定の人だけのものではなくなったと感じていました。この潮流が今後変化していくとは考えにくい。それであれば、ソーシャルメディアの力を使って、旧態依然の「学校」や「教育現場」を巻き込み大きなイノベーションを生めるのではないかと考えました。

この3つのプロセスを通じて、今のschoo WEB-campusの原型が出来上がりました。よく「why→how→what」の順序で思考しよう、と言われることがありますが、それに加えて、総論と各論をいったりきたりすることが必要だと考えています。

どのようにして12月のβ版が立ちあがったか?

私自身は、デザインやプログラミングのプロではありません。さらに、弊社は私の退職金と持ち合わせていた少しのお金で立ち上げたことに加え、ここまで半年間シードマネーも含めて一切の投資を受けて来ませんでした。それでもここまでサービスが立ち上がり運用されているのは、ひとえにたくさんのメンバー・協力者がいてくれたからです。現在は、社員2名を含む12人のメンバーがスクーを運営しています。「愛で生まれたサービス」というと気恥ずかしいのですが、WEBサイトも無く企画書しかない段階で、schoo WEB-campusへの登壇を決めて下さった先生も含めて、様々な方々に支えられてスクーは今ここにあります。

「ビジョン」と「作りたいもの」をまとめた企画書をつくり、たくさんの人に、想いを伝えてまわったこと。僕がしたことはむしろそれだけです。gumiの国光宏尚氏が漫画のONE PIECEとベンチャー企業を重ねあわせておられましたが、私も全面的に同意します。これから株式会社スクーは風を集めて大海原へと面舵を切ります。そのタイミングで船にのる思惑はそれぞれ違ったとしても、目的を共有する現在のメンバーを集めることが出来たことは、これからの航海に向けて気持ちが高まる一方、身の引き締まる思いもあります。

後半では、schoo WEB-campusが置かれている市場の可能性やschoo WEB-campusの未来についてお話したいと思います。

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