高校生が創業したフィンテックスタートアップのワンファイナンシャル、プレシリーズAで1億円を調達——決済アプリ「ONE PAY」をローンチ

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ONE PAY
Image credit: One Financial

インキュベーションプログラムなどに出かけていくと、時々、高校生起業家に出会うようになった。「起業家甲子園」のようなイニシアティブもあるし、THE BRIDGE でも高校生起業家によるサービスを取り上げたこともある。しかし、高校生起業家によるスタートアップが、この規模の資金調達を実施するのは初めてのことかもしれない。

クレジットカードによる決済アプリ「ONE PAY(ワンペイ)」を開発・展開するワンファイナンシャルは17日、インキュベイトファンドと D4V からプレシリーズ A ラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。これは同社にとって1度目のラウンドにおける East Ventures からの調達(調達金額非開示)、2度目のラウンドにおけるエンジェル投資家複数からの調達(調達金額非開示)に続くものだ。

ワンファイナンシャルは2016年5月、ウォルトの社名で創業。チームを率いるのは弱冠16歳の山内奏人(そうと)氏だ。彼は、6歳で父親からパソコンをもらい、10歳でプログラミングを始め、「中⾼⽣国際 Ruby プログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞したという、まさしく神童の起業家と呼ぶにふさわしい。

ワンファイナンシャル CEO 山内奏人(そうと)氏
Image credit: One Financial

ワンファイナンシャルが提供する ONE PAY は、インスタントなビジネスを行う小規模事業主や個人などが、顧客からクレジットカードで料金を徴収できる決済アプリだ。カード決済のプラットフォームという点では SQUARE やコイニーにも似ているが、特徴的なのは、事業主側に基本料金などが発生せず使わないときは無料であることと、クレジットカードの磁気ストライプやチップを読み取るリーダーデバイスが不要な点。

相手のカード券面を、事業主側のスマートフォン上の ONE PAY アプリから写真を撮ることで決済が完了する。一頃昔であれば考えにくいことだが、非対面決済のしくみを対面決済に応用しているようで、不正のリスクについては、ワンファイナンシャル側でそれを検知・防御する対策を施し、使い勝手とのバランスを取っているそうだ。

ONE PAY
Image credit: One Financial

同社は創業当初、ライフカードとの提携で、VISA カード加盟店で使えるプリペイドカードと連携できる「WALT(ウォルト)」という Bitcoin ウォレットアプリに着手したが、その後ピボット。今年に入って送金が行えるモバイルアプリ「ELK(エルク)」を披露し、3月に開催された金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC)ではソニーフィナンシャルホールディングス賞を受賞している。

山内氏曰く、創業からこれまでは「特定のサービスには軸足を置かず、時代の波を読んでいた時期」だったということで、WALT や ELK 以外にも日の目を見ていないサービスはいくつかあるそうだ。当初から銀行になれるようなサービスを標榜していた山内氏は、ユーザ獲得のコスト(マーケティングコストであり、アプリをインストールしてもらう手間)や、ユーザの入金コスト(銀行口座やクレジットカードから、決済アプリ上にチャージする手間)が低い方法を模索していて、その結果、今回の ONE PAY のリリースに至った。

ELK もそうだったし、これまでの P2P 決済アプリなどもそうだが、お金を送る側も受け取る側もアプリをインストールする必要があるし、ユーザ獲得コストも入金コストも重すぎる。その点、(BANK が提供する)CASH は、入金コストが無いのですごいなと思った(筆者注:ユーザは CASH にモノを送るだけで、その対価がサービスのアカウント上に入金される)。

そのあたりを中心にアプリを展開していったら、面白いんじゃないかと思った。いろんな人が使いたい時にパッと使える、そんなアプリを、モノを売る人用を先に作った。(山内氏)

16歳にして、金融サービスのスイートスポットを把握しているのは素晴らしい。ここから ONE PAY のサービス内容やクオリティを高めていき、「銀行を作る」というビジョンに向けてステップアップしていきたいと、将来の野望を語る山内氏。今後の展開が楽しみだ。

ワンファイナンシャルでは今回調達した資金を使って、人材拡充とマーケティング強化に注力するとしている。

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