〈韓国のテックスタートアップを探る〉韓国のスタートアップシーン、急成長中の5分野を探る

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Image credit: Pixabay
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今回の投稿は、本シリーズ「Discover Korea’s Tech(韓国のテックスタートアップを探る)」の第1弾である。数々の巨大企業が牛耳っていることで有名な韓国経済の中、自身が持つテクノロジーによって自立した韓国のスタートアップ起業家たちに話を聞いていく予定だ。数ヶ月に渡って彼らを追うこの企画を楽しみにしてほしい。@technodechina からシリーズ最新のストーリーをチェックできる。

「韓国」と聞くと、何を思い浮かべるだろう? Samsung、LG、Hyundai などの大企業や、K-POP や韓国ドラマ、でなければ「カンナムスタイル」という曲くらいは聴いたことがあるだろう。もしくは、韓国初の女性大統領となった朴槿恵大統領を思い浮かべるかもしれない。意外かもしれないが、まさにこれが韓国におけるスタートアップエコシステムの構成要素だ。

Samsung や LG の敏腕エンジニアたちは、自身のビジネスを立ち上げるべく堂々と会社を辞める。これが韓国スタートアップのエコシステムがテクノロジーベースの会社で溢れている理由のひとつだ。K-POP や韓国ドラマは国内外を問わずコンテンツビジネスやマーケティングにおいても非常に大きな比重を占めている。ソウル随一の繁華街であるカンナムは、数々のスタートアップ企業の拠点となっており、Google Campus、WeWork、D.CAMP、TIPS town などの韓国スタートアップおよびコワーキングスペースや、SparkLabs、Lotte Accelerator などのアクセラレータが軒を連ねる。韓国政府は、若い起業家がビジネスを立ち上げるための資金源として巨大な基金を設立した。これが、3年前まで平凡な韓国の大学生だった筆者がイスラエルとシリコンバレーで働く貴重な機会を手にし、最終的にスタートアップが最も急成長を遂げる中国で腰を据えるに至った経緯だ。

Screenshot of Gangnam area in Seoul startup map, provided by RocketPunch
RocketPunch によるソウル特別市カンナム区のスタートアップ・マップのスクリーンショット

韓国スタートアップの特徴は、と聞かれると、「テクノロジー、コンテンツ、そしてデザイン」だと私は答える。10記事の連載となるこの「Discover Korea’s Tech」シリーズでは、テクノロジーベースのスタートアップ10社を紹介し、韓国の伝統的な業界といかにして上手く付き合っているのかをお伝えしていく。その前に、2015年におけるスタートアップのトレンドをいくつか考察してみよう。

2015年は、韓国における O2O とフィンテックのスタートアップにとって最もエキサイティングな年だった。Platum リサーチチーム発行の2015年スタートアップ投資トレンドによると、O2O とフィンテック関連分野への投資は大幅な増額を見せた。

被投資企業(210社)そして投資総額(6億9,540万米ドル)両者ともに、2015年は著しい増加が見られた。ここに、韓国スタートアップシーンにおける急成長中の分野5つと失速中の分野を紹介しよう。

2015年の急成長分野

1) O2O

O2O ブームが収束した中国に比べ、韓国では昨年凄まじい O2O ブームが巻き起こり、今年も引き続き成長中だ。投資総額の32%(6億9,540万米ドルのうち2億2,350万米ドル)は、O2O 関連のライフサービス、食品、そして不動産分野だった。

Brick-and-mortar restaurants offering card paying options
単店舗経営・対面販売のみの飲食店でもカード払いが選べる
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中国全土でオンライン決済が普及している一方で、韓国におけるモバイル決済サービスは、処理プロセスに時間と手間がかかると不評だ。韓国の人々のほとんどがデビットもしくはクレジットカードで支払いをしており、実店舗にて広く受け入れられてきたこのカードによる支払い方法によって、韓国の O2O 企業が軌道に乗り利益をあげるのが困難になっている。

韓国で最も広く利用されているメッセージアプリ KakaoTalk の運営会社である Kakao は、スタートアップがプラットフォーム内で処理からマネタイズを可能にするモバイル決済システムを導入した。昨年のビッグニュースといえば、Daumと Kakao の統合だ。以来、Kakao と Yello Mobile との間で O2O をめぐる戦いが勃発した。Yello Mobile(옐로모바일)は設立から3年にも関わらず韓国でスタートアップ65社も買収した巨大スタートアップで、シリコンバレーに拠点を置くFormation 8 の後援もあり、企業価値は40億米ドルとなっている

O2O の中で最も投資額の高い分野だ。

O2O のライフサービス分野での資金総額は、23社に対して1億1,350万米ドルとなった。カーシェアリングサービスの Socar は5,530万米ドルを集め、2015年における投資最高額を記録した。O2O コマースプラットフォーム YAP(얍) は3,570万米ドル、ホテル予約サービス Daily Hotel は850万米ドルの資金調達という結果になった。

