中国進出を図るアプリ・デベロッパにとって、AndroidやiOSを超えるプラットフォームとなったWeChat(微信)

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AndroidかiOSか? 全てのスマホ開発者は新しいプロジェクトに着手する際にこの選択をしなければならない。しかし、近年中国で3つ目の選択肢が出現しつつある。WeChat(微信)だ。

4億人近くのアクティブユーザーを誇る、この Tencent(騰訊)の核を担うメッセージアプリは中国市場を狙うデベロッパにとって、エキサイティングな新しい道を提供する。しかしながら、中国のエコシステムへの参入は予想しているよりも簡単ではなさそうである。

中国の最高のアクセラレータープログラムであるChinaccelerator(中国加速)を卒業した9つのスタートアップの中で、2つの会社が WeChat 上にサービスアカウントを設置している。Chinshen,ma(吃神馬)Giftpass(礼物通)である。Chinshen.ma は「対話主導型」レストラン推薦アプリであ、Giftpass はユーザにチャットアプリ上ででバウチャーをユーザに提供し、ユーザはその商品券を使って現実世界の商品と交換することが出来る。

GiftPass の共同創業者であるVincent Mahは WeCha tを選択した理由を次のように語る。

ユーザがサービスを使い始める上でのハードルを出来るだけ低くしたかったのです。中国の会社が制作したアプリと比較して、WeChat はできることに対して、多くの制約をかけています。

しかし、これは WeChat ユーザが必ず良い経験ができることを保証するためのものです。4億人のアクティブな WeChat ユーザにアクセス出来ることは、どんなデメリットにも勝るものです。

他のソーシャル・ネットワークと比べ、Mah 氏は、Tencent は「閉鎖的な」エコシステムを持っているという。

しかし、私達が、そこから有用な価値を提供できる方法を創造的に考える余地は十分にあります。WeChat は Tencent のプラットフォームなのです。Tenceht のしたいようになるのです。(Vincent Mah 氏)

Chinsen.maの創業者である Ryan Shuken氏はこう語る。

ユーザは、中国で開発された他のアプリから離れ、ますます WeChat で時間を過ごすようになっています。当社はこのトレンドの最前線にいます。

全く新しいものを一から作ったり、他のソーシャルプラットフォームを一から構築したりするのではなく、当社は既に中国で最も人気のあるソーシャルネットワークを活用して開発しています。WeChat の API は非常に新しいため、初期ローンチは、その他のソーシャルプラットフォームと比較すると相対的に機能面で制限されていました。しかし、この数ヶ月の間に新しい機能が継続的に提供されています。

Mah 氏は、GiftPass が将来、自社開発のアプリをリリースする予定であると語る。しかし、Shunken 氏 は Chinsen.ma については、そのような計画について言及しなかった。これらのスタートアップは、ますます WeChat を利用するユーザに興味を持ってもらうことに注力するだろう。それは Tencent が、どの会社が参入するべきで参入すべきでないか、その選択権を持つことにも繋がる。WeChat にとっては、Renren(人人)や Sina Weibo(新浪微博)のような、競合他社のソーシャルネットワークとの差別化要因になるだろう。

WeChat が競合より秀でるもの

Renren と Weibo(微博)は、しばしば中国の Facebook と Twitter に相当するものだと考えられてきた。しかしながら、WeChat の知名度が上がると、徐々にそのような形容はされなくなった。多くの外資系スタートアップは依然として、中国市場に参入する際の手段として、これらの中国国内のソーシャルネットワークを利用している。

物を恵んでもらうのに好き嫌いは言えない。Chinsen.ma も、Giftpass も、彼らのサービスを拡大できる他社とは誰彼構わず組む準備ができている。ニュースリーダーアプリである Flipboard は、2012年にどちらのサービスからも利用できるようにした。写真ギャラリーアプリの Cooliris は、昨年12月に Sina Weibo と連携し、Renren とはさらに前の年に連携した。個人向けQRコードジェネレーターである Visualead は、今年5月にRenren と提携し、ユーザがQRコードに変換された写真を用いたアカウントとリンクできるようにした。

これらの会社のどれもが、将来の潜在的なプラットフォームとして WeChat に強い関心を表明していた一方で、どの会社も参加することはなかった。ましてや、WeChat サービスアカウントとしてアプリを作るのではなく、従来からアプリと連携するのは有効な選択肢ではないようだ。Tech in Asia がこの問題について追及してみても、「Tencentとは協議中」とか「現在、取り組んでるところ」という回答が返ってくるばかりだ。

Flipboard ビジネス開発部長 Eric Alexander 氏は北京での記者会見でこう語った。

彼らと組めれば良かった。それは我々の最優先事項です。

Cooliris は、Tencent Weibo(騰訊微博) および QQ Zone(QQ空間)と連携した。どちらも Tencent の傘下であるが、WeChat とは連携していない。Cooliris のCEO Soujanya Bhumkar 氏は、その他のソーシャルネットワークは適切な比較ではなく、WeChat は LINE や WhatsApp といったチャットアプリと比較されるべきだと論じる。

より公平な比較のために、私は WeChat とその他のメッセージングアプリを比較するべきだと思います。Tencent の WeChat のエコシステムのオープン性は、世界中のメッセージングアプリと変わりがありません。(Soujanya Bhumkar)

Visualead は、QRコードを利用する。QRコードは Alibaba(阿里巴巴)と Tencent の両社で、eコマースとO2O戦略で広く活用されている。このことをふまえ、Visualead のマーケティング部門長 Oded Israeli 氏は、今後、計画や進捗を発表するのは時期を読まなければならないと語った。

