本稿は、B Dash Camp 2014 Summer in Fukuokaの取材の一部。
過熱する手のひらのニュース戦争は大型の資金調達、CM合戦、旧来メディアからの人材の獲得、配信元メディアとの関係構築など、めまぐるしい展開をみせている。
このレースに勝ち残るのはどこになるのだろうか。そして最後に残ったプレーヤーはどのようなサービス、ビジネスモデルに進化しているのだろうか。
こんな問に答えられるセッションが福岡で開催された。登壇したのはGunosy共同代表取締役の木村新司氏、グライダーアソシエイツ取締役COOの町野建氏、ユーザーベース代表取締役共同経営者の梅田優祐氏の三名に加え、飛び入りで参加となったSmartNews取締役の鈴木健氏の四名。
モデレートはユナイテッド取締役の手嶋浩己氏が務め、話題は各サービスの比較まとめから始まる。
気になる話題はやはり「タダ乗り」に対応したメディアへの還元の話だ。Gunosyは6月24日にメディアに対する収益還元を発表し、その三日後にSmartNewsも同様の還元スキームとなる「SmartFormat」を発表している。
木村氏は改めて還元配信の仕組みをこう説明する。
「アプリへのニュースコンテンツキャッシュについては全社メディア回って許諾を取ってます。また、広告についてもグノシー側で受注してそれを配信しているので、媒体社側は何もしなくても収益を受けられる仕組みになってます」(木村氏)。
一方、SmartNewsはあくまで媒体社側でのハンドリングが必要で、広告収益そのものには関与しない。
「SmartFormatというフォーマットを媒体社に用意して、それを取り込んで表示してもらう仕組みです。広告も中に表示できるので、スマートモードで表示された広告については100%を還元するというものです」(鈴木氏)。
つまり、似たような還元という表現だが、両者の取組みは違うことがよくわかる。
これに合わせて月間収益が話題になっているスマートフォンニュースアプリの広告事業についても話題が及んだ。手嶋氏はサイバーZが発表しているスマートフォン広告市場の伸びを示しつつ、各社にスケールなどの考えを聞いた。
まず、独自の路線で広告事業を展開するAntennaは、ネイティブアドのような方法がスケールしやすいとしつつ、コンテンツにマッチさせた広告を独自に作り込む方がクリック率などのパフォーマンスが高いと説明。
この分野では一歩先を進んでいる木村氏は、広告を表示させる場所にスケールの可能性をみているようだった。
「広告の出し方として並べているリスト上に表示させるものと、記事の中に表示させるものの二つがある。前者は高い収益性を証明できてるが、記事が書いてある面での広告表示は再開発が必要と考えている。雑誌や新聞といったメディアからユーザーが移動してくることを考えると、6000億円(新聞広告)、2500億円(雑誌広告)という受け皿を作る必要がある」(木村氏)。
SmartNewsはワールドカップ中に実施したソニーとナイキの広告テストを通じて、このビジネスの模索をしているようで、現在も各所から届く問い合わせの対処に追われているということだった。
また各社が積極的に取り組んでいるテレビCMの投下効果については見ている指標が興味深い。まず、ダウンロードではなく、認知を高めたのがAntennaだ。
「ターゲットを女性に絞って都心でのブランドイメージを認知率40%以上に設定した結果、それを達成して50%近くになりました。今後はそれを刈り取っていきます」(町野氏)。
オーソドックスなダウンロードを追いかけて効果を上げたのはグノシーだ。木村氏は効果を上げるため3カ月の投下に対してCMクリエイティブを17本も作ったそうだ。
この制作本数についてはモデレーターで元博報堂の広告マンでもあった手嶋氏も「ドン引きですね」と返す。また、まだ配信をしていないSmartNewsの鈴木氏は、いつからTVCMを開始するのかという問いに対して「検討中です」と否定しなかった。
では数年後彼らはどのような姿になっているのだろうか。
グノシーとSmarNewsはやはりポータル的な方向性が似ている。
「ポータルというかニュースだけでは人の時間を埋められません。スマートフォンの可処分時間はまだまだ残っている。そこに対してコンテンツを提供する。最終的には届けられて心地よいもの、それを考えている」(木村氏)。
一方のSmartNewsも「結果的にヤフーに近づくのではないか。でもそれは最低限のレベル。またメディアとして社会的な責任は探求していきたい」とした。
Antenaは「トヨタよりはアウディ。ニッチだけどリッチというか。ビジネス的には広告のモデルと衝動買いしたくなるECの二本で考えたい」と当初からの雑誌的な方向性を追求するとし、NewsPIcksは「経済の範疇は出ないが、ビジネスパーソンの情報接点は全て押さえたい。やりたいのは動画領域と紙の領域」と新しい経済誌の方向性を模索するとした。
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