年末感のある話題を久々に目にした。
読者のみなさんは年始のご挨拶広告というものをご存じだろうか?元旦の新聞に掲載される「謹賀新年」の文字とともに企業トップの名前がずらずらと並ぶあれだ。
私が小さな地方の広告代理店で働いていた時、この毎年恒例となる新年挨拶広告の販売開始をみてある種の年末感を感じたものだった。「あそこが出すならウチも出す」といった、なんとも日本的なほのぼのした伝統的な広告商品だった。
まさかそれをスマホ広告でみることになるとは。なんというか、不思議な気持ちになった。
Gunosyの新年挨拶広告が教えてくれるパラダイムシフト
販売の主はGunosyだ。下のセールスシートをみれば分かるとおり、元旦に届くGunosyに企業トップの新年挨拶がタイムラインに並ぶらしい。まさに新聞時代にみた「あの広告」だ
私がその商品をfacebookのタイムラインでみかけて反応していると共同代表の木村新司氏からメッセージが届いた。
「これはネット広告へのアンチテーゼなんだ」。
Gunosyはご存じの通り、ソーシャル上のユーザー属性によってレコメンドされたニュースを1日2回プッシュで届ける。朝刊・夕刊という表現にも分かるとおり、きわめて新聞的な考え方だ。
「新聞を届けるのと同じように、スマートフォンで記事を届ける。毎日必ず届ける。(ネット)媒体を『読みにいく』から『届ける』へ。ネット広告が本当にかわるかもしれない」。
このパラダイムシフトのポイントはスマートフォンだ。
一斉に多くの人が同じような端末を持ったことで、均一なインフラができあがった。それは過去、新聞が各地域に印刷用の輪転機と配達用の販売所を設置し、「配信」インフラを完備したそれに似ている。
新聞という統一フォーマットが、スマートフォンという画面に引き継がれるイメージだ。
もちろん、プッシュ型の広告といえばメール広告があった。しかし配信インフラに統一感がなかったためにテキスト中心にならざるをえず、情報量が増え続ける現代において、パフォーマンスはどんどん下がっていった。
そういう意味で、スマートフォンアプリへの配信というのはきわめて新聞に似た体験をシフトしたものになりつつあるのかもしれない。そこに掲載される広告もしかりだ。
Gunosyが販売した新年の挨拶広告は、それだけみると一商品にすぎない。
しかし「それが可能になった」事象を丁寧に紐解くと、そこにみえてくるパラダイムシフトは大きく、時代の変化を感じずにはいられない。木村氏が私にメッセージをくれたのもその変化を共有したいがためだったようにも思える。
ーーネット広告へのアンチテーゼ。
ネット広告を極めた木村氏だからこの言葉が出てきたんじゃないだろうか。
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