私の意見ですが、会社を成功させたイノベーションを忘れない会社、そしてイノベーションし続けることを忘れない会社が、長期的に見て成功するでしょう。

ゲーム・デベロッパは Tencent により難しい条件を提示されている。もし、WeChat 向けにゲームを開発したいならば、WeChat でしか使用できないようにしなければならない。そのような取引は受け入れがたいものだ。しかし同様に、LINE のゲームも LINE のみでしか使用できず、さらに LINE は 式 API も公開していない。

リスクと報酬

つまり、制限はあるものの、WeChat のサービスアカウントとして機能するアプリを作ることは簡単だ。しかもそういったアプローチはより高いリスクが伴う。今年6月に、WeChat は数千のサービス・アカウントとサブスクリプション・アカウントを削除した。これらのうち大半が、スパムか、Tencentが設定した規則に何らかの違反したものであった。Tencent は、Apple や Google といった会社と比較すると、処罰に関してはずっと甘いようである。

先月、Tencent は Microsoft が制作したチャットボット「Xiaobing(微軟小冰)」を停止した。このアプリでは、グループチャットに招待され、ボットが擬似的に会話に応答する。Xiaobing はユーザにスパム行為をしており、プライバシーを侵害しているという批判が起こった後、Tencentは すぐに Xiaobing に対して、Microsoftが言うところの「抹殺」を行った。

依然として、WeChat の API利用は無料だが、処罰を恐れない人たちにとって魅力的な収入源になっており、その傾向はすぐに変化を見せることはないだろう。WeChat は中国市場に進出する上で、素晴らしいスタートポイントになりうる。

スマホ音声検索エンジンの Mobvoi(出門問問)は、自らを iPhone の Siriの様に機能するサービスアカウントだと説明する。ボイスメッセージを送ると、WeChat 上でレストラン、バー、ショッピング、ナビゲーション、天気、観光などに関連した検索結果を返す。Mobvoi は WeChat から始め、後に Android 用アプリも制作した(こちらの知名度は低いままだが)。Mobvoi は今年2月、SIG(上海国際集団)のリードで1,000万ドルを資金調達した。

ビジネスのためのプラットフォーム開放

Tencent の 最近の開放に向けた動きの一つは、eコマースに焦点を当てたものだ。5月下旬から、WeChat 上で誰もが自らの店舗を設置することが出来るようになった。その動きは Tencent の最大のライバルであり、eコマースの巨人である Alibaba を意識したものである。

Tencentは昨年8月、モバイル決済サポートを追加したが、参加したのは数社の小売業者に留まった。しかし現在では、公式に承認を受けたアカウントは、Weixin Payments(微信支付)が利用できるようになった。Alibaba が自社の Taobao(淘宝)で多くの会社が行っているようにだ。既存のオンライン小売業者やeコマースサイトもまた、WeChat 上で店舗を開くことが出来る。

店舗を公開する前に、WeChat を使って非公式な方法で商品を売っている会社もある。ある大学生グループは、地元の新鮮なフルーツを宅配するサービスを開始した。同社は WeChat で注文を受け、顧客に対応する。Tencent がこのサービスを奨励していることからもわかるように、Tencent はeコマースに潜在的な売上を期待しており、中国で Alibaba に対抗できる唯一の会社になるだろう。

IoT と WeChat

今月初め、WeChat はスマートデバイス向けの新しい API をローンチした。最初の公式ガジェットに選ばれたのは、WeChat の公式アカウントを通じて、ユーザが自らの個人情報を追跡出来る行動追跡型リストバンドなどだ。しかし、ハードウェアと WeChat の連携はこれが初めてではなかった。

写真プリンタを製造するスタートアップ Welomo(印美図) は、WeChat と連携するハードウェアを作る唯一の会社だった。Tencent は、Welomo に自らネイティブアプリ出すのをやめるよう説得した。Welomo の創業者たちは、この決断が究極の成功を導いたと言っている。企業が Welomo のプリンタを店舗に設置、ユーザは WeChat 上の公式の Welomo アカウントを購読し、自分のアルバムから写真を選んだら、Welomoプリンタの4桁のコードを入力する。するとそのプリンタから写真が印刷されるというしくみだ。

新しい WeChat API は Welomoのようなハードウェアメーカーと連携する可能性を高めた。Tencentはこれらを利用してもらうことで、Alibaba の Alink(阿里物連)や Baidu(百度) のクラウドプラットフォーム Baidu Yun(百度雲)、そして JD(京東)のスマートホーム・プラットフォーム Jcloud(京東雲)のような競合から抜きん出ようとしている。しかし、Welomo 創業者の Chance Jiang(蒋嘉之)氏は、WeChat の戦略を逸脱するような計画は何もないと語る。

もちろん、Alibaba と Baidu のどちらも強みはあります。Baidu はよりハードの技術や検索に力を入れているし、Alibaba は買い手と売り手のネットワークを構築しました。しかし、Tencent は Facebook のように全ての層のユーザを持っています。


WeChat は2011年初めにサービスを開始したが、Tencent がそのエコシステムを開放放し始めたのは2013年8月にバージョン5.0がリリースされてからだ。WeChatバージョン5.0は、決済とゲームを許可した最初のものだった。一年もしないうちに、ビジネスを行うことの出来る有用なプラットフォームにまで成長した。

恐らくデベロッパが期待するほど開放されてはいないが、LINE や WhatsApp のどちらよりも利用しやすいものだろう。WeChat は、ゆっくりと世界に対して開放し始めている。これから中国に参入しようとするデベロッパは、WeChat が閉鎖されているからと、選択肢に入れないことがないようにしたい。

この記事は Tech in Asia のプレミアムEマガジンで出版されたものです。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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