Korean menu that asks users to pay through Baedal Minjok and Yogiyo
支払いに「配達の民族」や「ヨギヨ」を使うようユーザに呼びかける韓国のメニュー
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食品分野では、5,910万米ドルが13社に投入された。人気フードデリバリーアプリ「ヨギヨ(요기요)」を支援するのは、ドイツ企業 Delivery Hero と、Goldman Sachs をバックに持つ「配達の民族(Woowa Brothers または 배달의 민족)」だ。他のサービスで見てみると、レストランレビューサービスの 「Siksin(식신」が680万米ドル、レストラン推奨サービスの Mango Plate が610万米ドル、そして Dining Code(다이닝코드)が170万ドルを調達した。

不動産の分野では、物件一覧サービス 「Zigbang(직방)」が Goldman Sachs などから3,300万米ドルの投資を受け、競合の「Dabang(다방)」は1,790万米ドルを調達した。

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2) フィンテック

McKinsey によると、中国のインターネット金融市場は1兆8,000億米ドルに達し、ユーザ数や利用額の面でもすでに他の市場を上回っている。韓国の金融業界はそこに追い付こうしており、政府もその動きを支援している。

Yello Financial Group acquired Newsy Stock
Yello Financial Group は Newsy Stock を買収した
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金融委員会によると、昨年の韓国国内におけるフィンテック関連スタートアップの数は推定360社。先週(10月第5週)韓国政府は、フィンテック分野の発展のために3年間で3兆ウォン(26億5,000万米ドル)の経済支援をすると発表した

2015年における金融・保険分野の資金調達は、3,000万米ドルを集めた B2B O2O フィンテックプラットフォームの Energy7 や、P2P サービスの 8percent などがある。クラウドファンディングプラットフォームを提供する8社が総額850万米ドルをかき集めた。2015年、ビッグデータによる株解析サービス NewsyStock(뉴지스탁) は Yello Mobile に買収された。

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3) MCN

South Korean carrier KT is aiming to launch the first 5G network at the 2018 Winter Olympics in PyeongChang
韓国のキャリア、KTは初の5Gネットワークを2018年開催の平昌オリンピックを目標にローンチする予定だ
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韓国で4G LTE ネットワークが普及したことにより、ライブ配信のドラマや映画を地下鉄の車内で楽しむ韓国の人々の姿は当たり前となった。このように頻繁に動画を視聴する習慣は、ゲームプレイヤーやメイクアップアーティストなどの有名 YouTube スターによる短い動画を楽しむブームへとつながった。これらのコンテンツクリエイターを取り込むために、MCN(マルチチャンネルネットワーク)企業は2015年上旬、彼らの啓発に着手した。

昨年エンターテイメント分野になされた投資は6,540万米ドルで、そのうち3,830万米ドルはビデオ・放映・MCN 分野に投じられた。韓国における主要な MCN スタートアップは、1,700万米ドルを集めた Makeus や1,340万米ドルを集めた Treasure Hunter がある。

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4) バイオ・ヘルスケア分野

バイオ・ヘルスケア分野は昨年比で3,910万米ドル増加という最も高い成長率を見せた。韓国政府はバイオ・ヘルスケア分野支援のイニシアチブも発表している。韓国でこの分野のスタートアップが始まった理由の一つに、質が高いながらも安価な医療サービスがあり、医師たちは収益を得るのが困難なことが挙げられる。それゆえ、多くの医師たちは自身のビジネスを立ち上げ、韓国における医療デバイス革新のブームを先導している。

2015年、ヘルスケアスタートアップは2,060万米ドルを調達した。モバイルヘルスケアサービス Noom は1,610万米ドル、Gencurix は680万米ドルを昨年調達した。

医療分野の5社は総額1,680万ドルを調達しており、そのうち医療用止血剤開発会社 Inno Therapy が600万米ドル、Way Wearables が170万米ドルを12月に調達している。

5) ファッション&美容分野

Live Stream concert of K-POP Star BigBang in China (Image Credit: Douban)
K-POP 界のスター、BigBang が中国で行ったライブストリームコンサート.
Image Credit: Douban(豆瓣)

ファッション、美容関連のスタートアップは、韓国ドラマや K-POP スターの世界中のファンたちから恩恵を受けている。昨年、ファッションと美容の e コマース関連スタートアップがブームとなり、Y Combinator 卒の美容 e コマース Memebox(미미박스) は2,950万米ドル、中国向け美容スタートアップ B2LINK(비투링크)は350万米ドルを調達した。

2015年、失速した分野はゲーム

ゲーム分野の資金総額はほぼ半減した(2,900万米ドルから1,600万米ドル)。インターネットカフェでのオンラインプレイを夜10時までとしたり、オンラインゲームへの出費を1人あたり月額300米ドルまでとするなど、韓国政府による規制がゲーム業界に影響を及ぼしている。

ゲーム分野では、Kakao のゲームアフィリエイト NZIN が1,020万米ドル、モバイルゲーム開発会社 Innospark が610万米ドルを調達した。

2014年、ゲーム分野に含まれた 4:33 Creative Lab は1億米ドル以上の投資を受け、その年の投資のほとんどを占めている。

Technode は厳選された韓国スタートアップ設立者たちを集め、巨大企業が牛耳る国に挑んでいくことや、中国テックシーンで外国人起業家としてビジネスを立ち上げるとはどのようなことなのかをインタビューしていく。@technodechina をフォローして今後の展開をチェックしてほしい。紹介するスタートアップ10社は、未来創造科学部(MSIP)の管轄下にある主要韓国政府機関、K-ICT Born2Global Center に拠点を置いている。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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