2013年も折り返しに近づく中、ネットビジネス系の招待制カンファレンスとしては国内最大規模の「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット」が終わり、主要イベントが一巡した。
SD Japanではこれらのカンファレンスにメディアパートナーもしくは取材で参加し、英語/日本語合わせて約60本の記事をお届けしている。本稿ではこれらを総括し、そこから浮かび上がってくるトレンドをお伝えしたい。
国内主要シードアクセラレーターのDemoDayーー量より質を目指す
まずはDemoDayだ。Y Combinator やTechStars、500Startupsなどの北米シードアクセラレーターと同様に、「シード期」スタートアップが次の事業ラウンド(投資や提携など)に進むための登竜門的な位置づけになっている。
ただ、春に開催された2013年YCom冬期クラスのDemoDay出場社が30社近くだったのに対して、Open Network Lab(以下ONL)は2社、MOVIDA JAPANは5社と数の開きは大きい。
関係者に話を聞いたところ、質の向上を目指したということと、応募については未だ勢いは止まっていないとも聞いているので、分かりやすい次世代スタートアップ登竜門としての役割はさらに強くなっていくのではないだろうか。
5社のスタートアップが自社サービスとビジネスモデルを投資家に向けてプレゼンした「MOVIDA Demo Day 3rd」
Meet the 5 newest startups from Movida Japan’s acceleration program
Open Network Lab 第6期生のお披露目とこれまでのチームも新サービスやリニューアルを発表した「DemoDay Spring 2013」 #on_lab
投稿数は3倍、売上は2倍ーー成長する語学添削ソーシャルネットワークLang-8が狙うのは「スマホ」と「世界」 #on_lab
Meet the startups from Open Network Lab’s latest Demo Day in Tokyo
オープンな起業家の学園祭「サムライ・ベンチャー・サミット」ーーややテーマがニッチに寄り過ぎか
ちょっと変わった趣向のカンファレンスがサムライインキュベートの開催する「サムライ・ベンチャー・サミット」だ。他の主要イベントが招待制なのに対して自由に参加が可能。参加する起業家も準備に参加するなど「スタートアップの学園祭」的な雰囲気がある。
間口が広いので、デモブースなどに参加するスタートアップも玉石混淆。気になるのはテーマがニッチ過ぎてスケールに苦労するのでは、という印象のものも多かった。
第7回サムライベンチャーサミットで出会った、9つの素晴らしいアイデア
9 great ideas from the 7th Samurai Venture Summit
2日間でアイデアから投資まで「スタートアップ製造」インキュベイトキャンプーー現実的ビジネスが目立つ
投資家というと「金持ちのあしながおじさん」という間違ったイメージを持っている人はさすがにもういないと思うが、それでも「資金だけ出して口だすな」という起業家はいるかもしれない。
ステージがミドルやレイターならそれもあるかもしれないが、シードやアーリーなら逆の方がいい。いや「口を出せない」投資家は勉強不足と一蹴すべきだ。
国内主要ベンチャーキャピタリストが勢揃いして、2日間でスタートアップのアイデアから初期投資までやってしまうブートアップ・イベントがこのインキュベイトキャンプだ。ここには起業の現場を知り尽くしたキャピタリストと一緒に事業プランを作って投資までを決定する。さすがに投資まで辿り着いているアイデアは地に足がついた印象だ。
激戦の決勝プレゼンーー13組の起業家・投資家ペアが事業アイデアを発表した「インキュベイトキャンプ 5th」2日目レポート
インキュベイトキャンプその他の記事はこちらから
国内2大招待制カンファレンスーー探る「ゲームの次」のトレンド
本稿のラウンドアップを締めくくるのは招待制の主要カンファレンス二つだ。
B Dash Camp 2013 in Fukuoka(日本語記事/英語記事)
インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2013 Spring(日本語記事/英語記事)
ゲームの次は何がくる?
両カンファレンスに共通していた雰囲気に、巨大テーマ「ソーシャルゲーム」の次のトレンドを探ろう、というものがあった。
4月に開催されたB Dash Camp 2013 in Fukuokaでは具体的に、ソーシャルゲームで名を馳せたプレーヤーが次に取り組む「教育」系サービスをフィーチャーしていたし、5月開催のでもインフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2013 Springでもやはり「Not Game」のセッションが多く、次のトレンドを模索するフェーズに入っていることを示していたように思う。
もちろんゲームのターンはまだまだ終わらないが。
ソーシャルゲームのノウハウは使えるーー次に狙うは「教育アプリ」マーケット #bdash
#IVS 2013 Springラウンドアップ:国内ネット系トレンドで掴んでおきたい「4つのトピックス」と「ゲームの次」
ガラケービジネスよもう一度
実は両カンファレンスで共に語られていた話題のひとつにスマホ時代の「キャリアビジネス」があった。auスマートパスにドコモのスゴ得コンテンツは、共にフィーチャーフォン時代に黄金期を築いた「ガラケービジネス」の再来を予感させる。スマートフォンにこのビジネスインフラが整えば、「ゲームの次」に現実味が帯びてくるかもしれない。
話題の中心になりつつあるメッセージング
ソーシャルゲーム全盛時、話題の中心は「DeNAとGREE」だった。今ももちろんこの傾向は変わらないが、ここに急成長を続けるLINE、メッセージングの話題が加わっている。彼らがどのようなプラットフォームになり、展開するのか。
ゲームプラットフォーム、通信キャリア主導のプラットフォーム、さらにLINEを中心とするメッセージングプラットフォーム。どこでビジネスをするのか、トレンドを掴むことが重要になる。
LINE株式会社の森川亮社長、猛烈かつ急進する世界展開について語る #bdash
世界共通で売れてるのはブラウンとコニーのいちゃついてるスタンプーーLINE舛田氏が語る「マネタイズ」と「オープン化」 #IVS
カカオ社CEO イ・ソクウ氏「モバイル・ソーシャル・プラットフォームを構築する」 #bdash
さいごに
以前、この主要カテゴリの記事にも書いたが、競合のいない事業というのは、市場が全くないか、大発見かのいずれかだ。
シードアクセラレーター、キャピタリストは常にトレンドの最先端を走っている。新たな事業を興そうというスタートアップ、新規事業のセクションを任された人は、この動向を注視すべきだし、このトレンドの中心から離れるかどうかでアイデアの質も変わってくるだろう。
本稿がその一助となれば幸いだ。
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